経済分析第7号
製造業製品価格のコスト要因分析 他

1962年3月
<分析>
中村 厚史
<覚書>
先崎 久雄
<資料1>
佐々木ユニット
<資料2>
佐々木ユニット

<分析> 製造業製品価格のコスト要因分析

(はしがき)

製品価格の変動は二つの要因に大別される。一つは当該製品に対する需要の変化に基づくものであり、いま一つは生産コストの変化によるものである。いうまでもなく、この両者は二者択一的なものではなく、価格分析はつねにこの両面からなされなければならない。しかし、本稿の分析は後者の面からのアプローチによる結果にすぎず、今後、需要、さらに市場構造の面からの分析によって補完されるべき性質のものであるが、中間的報告として、コスト面からの分析結果を報告するものである。

観察期間は昭和27年から34年にわたる7年間である。ただし、34年の数値は本稿の基礎データである工業統計表の「速報」を用いて延長推計したものであり、近く詳細な結果が公表されるとともに改訂されるし、また最近35年の「速報」数字が利用しうるようになったことからいって本稿の数値は暫定的なものと理解されたい。また、分析の内容についても未だ十分に検討されていないので、後日加筆訂正を行う予定である。


<覚書> オランダモデルの紹介
オランダの「中央計画局」の短期予測モデル

(序)

オランダでは、政府の経済計画に独自のすぐれたeconometric modelが利用されていることはよく知られている。経済計画の策定に中心的役割を果すのは、ハーグにある政府の「中央計画局」Centraal Planbureauといわれる独立した役所である。その地位と性格はちょうどわが国の「経済企画庁」ににていて、もっぱら経済政策の綜合的立案を担当している。

オランダ政府の経済計画には、いわば短期(年次)計画と10年ないし20年の長期計画の2つのタイプがあるが、主力は前者におかれている。こういった経済計画の制度や内容については、すでに他の機会に簡単に紹介したことがあるから1)、本稿ではとくに1961年の予測に用いられたマイクロ・モデルの紹介に重点をおくことにする。この61年モデルは前の58年モデルをとりまとめて発展させたものである。

かかる短期の経済予測は、わが国の経済企画庁の「来年度の経済見透し」に相応するが、内容はかなり充実した詳細なもので、毎年たとえば"Centraal Economisch Plan 1961"という100頁を上廻る単行本として公表される。内容は海外・国内の経済情勢の回顧と見透しから始って種々想定される与件の変化について若干の条件つき予測や、税率、賃金、社会保障などの政策や制度の変更がもたらす経済(内生変数)へのimpactの分析から、さらには主要産業にまで立入った予測などが折り込まれている。最近その全訳英語版、
 Central Planning Bureau, Central Economic Plan 1961, The Hague, 1961, P 157
を入手したから、試みにその目次を揚げておこう。

  1. 1章 要旨
  2. 2章 1960年および61年における海外経済の展開
  3. 3章 1960年の回顧
  4. 4章 1961年の見透し
    1. 4.1 はしがき
    2. 4.2 想定
    3. 4.3 予測結果の概要
    4. 4.4 税率、賃金水準、投資額についての択一的な想定と結果
    5. 4.5 解説(Commentary)
  5. 5章 産業別の見透し
  6. 付録
    1. I 1961年の方程式体系の解説
    2. II Central Economic Plan およびBudget Memo-randumによる政府支出
  7. 統計表およびサーヴェイ
    1. A National budget,1956-61
    2. B monetary survey,1959-61
    3. C 主要経済統計,1950-61

1)先崎久雄、「オランダの経済計画」、『世界経済』1961年12月号。基そとしてはCentral Planning Bureau, Scope and Methods of the Central Planning Bureau, The Hague, 1956をみよ。


<資料1> 価格決定機構についての一考察

(問題の所在)

価格変動の分析は決して容易ではない。価格を構成するコストの分析、利潤の変動、市場における需要のバランス、さらに競争的価格から現実の価格をひきはなす力となっている市場要因(独占その他)など多方面からの接近が必要である。本稿は価格決定のメカニズムを明らかにするための参考資料として、価格変動のパタンを実証的に研究しようとするものである。


<資料2> 賃金・生産性格差の国際比較に関する一試論

(問題の所在)

