経済分析第1号
四半期別国民所得統計(速報の分析) 他

  • ※1四半期別国民所得統計(速報)の分析
  • <分析1>銀行の流動性分析-資金供給能力の変化の測定-
  • <分析2>全国銀行預金についての一分析-その特質と決定要因-
  • <ノート>マネーフロー分析における個人部門の再分割について
  • <資料1>四半期別国民総生産(総支出)の推計方法と問題点
  • <資料2>四半期別国民所得統計の季節調整について
  • <資料3>国民経済計算調査委員会の第一次報告
  • ※2在庫変動に関する若干の分析(要旨)
  • ※3景気変動と企業予想(要旨)
1959年12月
<分析1>
朝倉 考吉,北川 巧生,石井 康裕
<分析2>
朝倉 考吉,北川 巧生,石井 康裕
<ノート>
今永 伸ニ,石井 康裕

※1 四半期別国民所得統計(速報)の分析(昭和34年4~6月期)

昭和34年4~6月期の四半期別国民所得統計(速報)は別表のとおりだが、本報告書ではこれにもとづいて最近の経済動向を分析した。分析に当っては原則として季節調整済の数値を使用している。季節調整済の数値は季節調整未済のものとあわせて別表にまとめておいた。

これらの数値を使用するに際しては、つぎの2つの点に留意し、こまかい数値の変動を機械的につかうことはさけるべきである。なかでも在庫投資については不規則な変動が多いことに注意されたい。したがって本報告書の分析でも、数値の端々にとらわれず、大勢の判断にとどめていることはいうまでもない。

  • (1)速報数値であって、年度単位の本推計が確定するまでは毎四半期、過去にさかのぼって改訂が加えられる。
  • (2)季節調整の方法はまだ確立していないので、そうとうの不規則変動をまぬがれない。

<分析1> 銀行の流動性分析 -資金供給能力の変化の測定-

(はじめに)

ケインズ理論においては、利子率は資本の限界効率とともに投資決定の主要因とみなされているが、その後の計量的な分析では、投資は必ずしも利子率の変動に対し、弾力的な反応を示さないことが判明し、このことから金融政策自体の効果を軽視するむきがある。しかしわが国では、最近においても金融政策が決して無力でない幾多の例をわれわれは体験している。この場合、金融政策の中心は、利子率を通ずる間接的な手段よりも、むしろ供給資金量そのものを制約する直接的な手段の方がより有効な役割を果たしている。資金を借りる企業にとっても、高価な信用(dear credit)よりも窮屈な信用(tight credit)すなわち資金のアベイラビリティいかんの方が大きな影響を与えていることは否めない事実である。しかるにアベイラビリティという概念は、往々にして抽象的に語られるのみで、必ずしも具体的な姿において肥えようとする努力がおこなわれていないように思われる。

資金利用可能量の制約という概念に接近する場合、資金を借りる企業の側からと、資金を供給する銀行の側からとの二つの途が考えられるが、わが国の現状では、企業間に技術革新、合理化等のため激しい投資競争がおこなわれているため、資金需要がほとんどつねに供給を上回る状態であり、個々の企業をみても、負債超過の状態のものが多く、借入依存の限界が必ずしも明確に意識されておらず、借りうるかぎり借りるという態度が強い。それゆえ企業の流動性の変化を通して、資金の利用可能量に接近する前者の方法は必ずしも良い結果は望めない。むしろ企業は、銀行からの借入可能額いかんが問題であって、銀行の資金供給能力から接近した方がより良い結果が期待できるものと思われる。そのために本稿では銀行の流動性を分析することによって、その中に銀行の資金供給能力の変化する姿をとらえ、資金のアベイラビリティの接近を試みることにする。

もちろん事後的なデーターから理論的にとられる資金供給能力が現実にその時々において、現象的にあらわれる銀行の貸出態度と必ずしも一致しないかもしれない。また、銀行は自己の流動状態いかんからのみ企業に対する資金供給の限界を考慮しているとはいいえない面もあり、流動性の変化が直接貸出の難易に通じない場合もありうる。しかしながら客観的に判断すれば銀行の流動性の悪化は当然に引締めへの圧力となり、それが貸出態度に反映されなければならないし、反対に流動性が好転すれば当然貸出態度の積極化として、現れてしかるべきものと思われる。したがって、現象面では銀行の資金供給態度にさほど変化がみられなくても、その裏面においては、必ず潜在的に資金供給能力の変化が進行しており、われわれが金融の現状を考え、政策の指針とする場合には、この客観的な姿の把握に努めることが重要なことではないかと思われる。

