経済分析第5号
経済成長と消費・投資の構成 他

  • <分析1>経済成長と消費・投資の構成
  • <分析2>消費のクロス・セッション
    データによる時系列変動の推計
  • <覚書>Econometrics における Factor Analysis の適用
    -方法論的試論-
  • <資料1>マネー・フロー推計上の諸問題
  • <資料2>海外収支勘定の検討のために
  • <資料3>四半期別国民所得統計(昭和36年1~3月期)
1961年10月
<分析1>
尾崎 朝夷
<分析2>
荒井 豊
<覚書>
並木 信義

<分析1> 経済成長と消費・投資の構成

(問題-消費・投資との適当なバランスとは何か)

最近のわが国経済の最も重要な問題の一つは消費の伸びに対して投資の伸びが著しく、今後の経済動向を決定するものとして両者の関係が今後どうなるかちいうことである。

すなわち、昭和30年から34年までの4年間をとってみると国民総生産の成長率は9.3%であるが、その内訳は個人消費支出の伸びが6.3%となっているのに対して民間設備投資の伸びは3割近くで個人消費支出の伸びの4倍以上になっている。これは外国の場合(英国・デンマーク1.4倍、スエーデン1.2倍、西独・オランダ0.8倍など)に比して異常な大きさである。そして、これを反映して国民総支出のうちに占める投資の割合も海外の場合に比べてこれまた異常に大きくなっていて訳であるが、最近のわが国の経済動向は依然たる民間における設備投資意欲の旺盛さに基いて、この投資と消費との関係をさらに国際的にみて異常な方向に一層推し進める勢いを示しているのである。

そこで、消費と投資との適当なバランスとは一体何かという問題はこの意味で現在わが国経済が当面している最も重大な問題点でなければならない。


<分析2> 消費のクロス・セクション データによる時系列変動の推計

(本分析の目的)

クロス・セクション データと時系列データの関連性については、これまでにも様々な角度から分析されてきているが、いずれも単なる理論の領域にとどめられたもので、実証的な試みはきわめてわずかである。

たとえば、クロス・セクション データによって計測された限界消費性向(または弾力性)を、時系列的な予測にしようするとき、われわれはどのような留保条件をつけて、またどの程度の推計誤差を予想して行なうべきかは、ほとんど明らかにされていない。

本分析では、そのような問題に多少なりとも接近しうるようにデータの整備を行ない、消費函数の推計を通じて両データの有機的な関連性を、計量的に把握することに目標をおいた。


<覚書> EconometircsにおけるFactor Analysisの適用 -方法論的試論-

(はしがき)

本稿はサイコメトリックス(Psychometrics)の主要理論であるFactor Analysisの Econometricsへの適用を論じようとするものである。

Factor AnalysisのEconometricsへの適用への仕方は2通りあると考えられる。

  • 統計技術的適用がその1つであり、
  • 経済行動の分析の主要な理論的武器としての役割を演ずるというのがその2つである。

統計技術的適用も興味ある結果を示しているが、しかしその適用の将来性を考えれば主たる関心は後者へと置かれざるをえない。この理論的武器を活用することによって永らく期待されその必要性が痛感されていた経済学者、心理学者、社会学者等の協働が可能となり真に納得的な経済分析が可能となるかも知れないと思われるからである。勿論その方途は容易なものではなく幾多の理論的技術的困難が考えられないではない。

われわれは従来心理学者、社会学者の側からのかかる協働の提言について接している。しかしそれらには協働を真に可能ならしめる共通の方法論の主張がみられなかったと思われる。もちろん事柄は程度の問題であって、この場合絶対的な発現は危険であることはいうまでもない。次節でこの点に簡単に触れることにする。

なお経済学者の側からも最近はここでいう行動分析に相当する分析方法の必要性を強調する人々が多くなってきている。

経済分析の前提にまつわる合理性(rationality)に関する疑問から独得の行動分析を模索しているH. A. Simonなどはその有力な一人であろうし、従来の主としてtime seriesに依拠する econometric model buildingに対する批判その他から一つの別のモデルを設定しようとするG. Orcuttなどは又他の立場を代表する一人であろう。R. J. Meyerもこの方面で大きく前進している学者である。

これらの傾向は本稿の考え方に直接間接に大きな影響を及ぼしているので、この序章の3,4節において論ずることにした。3節はより強く行動分析的発想からの発言であり、4節ではより強く統計技術的立場からの考察である。

以上の序章的説明を終えて後、第II章ではFactor Analysis全般の理論構造を簡単に説明し、とくに本論と関係の深いPrincipal Factor(Component)Solutionに説明を集中することにした。

