経済分析第28号
銀行貸付け平均金利の変動 他

  • <分析1>銀行貸付け平均金利の変動
  • <分析2>建設デフレータ―における生産性の問題について
1969年7月
<分析1>
西川 俊作,一色 晃造
<分析2>
降矢 憲一,鈴木 孝雄

<分析1> 銀行貸付け平均金利の変動

(研究課題と分析方法)

全国銀行貸付け金利は、諸金利のなかで資金市場の需給条件変化を反映して伸縮的に変化していることはしばしば指摘されている。ただし、昭和34年以降アメリカのプライムレート制にならって標準金利制がしかれ、さらに戦後一貫して臨時金利調整法による規制が存続し、低金利政策が支配的であったから、これらの制度的ワク組みのなかで、「比較的自由に」変化する唯一の金利であったというべきであろう。このようなわけで、全国銀行貸付け金利は各種のマクロ・エコノメトリック・モデルにおいて、(長・短期)資金市場の条件を示す近似変数とみなされ、たとえば、在庫、設備投資あるいは輸出などの(外生的)決定要因として戦略的な役割を与えられ、あるいわいわゆる金融モデルもしくはブロックにおいて銀行採算を左右する因子、さらにはまた銀行貸付け資金市場の需給バランスをはかる媒介変数として扱われているのである。

たとえば、当研経済究所の短期パイロット・モデル〔4〕では、投資の決定に当該(四半)期の貸付け金利が、在庫関数に前期の金利が、また商品輸入の決定に半年まえの金利増減が、それぞれ働いている。ただし、当期金利も含めてすべて先決もしくは外生変数として扱われ、モデル内部ではその水準は決定されていない。したがって、この種モデルによるかぎり、金融政策のインパクトについて政策シミュレーションをおこなったりすることは、できない。全国銀行貸付け平均金利はすくなからぬ規制外小口貸出し(金利)を含むし、そもそも貨幣当局が直接コントロールできる政策手段ないし戦略変数ではないのである。あるいは、この種モデルによって景気動向を見通そうという場合、われわれは外生変数としての貸付け金利そのものをあらかじめ予測しておかねばならないという困難に遭遇する。全述のとおり、全国銀行金利にはかなり強い制度的規制があるので、たとえばつぎのような制度式をたてることは容易である。
 すなわち、(当経済研究所マネー・サプライ・モデル〔3〕

式

右辺はすべて先決的変量であるから、もしも予測時期のδが適当な形で入手できれば、このような経験式をさきのモデルといっしょに使えば、すくなくとも貸付け金利を予測するという困難は省くことができる。事実、経済審議会計量委員会ではその「経済社会発展計画」モデルに、(A)と類似の関係式を追加して、公定歩合を通ずる金融政策効果にかんするシミュレーション実験を試みている。(最近公表された同委員会『第二時報告』〔5〕参照)。

こうした処理、手続きは、統計的経験式に多くゆだねるという点で便宜的であり、十分に理論的意義があるとはいえない。しかしながら、全金融機構を的確に把握した金融モデルの作成にはまだ時日を要する段階であるとおもわれるから、以下においてわれわれは、全銀貸付け平均金利の変動を月別データによって、その自己回帰の側面〔i =f (i-1,i-2・・・・・・)〕、ならびに公定歩合との連動関係〔i =g (δ,δ-1・・・・・・)〕の2点につぼって分析し(以上が§2および§3の課題である。)、ついで§4では月別データの解析から得られた結果と、四半期ないし半年データから導かれる貸付け金利方程式との異同を追究したい。いわゆる時間にかんするアグリゲイションがそこでの主要関心事となろう。以上はすべて、金融ブロックの構成因子としての全国銀行金利決定式の吟味のための作業であり、さらには銀行貸付け市場にたいする計量的研究の一端をなすものなのである。


〔3〕経済企画庁経済研究所「金融モデルによる日本経済の分析」(研究シリーズNo.15)昭和39年

〔4〕経済企画庁経済研究所「短期経済予測パイロットモデル」『経済分析』第21号(昭和42年3月)

〔5〕経済審議会計量委員会「計量委員会第2次報告-経済社会発展計画のための計量経済モデルのフォローアップ-」昭和43年9月


全文の構成

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  2. 1ページ
    I.研究課題と分析方法
  3. 2ページ
    II.貸し付け金利の自己回帰
  4. 8ページ
    III.銀行貸付け平均金利と公定歩合
  5. 20ページ
    IV.貸付け金利方程式のアグリゲイション
  6. 23ページ
    V.参考文献

<分析2> 建設デフレータ―における生産性の問題について

(はしがき)

経済の高度成長下の民間設備投資の著しい伸びに対する公共投資の立ち遅れが、資本の効率化のための産業基盤の拡充、生活環境の整備という両面から問題とされるようになった。総固定資本形式に占める公共投資の比率の目標を50とする経済社会発展計画が策定されたのは昭和42年であるが、政府資本形成デフレーターの伸びが計画の予想数値である2.2パーセント(年率)を大きく上回る3.8で、公共投資の名目支出の増加にもかかわらず、実質でみた公共比率の低下が大きいことが問題とされた。