そこで、最初に銀行の静的な流動状況を示すと思われる流動比率、預貸率の推移に注目し、ついで動的な流動状況の推移を示すと思われる限界預貸率の変化に注目し、統計解析的方法により接近する。

同じく流動性といつでも、都市銀行と地方銀行では、異質の動きがみられるので、この点もあわせて明確にしたい。


<分析2> 全国銀行預金についての一分析 -その特質と決定要因-

(はじめに)

この研究はクライン・ゴールドバーガーのモデルにある個人流動性、法人流動性の各方程式*の日本への適用に検討するために、種々のテスト計算をおこなっている中に預金についていろいろの統計解析を試みることができたので、その一部分を多少加工して「預金についての一分析」として小論にまとめてみようとしたにすぎない。

* L. R. Klein and A. S. Goldberger," An Econometric Model of the United States, 1929~1952." 1955. pp.23~ 28, 53 参照。

つまり、戦後の預金の成長率は次表のように国民所得のくらべて著しく高いが、これは、どのようにしてつくられ、どのような特質をもっているか、またそれが景気変動とともにどのように変っていくか、などの点について、主として最小自乗法によって分析してみようとしたものである。そして、あるていどは問題が解明されたり疑問点として提出されたと思う。

同時に、この分析の結果でいろいろ不備な点が明らかになったことは1つの収穫である。すなわちわが国の預金は当座預金、普通預金、通知預金、定期預金など、性質の異なったものを数多含んでいるため、この分析のごとく、総体としての預金1本で論ずることには不備があり、またわが国の銀行は都市銀行と地方銀行とでは性格がかなり違い、そのビヘイビアも相当異なっていることなどから、これを一本にして扱うことには無理があることが明らかになった。

同時に、個人預金の中には個人預金の中には個人業種主預金が含まれており、この点からも、この分析方法では必ずしも十分な結果が得られないことがはっきりした。したがって、さらに預金種類別に細かく分析し、また都市銀行、地方銀行別に統計解析を続けることが必要と思われる。これがつぎにとりあげるべき問題の焦点になってくるわけである。

ただ、この分析からいいうるのは、法人にしても個人にしても、その流動性の分析には欧米流の方法をもってしては適当でないということである。これが、この分析を通じて得られたひとつの結論である。

国民所得と預金の成長率の比較
(備考) 指数曲線によって、昭和26~33年をとった。
国民所得11.6%
総預金23.5
法人預金23.0
短期預金20.6
長期預金28.5
個人預金23.9
短期預金14.7
長期預金32.3

(注)本文中に出てくる資料の出所はつぎの通りである。

本文に記載されている資料の出所
(イ)預金日本銀行本邦経済統計(全国銀行預金別預金統計)
(ロ)貸出(全国銀行資産)
(ハ)財政(国家財政)
(ニ)その他一般経済指標国民所得白書(当庁)
4半期別国民所得統計(当庁)

なお、預金統計はすべて預金者別預金統計によっているため、第I期(3月末)、第II期(9月末)の年二つに限られる結果となった。したがって他の資料もすべてこれに調整してある。


<ノート> マネーフロー分析における個人部門の再分割について

(はじめに)

当庁では、昭和31年秋以来、「国民資本勘定」と名付けたわが国民経済のマネーフロー表(Money-flow Table)を推計してきた。海を越えた世界各国においても、「資金循環表」(Flow of Funds)ないし「国民金融勘定」(National Financial Accounts)などとよばれるマネーフローの分野における研究は、このわずか数年ばかりの間にめざましい発展をとげつつある。かかる発展は、ポーラックの表現によれば「社会感情体系に歓迎すべき新生命を吹き込むもの」(1)である。

現在世界において、少なくとも通貨部門以外に及び部門別金融取引の勘定、または部門別賃借対照表の作成を試みている国は17カ国を数える。これらの諸国における分析のうち、あるものは、(a)「通貨のインフレ的、またはデフレ的性格を決定すべき金融方式」を反映するものとして、部門別流動性過不足の計量に焦点を合わせ、またあるものは(b)「貯蓄を上回る投資の超過が金融を需要し、これに対して(他部門の)貯蓄超過が供給されるメカニズム」の追求を主要テーマとする部門別資金過不足分析の方向に進んでいる。当庁の勘定諸表は、このうち後者に属するものである。

