経済分析第14号
産業別生産関数の計測と生産構造 他

  • <分析>産業別生産関数の計測と生産構造
  • <分析2>企業流動性と投資活動 -設備投資関数を中心として-
  • <メモ>「初任給の変動とその影響」に関するメモ
1965年1月
<分析1>
斎藤 昌二
<分析2>
田中 章介
<メモ>
中村 厚史

<分析1> 産業別生産関数の計測と生産構造

(はじめに)

最近わが国の生産構造の分析において、資本係数や生産関数などの分析要具がしばしば用いられている。経済計画への応用面でも所得倍増計画ではその重要なフレームワークとしての資本係数が用いられたし、また中期経済計画における生産関数の適用は周知のとおりである。

生産における技術進歩とか規模の経済性とかいった概念に対して、生産関数論はこれまで多くの実証的な解明を与えてきた。しかしこれまでの分析において生産関数はマクロ・アグリゲートな分析への適用がきわめて多かったにもかかわらず、これを産業別、工程別にブレーク・ダウンして把えるという方向への試みはチェネリー以後の技術的生産関数論の展開はあるにせよ、多くの課題を今後に残していると思われる。

生産関数はそのタイプから大別して資本係数とか雇用係数といったような完全補完的な固定係数タイプの生産関数と、より一般的な生産要素代替性を考慮したいわゆる代替的生産関数とに区別されよう。そしてこれは従来の生産関数論の二つの系譜に対応しているのである。

すなわち、一方はワルラス、レオンチェフの生産係数にその基礎をおくL-shapeのものであり、チェネリーの「技術的生産関数」論、サミュエルソン、ソローらの「異質的資本」概念の導入によって大きな発展をみている。他方は、ヴィクセル、ダグラスらの限界生産力理論にもとづくマクロ・アグリゲートな代替的生産関数の方向であり、ことに最近ソロー、ミンハス、アロー、チェネリーらによってC.E.S.生産関数が発表されるに及んでさらに一般的な要素代替性を与えられて今日脚光を浴びつつある1)

この両者は前述のStanford GroupによるC.E.S.生産関数によって一応形式的には統合されている。

すなわち、そこでは労働と資本の代替弾力性が0の場合にはレオンチェフ型、1の場合にはダグラス型となる。従って、等質化された資本概念を用いてアグリゲートした単一の生産関数の形式としては、C.E.S.関数は最も一般的なタイプであるといってよい。しかし、現実の資本構造を異質的な資本の集まりと考えるとき、最も基本的な生産関数のタイプは工程-品目の組合せに対応して定義されたL-shapeの品目別生産関数が支配的であるように思われる。そして全産業もしくは産業別のダグラス型関数やC.E.S.型関数のような代替的生産関数はこのようないわば固定係数的生産関数のアグリゲートされた形として導入されるものと理解するのがわれわれの基本的立場である。

この分析は、産業の生産構造をこのような生産関数理解の視点に立って理解しようとする一連のわれわれの研究成果の一部をなすものである。


1) K.J. Arrow, H.B. Chenery, B.S. Minhas & R.M. Solow "Capital-Labor Substitution and Economic Efficiency" Review of Economics and Statistics Vol.XL111 No.3 1961


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 756 KB)
  2. 1ページ
    第1節 はじめに
  3. 1ページ
    第2節 産業別生産関数の計測
    1. 2ページ
      1.資料
    2. 4ページ
      2.計測式
    3. 5ページ
      3.計測結果
  4. 7ページ
    第3節 要素需要関数と規模の経済性
  5. 9ページ
    第4節 産業別生産関数と生産構造
  6. 16ページ
    第5節 結び
  7. 16ページ
    付表

<分析2> 企業流動性と投資活動-設備投資関数を中心として-

(はしがき)

短期予測や長期計画を、計量経済学的方法にもとづく連立体系モデルによって行なう場合、あるいは政策シミュレーションによって財政・金融政策の効果を計量的に把握しようとする場合にも、実物面と金融面との相互関連をどのようにモデル体系のなかに組み入れるかが重要な問題となるであろう。とくに、わが国のように消費者金融が一般化せずに、企業金融が中心であるような場合には、企業の投資活動と金融的要因の関連メカニズムを明らかにし、設備投資関数に金融的要因を導入する工夫が必要であろう。しかし、従来の設備投資関数の計測をみてもわかるように、種々の金融変数が使用されており、その変数の意味するところも区々である。

また、最近の金融分析において、実物面と金融面の連鎖として、流動性がとみに重視されるようになっている。しかし、流動性の概念自体がいまだ十分検討されていないのみならず、流動性と投資活動との関係についての実証的な分析も必ずしも満足すべきものでない。

われわれはこの点に着目して、まず企業の投資活動に影響を与えるところの金融的要因として「企業流動性」を検討し、これを手元流動性(ストック概念)と企業の資金調達可能性(クレディット・フロー概念)とに整理した。ついで、これらの流動性と企業設備投資との関係について、計量経済学的方法によって分析を試みた。

さて、企業と投資活動と金融面との関連が計量的に検証されれば、すなわち設備投資関数や在庫投資関数において、実物面と金融面との関連が明らかになれば、金融要因を媒介にして金融政策の実物面に与える効果について分析を進めることができるであろう。

したがって、本分析はマクロ・モデルによる金融政策の効果分析のための作業の一部をなすものである。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 880 KB)
  2. 25ページ
    はしがき
  3. 25ページ
    第1節 企業の投資活動
    1. 25ページ
      1.投資活動と金融的要因
    2. 29ページ
      2.企業の設備投資需要
  4. 32ページ
    第2節 手元流動性と設備投資
    1. 32ページ
      1.企業の手元流動性
    2. 38ページ
      2.手元流動性と設備投資との関連
  5. 41ページ
    第3節 資金の調達可能性と設備投資
  6. 49ページ
    第4節 産業別投資関数の計測
  7. 50ページ
    参考文献
  8. 51ページ
    付表

<メモ> 「初任給の変動とその影響」に関するメモ

(分析の目的)

  1. (1) ここ10年間における賃金動向をみると
    1. (イ) 35年以降学卒初任給の上昇率が著しく高まったこと。
    2. (ロ) 36年以降平均賃金水準の上昇率も極めて大きいこと。
    3. (ハ) 規模別初任給格差は一貫として縮少し、37年には規模別格差が解消したこと。
    4. (ニ) 34年以降規模別平均賃金格差は縮少過程にあること。
    5. などの特徴が認められる(後掲第12および4表)。
  2. (2) わが国企業における労働者各人の賃金は学歴、性、年令、勤続年数など主として属人的要素によって決定される面が強い(第3表)。かかる賃金体系の下においては、初任給、とりわけ中卒男子初任給の変動が他の労働の賃金変動に及ぼす影響は大きい。上記のように初任給と平均賃金水準とに同調された動きが認められるという事実もこのような事情を反映しているものと解される。
  3. (3) 本分析の目的は中卒男子初任給決定のメカニズムを明らかにし、初任給変動の測定ならびに、それが平均賃金水準変動に及ぼす影響を測定することにある。

第1表 規模別賃金(製造業) 第2表 中卒男子初任給(製造業,通勤) 第4表 規模別賃金格差(製造業)

全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 658 KB)
  2. 61ページ
    I 分析の目的
  3. 61ページ
    II 初任給決定のメカニズム
  4. 62ページ
    III初任給変動の測定
  5. 63ページ
    IV 初任給変動の影響
  6. 64ページ
    V 賃金予測の問題点
  7. 65ページ
    補論
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)