民間設備投資は機械設備が中心(ウエイトは昭和42年度で約65パーセント)であるのに対し、公共投資の場合は建設中心(昭和40年度のウエイト約70パーセント)であり、機械設備の価格の相対的安定に対し、賃金の上昇が著しいことを主因に民間設備投資デフレーターの上昇に対し政府固定資本形成デフレーターの上昇が大きく、実質面での両者のギャップが拡大される結果をまねいているという事実がある。

昭和43年度の国民所得統計の改訂によって、政府固定資本形成デフレーターは変動ウエイトを採用したために、コスト構造の変化を反映して上昇率(昭和28年~昭和42年、年率)は、従来の3.8パーセントから3.0パーセントへとかなり低下した。

しかし、コスト構造の変化のみによってもこの程度の差があることは、また、労働生産性および原料生産性の上昇などをいかに評価するかということの重要性を意味するものである。従来、生産性の変化を考慮したデフレーターの開発が課題とされていたが、今回、一応の限定された範囲での試算が行なわれたので、問題提起ということで紹介することとした。方法論的にも、資料面でも問題がないわけではないが、研究的作業として今後の検討の素材としたい。

われわれの作業のねらいと作業仮説は以下のとおりである。

建設業のように質の違う生産物(out put)をつくる場合、その産業のOutput price Index(以下「O. P. Index」と略称する)をつくることは非常にむずかしい。質が違っても各種生産物が多量に生産される場合、その産業のO. P. Indexは、各生産物の価格指数(price index)の加重平均で推定することも可能である。しかし、建設業の場合、生産された生産物が、おのおの質が違うので、O. P. Indexは、作成されず、価格指数は、投入要素の価格指数を加重平均して計算されている。このようにして作成された価格指数をわれわれは、Input Cost Index(以下「I.C. Index」と略称する)とよぶ。I.C. Indexは、直接O. P. Indexが作成できない場合、近似値として使われるが、これには大きな問題がある。たとえば、O. P. Indexの計算できる生産物をとり、それをI.C. Index と比較すると、両者の間に開きがあることが多い。たいていの場合、O. P. Index のほうがI.C. Indexよりも、上昇率が低い。この理由は、生産性が上昇すると、その価格を下げようとする作用がはたらく傾向があることによって、O. P. Indexが生産性が上昇を反映するからである。しかし、いままでに作成されてきたI.C. Indexは生産性上昇を全く無視しており、結果的には、生産性が上昇している産業においては、I.C. Indexの上昇はO. P. Indexのそれを上回ることになる。

われわれは、この論文の第1節において、生産性の上昇を考慮した指数を作成した。この方法は、Douglas Dacy〔1〕が提案したもので、これをわれわれは、Input Productivity Index以下(「I.P. Index」と略称する。)とよぶ。しかし、生産性の考慮の方法は、Dacyが提案したもの以外にも考えられないわけでもないので、この方法がどの程度の妥当性をもっているかを、第2節で検討した。

もし、I.C. Indexの上昇率が、実際の価格の上昇率よりも高ければ、その数値を使って実質化されたものは、バイアスをもつ。一つは、産業別の付加価値をI.C. Indexで実質化すれば、実質付加価値の成長率は、実際のそれよりも低くでる。また、資本ストックを推計するとき、投資を実質化して計算するが、I.C. Indexを使った場合、資本ストックの成長率はデフレーターに上向きのバイアスがあるため、実際の成長率よりも低くでる可能性がある。第3節において、I.C. Indexを使うことによって、産業別の資本ストックの成長率に、どの程度バイアスをもたらすかを計算している。

歳出関係資料についても、追加・訂正を行うことが予定されている。計数の作成方法、内容等については、「財政制度モデルの研究」および「租税関数論」を参照されたい。

  • [付記]

    本研究は京都大学東南アジアセンター吉原久仁夫氏(前ミシガン大学助教授)の協力をえて賃金・物価プロジェクトで共同作業したものである。

    また、資料に関しては日本住宅公団から絶大な御協力をいただいたことを記して感謝したい。住宅の工事費に関する詳細な資料なくしてはこの研究の成果はえられなかったであろう。


〔1〕Dacy, D., "A Price and Productivity Index for A Nonhomogeneous Product." Journal of the American Statistical Society, June,1964,469-480.


全文の構成

  1. 全文(PDF形式 775 KB)
  2. 24ページ
    I.はしがき
  3. 25ページ
    II.第1節 生産性を考慮した物価指数の作成について
    1. 25ページ
      1.Input Cost Index の問題点
    2. 25ページ
      2.Input Productivity Index の算出方法
    3. 27ページ
      3.Input Cost Index と Input Productivity Index の計算の結果比較
  4. 29ページ
    III.第2節 Output Price Index との比較による両指数の妥当性の検討
    1. 29ページ
      1.Output Price Index の推計
    2. 31ページ
      2.Output Price Index と Input Productivity Index の比較
  5. 33ページ
    IV.第3節 資本ストック推計に関するデフレーターの影響
    1. 33ページ
      1.資本ストックの推計
    2. 36ページ
      2.建設デフレーターの資本ストックに与えるバイアス
  6. 36ページ
    V.むすび
  7. 37ページ
    VI.参考文献
  8. 38ページ
    VII.付属資料
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  • 電話 03-5253-2111(代表)