第III章はその応用の具体例のうち特に興味ある代表例を統計技術的適用および行動分析的適用とに分けて説明した。この後者の分析が本論の中心である。

第IV章は前章の行動分析的適用の更に広範な広用を考える試案である。一つの可能なる研究分野拡大への提言である。それだけに問題が多いことも止むをえないであろう

なおFactor Analysisが従来経済学的文献において取上げられることは甚だ稀であったから簡単にその沿革を述べることとし第I章の附論とした。本稿の主題の理解を多少とも助けることと思う。従来までのところ通常経済学者の目に触れて文献でFactor Analysisに言及しているのは、筆者の知るかぎりG. U. Yule and M. G. Kendall(Y(1)p.323)およびValavanis Vail(V(1)pp.160~165)の2書があるだけで他には言及すらみられず、もっぱら心理学者の目に触れる文献およびmultivariate analysisに関する統計書において取扱われるだけであったからである


<資料1> マネー・フロー推計上の諸問題

(わが国 money flow 表の歩み)

  1. 経済企画庁が、日本経済のmoney flow表の試算をはじめて公表したのは、昭和31年10月(国民所得資料月報第77号)のことであった。「昭和26年~30年国民資本勘定(及び金融連関表)試算」という表題で、これは「国民貸借対照表」と、金融連関表の二つの時系列表で構成されていた。
  2. その後、昭和32年1月(国民所得資料月報第90号)、昭和33年8月(研究シリーズ第1号)に新しい資料を加え、推計技術を改善して夫々第2次、第3次の試算を公表した。
  3. さらに昭和34年12月(昭和33年度国民所得白書)にはmoney flow表と国民所得との接合を試みとして、「国民所得、金融総合勘定」の発表を行なった。
  4. この間、の本銀行においても、昭和33年9月には既存の金融統計を拡充して「金融資産負債残高表」「金融取引表」と名付けられたmoney flow表の推計結果表の発表を行ない、その後四半期毎の速報の発表も行なわれている。

諸外国によるマネーフロー表

  • 米国

    • 連邦準備制度理事会
      • 資金循環勘定(Flow of Found Saving and Jnvestment)
      • 経常勘定・資本勘定・金融勘定・金融資産残高表
        • 大分類 5部門(小分類 11部門)消費者および非営利部門・企業・(農業・個人・法人)・政府(連邦、州および地方)・金融(商業銀行、貯蓄銀行、保険、その他)・海外
      • 四半期ベース
  • オランダ

    • 中央計画局
      • 通貨概念(Netherland Monetary Survey)
      • 資金勘定・金融勘定
        • 5部門(中央政府・地方政府・投資機関・企業および家計・海外)
      • 年ベース
  • オランダ銀行

      • 金融取引概観(Conspectus of Financing Transactions)
      • 金融勘定
        • 6部門(中央政府・地方政府・投資機関・個人および企業・その他・海外)
      • 年ベース
  • カナダ

    • 主立経済予測委員会
      • 国民取引勘定(National Transactions Accounts)
      • 経常勘定・資本勘定・金融勘定
        • 11部門(消費者・個人企業・非金融法人企業・政府企業・銀行・生命保険・その他金融機関・連邦政府・地方政府・市町村・海外)
      • 年ベース
  • 西ドイツ

    • ブンデスバンク
      • 資金形成とその金融(Vermogensbildung undihre Finanzierung)
      • 資金勘定・金融勘定
        • 8部門(家計企業・政府・海外・西ベルリン・銀行・保険会社・建築貯蓄銀行)
      • 年ベース
      • 所得および金融勘定(Einkommens-und Finanzierungs- ubersicht)
      • 経常勘定・資本勘定・金融勘定
        • 4部門(家計・企業・政府・海外)
      • 年ベース
  • フランス

    • 大蔵省
      • 国民勘定(Les Comptes de la Nation)
      • 生産勘定・処分勘定・資金勘定・金融取引勘定
        • 4部門(企業・家計・政府・海外)
        • 金融取引勘定のみ8部門(企業・家計・政府・海外・海外植民地・ザール・国庫・金融機関)
      • 年ベース
  • 欧州統計家会議試案

    • 国民所得と金融の統合勘定
      • 経常勘定(所得・処分)、資本形成勘定、金融取引勘定、貸借対照表
        • 10部門(中央政府・地方政府・通貨機関・保険年金・その他金融機関・公営企業・法人企業・産業組合・その他内国人・海外)

<資料2> 海外収支勘定の検討のために

(海外収支勘定の検討にあたって)

国民経済計算における国際収支のとり扱いは、複雑で難解な一項目であるが、そのためか、わが国で、この問題にとりくんで明快に説明した文献はきわめて乏しく、また、われわれも時間的制約その他からこの問題にたいして、心ならずも積極的でなかった。現在、われわれが、海外収支勘定を作成する場合に、用いている基礎資料は、日銀為替管理局作成の「国際収支表」であり、概念規定と方法は、SNA1)によっている。