わが国経済の将来の動向を考える場合にその手掛りとして先進工業諸国の現段階における経済水準なり経済構造なりを一応想定されることが多い。そのことは暗獣裡に経済発展段階説的思考形式がとられているように解される。本稿の目的は各国における産業別の賃金格差、付加価値生産性格差が経済発展段階、経済成長率との間にどのような関係が見出されるのかという点を検討してみることにある。すなわち、(1)経済発展ないし工業化進展の段階に応じて賃金格差、付加価値生産性格差にどのような差異が認められるのであろうか。端的にいえば工業化の進んだ国ほど賃金格差は縮少する傾向があるのかどうか、(2)経済成長率の高低と賃金格差、付加価値生産性格差の大小との関連性、つまり経済成長率の高い国ほど格差が大きいように考えられるが果してどうか、(3)経済成長率の高低と分配率の高低との関連性、つまり経済成長率の高い国ほど分配率は低いのかどうか、(4)産業別賃金構造は先進諸国と後進諸国との間にどのような相異が見出されるのか。

以上の諸点がこれから検討してみようとする問題点である。


<資料3> 四半期別国民所得統計(昭和36年4~6月期)

(はしがき)

昭和36年4~6月期の国民総生産(国民総支出)について計数をとりまとめたので発表する。

また、今回から分配国民所得や個人所得とその処分の暫定計数についても参考としてとりまとめ、利用の便に供することとした。

昭和36年4~6月期の国民総生産(または総支出)は、3兆6,181億円(季節調整済・年率16兆7,052億円)で、前年同期にたいして、6,909億円、23.6%(季節調整済・年率による前期比では3.4%)の増加をしめした。(第1表および参考表1)。

このうち、国内民間総資本形成は、1兆4,159億円で、前年同期にたいして5,444億円、62.5%(季節調整済・前期比6.0%)の、増加をしめたが、なかでも在庫投資(在庫品増加)は、4,225億円と、前年同期にたいして2,165億円、105.1%(季節調整済・前期比2.7%)の大幅な増加を記録した。さらに設備投資(生産者耐久施設)は、8,763億円で、前年同期にたいして2,986億円、51.7%(季節調整済・前期比5.1%)の増加となった。

なお、個人消費支出は、1兆9,989億円で、前年同期にたいして2,331億円、13.2%(季節調整済・前期比5.5%)と、着実に10%をこえる増加を維持している。

さらに、政府の財貨、サービス購入は3,199億円で、前年同期にたいして262億円、8.9%(季節調整済・前期比2.8%)の増加をしめした。

以上にみた国内需要、とりわけ民間資本形成の著増を反映して輸入(海外への所得支払を含む)は、5,661億円と前年同期にたいして1,349億円、31.3%(季節調整済・前期比9.0%)の大幅の増加をしめしたのにひきかえ、輸出(海外からの所得を含む)は、4,495億円にすぎず、すなわち、前年同期にたいして221億円、5.2%(季節調整済・前期比2.7%)の微増にとどまったため、経常海外余剰は、1,166億円のマイナスを記録した。

以上のように、36年4~6月期には、輸出を除き、いずれも、大きな増加をしめしたが、なかでも国内民間総資本形成のいちじるしい増加は、国民総支出の構成をかなり変化させた。すなわち、国民総支出における国内民間総資本形成の構成比は前年同期の29.8%から39.2%へといちじるしく高まったのにたいして、個人消費支出は、10%をこえる増加率にもかかわらず、その構成比を60.3%から55.2%へと低下させている。

(参考)

分配国民所得においても、経済活動の活況を反映して、勤労所得や法人所得などにかなりの増加がみられた。

特に勤労所得は、4~6月期では、1兆5,927億円(参考表3)と前年同期比16.1%の大幅な上昇をしめした。これは、ベース・アップ、臨時給与の増加、求人難による初任給の引上げなどにより賃金水準に上昇がみられたこと、また雇用者数においても生産の活況等を反映してかなりの増加がみられたことによる。

また、個人業主所得や法人所得の設備投資、個人消費の増大等を反映して4~6月期ではそれぞれ6,893億円、5,909億円と前年同期比13.2%、26.8%のかなりの増加をしめした。

以上の結果、国民所得は4~6月期では3兆668億円となり、前年同期比17.5%の著しい増加をしめし、個人所得も2兆6,107億円と(参考表4)前年同期比15.7%の増加をしめした。


全文の構成

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  2. <分析>
    1. 3ページ
      製造業製品価格のコスト要因分析
  3. <覚書>
    1. 21ページ
      オランダモデルの紹介
  4. <資料>
    1. 27ページ
    2. 47ページ
      賃金,生産性格差の国際比較に関する一試論
    3. 77ページ
      四半期別国民所得統計(36年4~6月)
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