金融資金需要の要因を、部門別にみた貯蓄と投資のギャップに求める方式によれば、マネーフロー表を国民経済計算体系の一環をなすものとして、既存の国民所得勘定や産業連関表と接続することが要請される。当庁では、この方向にそってまず国民所得勘定と綜合するための研究を進めている。両勘定の綜合に際して生ずる困難の第一は、部門分割の基準をいかに統一するかの問題であり、その第二は、性格と概念の相違を勘定構造においていかに調整するかの問題である。

本稿は、第一の部門分割においてもっとも複雑な問題を含む個人部門について、その企業活動と家計活動とを分離する方式に関して、若干の検討を試みたものである。わが国の個人は、金融市場を通じて企業に融資される資金の最終的供給者として、金融勘定の分析上きわめて重要な地位を占めている。従来しばしばわが国の個人貯蓄率が諸外国と比較していりじるしく高いことが、多くの議論をよんできた。個人部門を企業部分と家計部分とに再分割することは、この疑問を解く一つの鍵を与えるかもしれない。


(1) J.J.Polak. "Financial Statistics and Financial Policy." Staff Papers, April 1957.


<資料1> 四半期別国民総生産(総支出)の推計方法と問題点

(はじめに)

経済研究所の発足以来、国民総支出の四半期別推計をおこなって速報として公表してきた。その推計方法は対象時期と基礎資料の入手に応じて、毎期若干の相異はあるが、以下昭和34年4~6画月期の推計に用いられた推計方法の概要を紹介する。

なお、周知のように、国民所得勘定の作成には尨大な基礎統計の整備が必要である。この四半期別の推計は、3カ月おくれの発表を目途として作業しているので、必ずしも完全な資料の入手をまって着手するというわけではない。したがって発表される計数はきわめて暫定的な性格のものであり、その後における、より完全な資料の入手または改訂にともない、逐次改訂されるものもやむをえないところである。

また、最終的には、年度の確定推計によって、おきかえられるものであるということを付言する。


<資料2> 四半期別国民所得統計の季節調整について

ここに掲げるのは経済企画庁経済研究所が総理府統計局の協力を得て行った家計調査資料(全都市勤労者世帯)再集計の結果である。


<資料3> 国民経済計算調査委員会の第一次報告

(はじめに)

国民経済計算調査委員会は、国民経済計算整備3カ年計画の遂行に関し調査研究する目的で、経済企画庁経済研究所に設置され、昭和34年5月16日第一回会議を開いて発足した。設置の趣旨は、この報告の付録1として掲げた「国民経済計算の整備のための国民経済計算調査委員会の設置について」(経済企画庁、34.5.12)に詳細に規定されている。

当調査委員会は、第一年度の議題としてつぎの事項を採択し、4回の会議において検討を加えた結果、これらについて現段階における中間的結論に到達したので、これを第一次報告としてまとめた

議題

  • (1)わが国の現状に適合した国民経済計算の体系について。
  • (2)わが国でおこなわれている国民所得推計の問題点とその改善について。
  • (3)四半期別国民所得推計の迅速化を図り、信頼度を向上せしめる方策について。
  • (4)主として国民所得計算を中心に国民経済計算の信頼度を向上するため必要な基礎統計の改善整備の方策について

この報告は、当然重点主義的である。国民経済計算は経済統計の広い領域にわたっているので、一部の時間だけをこの委員会の仕事に割きうる委員の組織で、国民経済計算のあらゆる分野の問題を調査することは不可能である。したがって当委員会の議題の選択はとくに重要と考えられると同時に、一定期間内において実質的な改善の機会があると思われる分野を選んだ。われわれは、この報告に含まれる勧告のすべてが実現されうるとは考えていない。報告の中には直ちに着手しうるものと、その現実により長い期間を要する長期の目標と考えるものと含んでいる。

討議の基礎となったものは、主として付録4に掲げた配布資料であり、委員会の構成は付録2、付録3に示す。


※2 在庫変動に関する若干の分析

(研究のねらい)

在庫変動が短期の経済変動においてもっとも支配的な役割を演じている点は、当研究所「四半期別国民所得統計の分析」で取扱っているのでここでは繰返さない。

本分析のねらいはつぎの3点である。すなわち第一は景気変動の課程における在庫変動の態様を明らかにすること。第二は輸入在庫など在庫変動に関して近年おこなわれた論争を整理すること。第三はこれらの分析を通して既存在庫統計の欠陥を検討することである。