これらについての説明は、「国民所得推計法」第4章第11節以降に示されている。

しかし、この記述にしたがって、すべてを律しているとはいいきれない点もある。たとえば「引越荷物」は、経常取引(商品、贈与の項目)から除くべきことが明記されているにもかかわらず、「国際収支表」に含まれているために、そのままを計上してきた例もある。一方、「国際収支表」は、IMF「国際収支作成提要」2)に忠実にしたがって作成されているが、この「提要」とSNAの概念規定の差について上記書の説明には不充分な点があり、また、言及していない問題点-たとえば、政府債利子のとり扱い-もみられる。

このような欠陥は、1956年の初め頃、国連統計局の主催によって、U,N,OEECおよび IMFのメンバーがニューヨークに会し、IMFの「提要」と、SANおよびOEECの国民所得勘定間の相互関連についての討議3)をおこなっていらい、急速に、クローズアップして来たのであった。他方、SNAはすでに1953年7月に発表されたが、その後、国連統計局は各国からのSANにたいする批判を検討し、上記のUN,OE,ECIMFの討議をとりもれて、一文書としてとりまとめたのち、ふたたび各国の意見を求めた4)。このような過程をへて、SNAは、多くの部分を修正追加されて、1959年1月に、SNA改訂版の草稿が配布され、1960年に改訂版5)ができあがった。

以上の経過のなかで、SNA 修正提案は国民所得資料月報No.92(33年2,3月合併号)に、UN,OEEL,IMFの討議は同No.94(33年5月号)に翻訳掲載されたのであるが、しかし、後者の文書の翻訳において、実は、多くの部分が省略されてしまったことが、われわれの海外収支勘定にたいする検討を、いちじるしくおくらせる結果となってしまった。SNA 改訂版の全訳もまだできていないが、これはすみやかにおこなう必要があろう。また、IMFでも1956年、その「提要」の改訂草案を各国の関係者に配布して、その完成を急いでいるが、この改訂の主目的は、前記のUN.OEEC.IMFの討議よりえられた結論にしたがい、これまで発展してきた国民経済計算の成果ととりいれ、それと矛盾のない「提要」にしあげることにあるようである。

このIMFの「提要」改訂版6)にそって、「国際収支表」が作成されるのは、1961年からであろう。そこには、作成当局が、どの程度のものをつくりうるかの問題が残っている。この「国際収支表」を基礎資料としてつくられるわれわれの「海外収支勘定」は、したがって、新形式の「国際収支表」が作成されたのちに、ふたたび、検討されるとこが必要となろうが、現段階では、上記の国際的な成果を勘案しつつ、われわれの「海外収支勘定」で、当面、すくなくとも、改訂ないしは明確にしておかなければならないと考えられる点のみをとりあげることとした。


  • 1)A System of National Accounts and Supporting Tables(初版1953年、改訂版1960年)
  • 2)IMF : Balance of Payments Maunal,1950 国際収支作成提要と訳す。以下「提要」と略す。
  • 3)UN-EEC-IFM discussionsto coordinate The Balance of Payments manual, A standardired System of National Accounts and A System of National Accounts and Supporting Tables, Final Report, 16,Nov.1956
  • 4)Proposals for Revision of "A Systerm of National Accounts and Supporting Tables"and "Concepts and Defintions of Capital Formation"16 Dec,1957
  • 5)Series F No.2 Rev.1以下新SNAと略称する。
  • 6)Balance Payments manual (Final draft. Hirp Edition, Feb,1960.)以下「新提要」と略称する。

<資料3> 四半期別国民所得統計(昭和36年1~3月期)

(はしがき)

昭和36年1~3月期の国民総生産(国民総支出)について暫定計数をとりまとめたので、発表する。

つぎに1~3月期の推計を機会に参考として、四半期別総計の積み上げによる年度の国民総支出をとりまとめた。

これは年度の確定推計が12月初旬になるので、速報的なものとして暫定的に取りまとめたものであって、確定推計において、ある程度の修正はまぬがれない。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.0 MB)
  2. <分析>
    1. 5ページ
      経済成長と消費・投資の構成
    2. 15ページ
      消費のクロス・セッション データによる時系列変動の推計
  3. <覚書>
    1. 29ページ
      EconometricsにおけるFactor Analysisの適用 -方法論的試論-
  4. <資料>
    1. 56ページ
    2. 78ページ
      海外収支勘定の検討のために
    3. 90ページ
      四半期別国民所得統計(36年1~3月期)
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