経済分析第9号
農村市場の拡大と限界 他

1962年10月
<分析1>
藤井 将弘
<分析2>
川勝 昭平

<分析1> 農村市場の拡大と限界

(はしがき)

農村市場拡大の速さは農民層分解の進行のテンポと形態によって規定される。

産業資本の自生的な成立と発展の時期に、資本主義的階級分解の順当な進行の一環としてあらわれるのが、典型的な農民層分解-両極分解の過程である。

ところがわが国の明治以降の農民層分解は、日本資本主義の成立・発展過程の特殊性と零細農耕という制約によって、極端に歪曲され、両極分解の現象形態はいたって微弱なものに止どまった。つまり農地改革以前には、主として地主的土地所有制が農民層分解をはばみ、農民層の経営的向上はいわゆる「中農肥大化」という特殊な形態として発現した。

また農地改革以後において、小商品生産農業の一層の発展によって資本の再生産機構により深く包摂された小農制農業は、主としてその価格機構を通ずる収奪に直接さらされている。その結果、経営・技術水準の高度化によって、両極分解への内的要因は一段と強化されたにもかかわらず、分解の現象形態は依然、両すくみの膠着状態を脱却できない。

こういうわけでわが国農村市場の拡大テンポは、農民層分解の特徴的なあり方によって、強く規制されていると言える。

さて農地改革は農民を高額小作料から解放することによって、わが国の小農制農業が高度化する基礎を与え、事実この改革の経済的効果は、朝鮮動乱を契機とする工業発展に触発されて実現されたのである。

本稿はこの点を小農経営が購入する生産資財の量的拡大とその質的構成変化、つまり農村市場の拡大と構造変化の視点から、まず明らかにしたものである。

ところが他面において、改革は小農民を零細な土地所有に結びつけることをねらったものであったから、農・工業の不均等な発展のもとで、小農制農業から企業的農業への高度化を困難にすることとなった。30年以降の経済高成長の過程で、農・工業の発展水準の開きがますます顕著になる事情のもとで、一部上層農民の企業農への指向がつよまり、農業法人化、農業共同化という、いわば農民の自生的な企業的農業への転化が散発的に発現しつつあるが、このことは、小農制農業の高度化がスムーズに行なわれていることを示すものではない。むしろ上向農民層が依然として家族零細経営ないしは、農業労働者一人雇用の規模で頭打ちし、大多数の中・貧農層は農外賃労働兼業化を強めるという方向にある。つまり農民層分解の内攻化が、きわめて大きな矛盾を孕むものであることを物語っている。

本稿はこの点を農村市場の拡大の限界という視点から把えようとしたものである。

なおここでは、農村市場のうちの農業生産財市場を主に取扱い、兼業農家の農外賃労働所得に支えられて、全農村市場の2/3のウエイトを占める農村消費財市場は直接対象としていない。

農村生産財市場の主要な構成要因である肥料、飼料、農機具および農薬を対象として、これらの市場が、30年以降の高度経済成長下の小農制農業の進展に伴って、いかに展開したかを、とくに生産財市場の動向の実態を把握することに力点をおいて分析したものである。


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  2. 2ページ
    第一節 小農制の高度化と農村市場
  3. 10ページ
    第二節 資本主義の発展と農村市場
    1. 11ページ
      (1)農業生産資財市場の展開
    2. 15ページ
      (2)農業生産資財の需給と消費
    3. 27ページ
      (3)農業生産資財の供給構造
  4. 36ページ
    第三節 農村市場の拡大と限界

<分析2> 要素生産性と要素価格および適正産業間要素配置の研究

(まえがき)

本論は、経済成長の過程において、資源の産業間における適当な配置とは如何なるものであるかを中心問題とする。わが国の農業と製造工業のニ産業をとり上げ、それぞれの産業に利用される原始生産要素である、労働と資本がそれぞれの生産力から見て均衡的な所得の機能分配を確保しようとすればどのような条件が必要であるかを吟味しようとするものである。


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  2. 41ページ
    要素生産性と要素価格および適正産業間要素配置の研究

<資料> 四半期別国民所得統計(昭和37年1~3月期)

(はしがき)

昭和37年1-3月期の国民総生産ならびに分配国民所得等に関する計数をとりまとめたので発表する。

これらの計数は、わが国経済の最近の動向を可及的早期に把握するための一応の試算としてとりまとめられたもので、近く予定されている36年度分本推計の実施の際には、確定基礎資料の入手等により、ある程度の改訂は当然免がれ難いものであるが大局的な分析・判断には充分役立つものと考えられる。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 963 KB)
  2. 54ページ
    四半期別国民所得統計(37年1~3月)
    1. 65ページ
      (付)国民所得統計からみた昭和37年1~3月期経済の特色
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