第二の論争の整理という点では、在庫変動と金融変動のリード、ラグ関係を一章を設けて考察し、またいわゆる「在庫論争」の過程において問題とされた輸入原材料在庫残高の把握にも一章を割いた。

第三の既存統計のデータ吟味としては国民経済全体の在庫率の分析との関連において国富調査および国民所得統計が、輸入原材料在庫分析との関連において原材料統計が、問題とされる。もとより、現在在庫統計の不備はこれだけにとどまるわけではなく、この分析に当っても幾多の限界に突当った。今後データの改善が強く要望される。


※3 景気変動と企業予想

(研究のねらい)

欧米諸国におけると同様にわが国においても、景気変動の分析と予測をよりいっそうおしすすめるために、そのひとつの分野として、企業の予想に関する種々の調査が最近数多く実施されている。しかしながら、このような企業予想調査の意義と価値についての立入った検討は、これまでわが国においてはほとんどおこなわれておらず、さらに経済の循環的変動において注目すべき役割を演ずる企業予想の性格について、それがどのような傾向をもち、また種々の変数(生産、売上、在庫、価格など)がどのように関係しあっているのかという問題の実証的分析は、その重要性にもかかわらず、いままでのところ皆無に近い。本研究は、つぎのような三つの問題を究明することによってこの未開拓の分野に対してひとつの接近を試みようとしたものである。

  • (1)わが国における企業の予想はどの程度に正確であり、他の諸外国における結果と比較してどのような特徴をもっているのか。
  • (2)景気予測のために、企業予想調査のデータは、どのような利用価値をもっているのか。
  • (3)景気変動との関連において、企業予想に関する種々の変数がどのように関連しているのか、またそれが企業の行動とどのように関係するのか。

企業予想調査では、種々の変数に関する予想調査と並行して実績の調査も行われているが、(1)および(3)の問題についてのわれわれの分析はm企業ごとに毎回の調査の原票を一々比較検討していくという手続を基礎としておこなわれた。この場合、企業予想の性格が、業種別、企業規模別および景気局面別にみて、どのとうな相異や変化を示すかという点をとくに重視して考察した。

(2)の問題に関しては、各企業ごとの動きではなく、全体としてある変数がどのような変化方向への傾きを示しているかをみるために、データをいわゆるディフュージョン・インデックスに組替えてみた場合、企業予想統計がどのような予測力をもつかという問題に分析の重点がおかれた。そして、このような角度から、景気予測における種々の既存の方法に対して、ひとつの新らたな寄与をなそうと意図したのである。

現在わが国で定期的、組織的におこなわれている企業予想調査としては、企画庁の「ビジネス・サーベイ(企業経営者の見通し調査)」(年4回実施)、中小企業庁、三大都市商工会議所の「三大都市中小企業景況調査」(毎月)、日本銀行の「主要企業の短期経済観測」(年4回)の3種類がある。このうち日本銀行の調査は昭和26年8月から「産業界の短期観測」として日本興業銀行が実施していたものを昭和32年以降、調査方式に改善を加えて引継いだものである。

この研究では、このような種々のサーペイ・データの中から、かつて日本興業銀行が実施していた調査をとくに選んで、分析の主たる対象とした。このデータは月次調査によるものであり、しかも、わが国における予想統計としては、いまのところもっとも長い期間にわたって利用しうるものであり、その期間中には少なくとも1個の景気循環が含まれている。したがって、とくに景気変動との関連において企業予想の性格や諸変数間の関連の変化を分析、検討しようというわれわれの課題にとって、他の調査に比較して、このデータはとくに多くの便宜を与えてくれるものと考えたのである。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 400 KB)
  2. 3ページ
    四半期別国民所得統計(速報)に分析
  3. <分析>
    1. 8ページ
    2. 20ページ
  4. <ノート>
    1. 39ページ
      1. 39ページ
        はじめに
      2. 39ページ
        1.部門分類の一般原則
      3. 40ページ
        2.機能的基準と制度的基準
      4. 41ページ
        3.個人部門分割方式の類型
      5. 41ページ
      6. 46ページ
        5.家計および個人企業の分割勘定
  5. <資料>
    1. 48ページ
    2. 52ページ
      四半期別国民所得統計の季節調整について
    3. 53ページ
      国民経済計算調査委員会の第一次報告
  6. 58ページ
    在庫変動に関する若干の分析(要旨)
  7. 62ページ
    景気変動と企業予想(要旨)
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    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
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