経済分析第10号
経済成長下における企業行動-化学工場を中心として- 他

  • <分析1>経済成長下における企業行動-化学工業を中心として-
  • <分析2>日米間物価の比較分析
  • <資料>四半期別国民所得統計(37年4~6月)
1963年2月
<分析1>
西浦 達
<分析2>
野田 牧

<分析> 経済成長下における企業行動-化学工業を中心として-

(問題の所在)

昭和31年以降現在に至る日本経済の成長は世界に類を見ないほどの高さを示してきたことは周知の事実である。その原因としては第1に成長に対する企業者の過度の信頼感があったこと、第2に企業間でのシェアー拡大のための血で血を洗う争い、第3に技術革新の進展につれての輸入依存度の低下とそれに伴う国内市場の拡大、第4に生産合理化の進展などが従来あげられてきている。そしてこれは銀行の安易な貸出態度と結びついて、過剰投資を生み出し、反面、企業の資本構成の悪化を招来しており、この結果、長期沈滞が早晩おとずれる可能性が強いとされる。しかし、これらの設論は、いずれも未だ証明されてはおらず、単なる推測の域を出ていない。

企業をとりまく外的環境として考えられるものには、製品市場、労働市場、原材料市場、資本市場等数多のものがあるが、これまでのオーバー・ボロウイング→強成長という設論は主としてこのうちの資本市場にのみスポット・ライトをあてたものと云うことができ過剰投資-強成長という見方はマクロの製品需給に力点を置いたものといえるのであろう。註)しかしながら、ここで疑問とされるのは、第1に、借入金の増加率が資本金の増加率より大きいという事実、即ち、オーバー・ボロウイングということは、今日の企業体の本質に照らして必ずしも不健全とは云いきれないのではないかということであり、第2に過剰投資が云々されるためには、製品需要を上廻る投資によって、必ずや企業における利益率の低下と、操業度の低下が起るはずであるが、このような事実が果してあったか、又、これからも起り得るものであるかということである。

元来、企業なり、国民経済なりの成長の起動因は製品市場の動き、即ち製品需要の動向であると考えられる。つまり、先ず、旺盛な製品需要があり、更にそれに対処することを可能ならしめるようなその他の市場の条件が備わって、はじめて高度の成長が達成される。

もともと、個々の企業者の立場から云えば、最も緊要な問題は投資対象の選択、即ち、製品の選択にあると云えるであろう。投資行動決定の是非が企業成長の命運を定めるのである。しかしながら、従来の経済分析にあっては、せいぜい産業別需要動向の計測に止まり、製品別需要の動向と、それに応ずる投資行動の分析は行われていない。又、個別企業の問題をとり扱う経営分析にあっても、これまでの分析手法は極めて静態的であり、経営成果の尺度とされている諸財務比率が、製品の選択、企業の成長という動態的な企業行動といかなる関係にあるかという分析迄は立ち入っていない現状である。

そこで、われわれは何よりもまず、製品市場に目をむけ、ついで、資本市場でとりあげられている問題が果たして成長を阻害するものである否かを観察し、併せて、経営分析で用いられている諸財務比率と企業成長の因果関係をさぐることとしたい。

ここでは調査対象として化学工業をとりあげたが、これは化学工業における製品が極めて多岐にわたると同時にその構成変化が速やかであるため、製品需要の動向をとりあげるにあたって最も適切であると考えられるからである。

尚、本研究は現在当研究所資本形成ユニット、労働ユニットの共同作業として進行中の「成長要因と企業者行動」研究プロジェクトの一環としてなされた。本研究に於て用いられた諸データはグループ全員による協力のもとに作成されたものであるとともに、内容についても、グループ内部で検討が加えられた結果とりまとめられた。


註)企業の成長をとりあげた文献としては、わが国では三菱経済研究所「企業の成長と収益性」があるが、これはオーバー・ボロウイング-強成長という資本市場の動向を主体としたものである。又、36年度経済白書は過剰投資-強成長という観点をうち出している。

外国文献としてはE. T. Penrose「会社成長の理論」があげられる。これは従来の市場が企業規模を制約するという企業理論に対して会社は製品の乗り換えを通じて拡張することが可能であるという新しい企業理論を首唱している点で注目に値するものであるが、その上で尚、企業成長の制約条件として企業家の「企業心」という計測不能なものをあげているために、迫力に乏しくなってきているきらいがある。


全文の構成

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  2. 2ページ
    経済成長下における企行動-化学工業を中心として-
    1. 2ページ
      第1節 序-問題の所在
    2. 3ページ
      第2節 成長とオーバー・ボロウィングについて
    3. 11ページ
      第3節 投下資本利益率と強成長
    4. 14ページ
      第4節 企業の成長と自己金融比率
    5. 19ページ
      第5節 化学工業における製品別需要と供給
    6. 30ページ
      結論
    7. (付) 付属資料

<分析2> 日米間物価の比較分析

物価の水準や構造の研究を行うに際しては、単に国内的背景を論ずるだけでなく、国際的比較をも併せ行って、国際的視野にたってわが国の物価水準や物価構造のおかれている地位を明らかにすることが必要である。これは、為替レートの問題、実質所得や消費水準の国際的較差等の分析に対する基礎資料としても役立つものである。それ故に、当研究所では「物価の水準と構造の国際比較」という研究テーマをとりあげて研究を進めて来た。本稿はそれら成果の一部である

研究の足がかりとしてはまず日本とアメリカの比較を行い、卸売物価と小売物価についてとりまとめた。前者は1954~59年の6年間について両国卸売物価統計によって品目毎に円、ドル比率を計算し、これをアグリゲートして若干の分析を行っている。後者は1960年について小売物価統計により、家計費目別に物価比較を算出し、既往の諸推計と関連づけて1950年以降の傾向を分析した。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 541 KB)
  2. 63ページ
    日米間物価の比較分析
    1. 63ページ
      第一節 卸売物価の比較分析
    2. 73ページ
      第二節 小売物価の比較分析

<資料> 四半期別国民所得統計(昭和35年1~3月期)

(まえがき)

昭和37年4-6月期の国民総生産及び分配所得等に関する計数をとりまとめたので、発表する。

これらの計数は、わが国経済の最近のの動向を可及的早期に把握するための一応の試算としてとりまとめられたもので、37年度分本推計の際に改訂されるべきものであるが、当面の大局的な分析、判断には充分役立つと考えられる。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 486 KB)
  2. 81ページ
    四半期別国民所得統計(37年4~6月)
    1. 92ページ
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