経済分析第22号
短期経済予測パイロットモデルの外挿テスト結果(42,43年度) 他

1967年6月
<分析1>
宍戸 駿太郎,田中 章介,長屋 誠一,河野 彰夫, 斉藤 充夫,川名 英子
<分析2>
市川 洋,林 英機,森田 青平

<分析1> 短期経済予測パイロットモデルの外挿テスト結果(42、43年度)

(まえがき)

当経済研究所では、本誌前号に発表した「短期経済予測パイロットモデル」を使用して日本の経済に関する各種のシミュレーション分析を行なってきたが、そのうち、とくに昭和42,43年度の外挿テスト結果を下記にとりまとめることとした。

このモデルは、前号に紹介したとおり昭和29年度第1四半期から昭和40年度第4四半期まで12年間のデータを用いた四半期モデルで、方程式数53本の連立方程式体系からなっている。なお、方程式の推定方法には、原則として制限情報最尤法が使われている。また、このモデルは、マクロ経済の短期予測と財政金融政策など政策効果の測定とをおもな目的としており、昨年春以来、経済企画庁に設置されている大型電子計算機を使用して、このモデルによる各種のシミュレーション分析が行なわれてきた。

なお、現在のパイロットモデルには、とくに金融、物価等の側面について、なお改善を要する面が残されており、経済研究所では、このモデルをさらに拡大強化して、いっそうきめの細かい予測と分析を行なう予定である。このため方程式数100本程の「マスターモデル」の開発がすすめられている。

以下に説明するテスト結果は、いずれもモデルの予測性をテストする目的で行なわれたシミュレーションであって、前提条件(外生変数)の変化に応じて、モデルから導かれる予測値(内生変数)は変わってくる。たとえば、世界貿易が、いっそう拡大するとか、金融市場がよりいっそう引き締まる場合には、当然内生変数の値は異なってくるもので、ここで行なった予測数値は、例示的な「条件付き予測」として考えるべきものである。この意味で以下のシミュレーション結果は、政策的判断を加えない技術的な計算結果である。

なお、このモデルの予測精度、性格を検討するため各種に実験が行なわれてきたとこは前号で述べたとおりであるが、そのうち、おもな項目についての事後的な短期予測誤差を要約すると次のとおりである。

短期予測談差(%)
  第1年度 第2年度
国民総支出 0.8 1.3
個人消費支出 0.9 1.1
民間設備投資 2.1 3.5
実質国民総支出 1.0 1.5
(注)予測誤差:実績に対する標準誤差の比率(絶対値,%)

この種の計量モデルで有名なものとして、米国ペンシルバニア大学のワートンEFUモデル(方程式数76本)や商務省のOBEモデル(方程式数49本)があり、いずれも高い予測精度が認められている。今回の短期予測モデルの内挿テスト結果を前者のモデル(ワートンEFUモデル)と比較すると、ほぼ同程度ないしは若干これを上回る予測精度が示されている。


全文の構成

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  2. 1ページ
    I.まえがき
  3. 1ページ
    II.前提条件
  4. 2ページ
    III.外挿テストの結果

<分析2> 租税関数論

(制度の定式化)

租税関数は代表的な制度関数であり、かつ制度が毎年改訂されている。租税制度の改正点のうち、税収に大きな影響を与える戦略的因子をつかみ出し、制度になるべく忠実に租税関数を定式化し、計測するのが本研究のねらいである。

税収を決定する要因を大別すると、税収法、納税義務者の所得等、および申告率(あるいは納税者の正直度)の三つに分かれる。本研究においては、マクロモデルの中の財政部門を説明するための租税関数の作成が主目的であるため、所得または課税標準を説明する独立変数は特殊なものをいっさい使用せず、国民所得統計の中にこれを求めた。

制度に関するパラメーター(例えば扶養控除)は公表される衆知のもののみを使用し、一般的なマクロモデルの中で運転するのに支障をきたさないことが研究にあたって要請されたのである。

さて、租税関数が他の投資関数、消費関数等の行動方程式と最も異なる点は、行動方程式において経済主体の行動を規定する理論仮説に相当するものが租税法として明確に規定されていることである。

経済主体は租税法の規定にのっとつて行動することが強制されており、したがって制度パラメーター以外の構造が安定性をもつならば、租税法の規定を忠実に表現した租税関数は、観測期間だけでなくかなりの長期の外挿にもたえるはずである。

のような考え方に立脚して租税関数の定式化と計測を行なったため、租税法の構造が異質的な税目はすべて独立した関数として扱うこととした。したがって関数の数はかなり増大している。

租税政策として実施されるもののうち、税収に大きく影響するものと、税収にはあまり影響を与えないものがある。後者の例としては、たとえば企業合併促進のための特別措置がある。本研究においては、税収の計測が主目的であるので、後者のような租税効果に関するパラメーターを関数にとり入れることを行なわず、税収に直接強い影響を与える制度パラメーターを1税目につき2~3個とりあげることとした。租税の租収以外の経済効果の計測のためには、それぞれの目的のための独自のアプローチを必要とするであろう。

本研究において、被説明変数とされる税目別税収は「経済分析のための租税統計」によった。シミュレーションや外挿にあたっては、前述したようにマクロモデルで内生化される国民所得勘定の計数と若干の制度パラメーターを与えるだけでよいが、Specificationにあたっては租税プロパーの統計をかなり活用した。第VII章、第VIII章の基礎データ作成部分は本研究のかなり重要な部分をなしており、国税庁の申告所得税標本調査、民間給与実態調査、自治省の課税状況調べ、間接税関係統計が原資料である。

これらの基本資料を使用することによって、所得税の累進税率の線型モデルへの取込みと、間接税の制度改正を昭和40年を100とする制度指数化することに成功したのである。

なお、「経済分析のための租税統計」は、国民所得統計の作り方が必ずしもこのような研究目的に向いていないので、租税統計を集計し直し、一部推計を加えたものである。おもな相違は次の点にある。

  • 1. 法人の負担している利子・配当に対する源泉所得税分を法人税とみなした。
  • 2. 出納整理期間の年度区分改正による税収の変動を除去した。
  • 3. 地方税の四半期別計数を正確にした。(このために必要なものについては調査、照会を行なった。)
  • 4. 直接税、間接税の区分を必要に応じて変更できるようにすべて税目別に系列を作成した。

なお、この体系は税収予測に使用できるだけではなく、たとえば経済計画において将来の租税負担率を定めれば、それを免税点いくら、税率をどうきめるか等、制度の言葉に翻訳するのにも使用できるように配慮してある。

地方税関数については、地域別所得データさえ得られるならば、同一方法によって県別の関数作成が可能であろう。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 920 KB)
  2. 7ページ
    I.制度の定式化
  3. 16ページ
    II.所得税関数
  4. 26ページ
    III.個人地方税関数
  5. 34ページ
    IV.法人税関数
  6. 40ページ
    V.間接税関数
  7. 48ページ
    VI.その他の関数
  8. 57ページ
    VII.間接税制度指数
  9. 83ページ
    VIII.所得税基礎資料
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