経済分析第33号
日本の産業別価格形成 他

1971年3月
<分析>
<産業組織・物価ユニット>
新飯田 宏,照井 清司,前原 金一
<資料>
市川 洋,仙石 隆史

<分析> 日本の産業別価格形成(注)

(はじめに)

各市場における価格がどのようなメカニズムによって形成されるかを実証的なベースで分析し、日本の産業の価格・費用構造を明らかにしようというのが、我々のプロジェクトの統一研究テーマであり、これはその第一のプログレス・レポートにあたる。

もちろん、このようなテーマと取り組むにいたった主要な目的は、今回の物価問題と無関係ではない。物価上昇の問題は既にいろいろな角度から論じられ、事実、物価上昇の原因・評価・対策についても、いくつかの説明がなされている。しかし、これらの議論の多くが、非常に単純なマクロベースだけの議論に終始しているか、またはマクロベースの議論に終始しているかは問わないにしても、いずれも、物価を構成する個々の産業ないし商品市場の価格形成を十分検討していないために、一体総需要をある水準に抑えれば、どれだけの効果がどういう形で表われるのか、また賃金率をある水準に抑えることがどれだけ物価上昇を抑えるのに有効なのかが、明確にされないまま論じられている。物価対策を中心とした論議が、多くの場合核心にいたらないまま、不十分な状態に終わる主要な理由はこの点にあるであろう。かかる考え方に立って価格形成の問題を理論的に説明し、かつ実証的な裏づけを与えたいというのが、この研究の一つの意図である。

いま一つの意図は価格形成の問題が、産業組織的なアプローチと最も直接的に結びつく問題なので、産業組織論の成果を価格形成の問題に適用することである。あるいはまだ逆に、ここでの格形成問題の成果から産業組織論的問題への逆の適用を考え、相互の有機的な結合を意図した。具体的には市場の価格形成の推定を行なう上で、制度的に固定されている価格や変動の幅が限られているものを明確にした上で、もしも産業集中度や市場占有率の市場間の差異が、一体価格形成にいかなる差異をもたらしているか、また推定された価格形成が価格の下方硬直性を検出しうるかどうかなどを観察することである。これらの問題は理論的に興味あるのみならず、先の物価問題の1つの重要な論点であり、十分挑戦に値する問題であると考えられる。

このような問題意識のもとに、第一次作業として価格方程式の回帰分析とレオティエフ型産業関連モデルの結合によるアプローチをとることにした。したがって、簡単にいえば、われわれのモデルは回帰分析によって価格方程式が推定されるグループと、産業関連モデルよって価格が決定されるグループと、最後に政府によって政策的に管理されているグループとの3つのグループから成り立っている。第II節以下に示される結果は、われわれのこの作業の中間報告である。

なお、この作業の倫理的な前提は、インフレーション・プロセスが、競争的市場と非競争的(寡占的)市場という異質の市場を関連した価格形成プロセスとして把握できることを示した論文〔5〕に基づいている。

本論に入る前に、全体の構成について簡単に触れておこう。まず次のII節では製造業を中心とした価格方程式の推定を時系列分析によって行なう上でのモデルを、部分均衡モデルによって検討する。そこでは競争的需給均衡モデルと、寡占型部分的調整モデルとの結合による価格方程式が導かれる。第III節では、上記回帰方程式モデルの推定に必要な産業分類の基準、資料の性質がまず検討され(A)、次に14業種の製造業について実証分析の結果が検討される(B)。その段階で各産業の価格形成が単純な競走型か、寡占型か、ないし双方の性格を具えたものかの単純な検討が産業に別になされる(C)。同時に価格変動分を説明する方程式の結果もtentativeに示される。最後に産業組織論的問題への一つの計量分析からの応用として下方硬直性の検討が簡単になされる。第IV節では、データ、および制度的に回帰分析を適用できなかった産業につて、レオティエフ型モデルが適用される。このモデルは一階の定差方程式体系で示され、回帰分析による価格形成部門のグループと結合して一つのcomplete modelが示される。このモデルについての比較静学分析を適用した結果がここで簡単に示される。最後のV節では結びに代えて、以下に取残された問題と今後の課題が述べられる。なお付表として回帰方程式の推定に使用したワートン・スクール稼働率指数と通産省指数との対比がなされる。


(注)本研究の計画、進行に関し慶応大学西川俊作氏(商学部助教授)ならびに手柴正気氏(同大学院学生)から多大の御協力を戴いた。ここに感謝の意を表したい。

〔5〕Hiroshi Niida, "The Inter-Relation of the Market and Price Change", Discussion Paper No.9,EPA ,1970


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 617 KB)
  2. 1ページ
    I はじめに
  3. 2ページ
    II 価格方程式
  4. 4ページ
    III 実証テスト
    1. 4ページ
      A 変数の説明
    2. 6ページ
      B 推定結果の概要
    3. 9ページ
      C 産業別の検討
    4. 16ページ
      D 下方硬直性の検定
  5. 24ページ
    1. 24ページ
      A 資料の説明
    2. 25ページ
      B 比較静学分析
  6. 27ページ
    V 結びに代えて
    1. 29ページ
      付録 ワートン・スクール対通産省稼働率比較

<資料> 租税関係統計資料

(改訂追補)

当経済研究所「財政制度モデルの研究(研究シリーズ第19号)」および「租税関係統計資料(経済分析第29号)」において、租税関係の分析研究に必要な基礎資料を掲載したが、その後において公表された資料および昭和46年度租税改正要網を使用して追加、改訂を行い、更に間接国税率指数基礎データ、および租税統計の各税目別データの算出方法についての解説(参考資料)をも併せて掲載する。

なお、データの中には過去にさかのぼって改訂してものもあり、使用にあたってはこの点に留意されたい。


資料の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 447 KB)
  2. 37ページ
    1 租税関数データ
  3. 48ページ
    2 租税収納統計
  4. 84ページ
    3 統計の作成方法
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