経済分析第35号
昭和40年56部門資本係数行列の推計と均衡成長経路の試算 他

  • <分析1>昭和40年56部門資本係数行列の推計と均衡成長経路の試算
  • <分析2>ターンパイク・モデルと産業連関モデル
  • <分析3>QE法による国民所得の分配の推定について
1971年12月
<分析1>
<経済研究所産業構造分析ユニット>
筑井 甚吉,高島 忠,日水 俊夫,中村 良邦
<分析2>
<経済研究所産業構造分析ユニット>
筑井 甚吉,高島 忠,日水 俊夫,中村 良邦
<分析3>
丸山 昭,川西 三郎,大杉 武,加藤 公輝,宇高 昇,手塚 真一

<分析1> 昭和40年56部門資本係数行列の推計と均衡成長経路の試算

(はじめに)

多部門成長理論による産業構造分析を担当する当ユニットでは、先に、経済分析30号(昭和45年7月)において、ターンパイク・モデルにより「日本経済の最適成長径路」の分析を試みた(注1)。そこではまず、「部門成長理論の意味と応用」として、多部門成長理論の発展経緯、実際的応用の意味、そして現在の位置付けが概略論じられた。次いで支出性向ないし資本係数を変化させた場合のノイマン径路(有効均衡成長率、部門産出比率)への影響度が単純ターンパイク・シミュレーションによって把握された。上記の準備的考察の後、本格的なL・Pモデルを解くことにより最適成長径路の導出が試みえられた。すなわち、1)最終時点の資本蓄積極大を目的関数とする「資本蓄積ターンパイク」、2)計画全期間にわたる消費総額最大を目的関数とする「消費ターンパイク」、の導出であるが、そこでは労働・資本の技術代替の導入や、消費ターンパイクにおける割引率を変化させるシミュレーション等々興味ある実質的理論が展開された。さらに多部門成長モデルにおける非線型化(具体的には消費関数を屈折させた)への試みに第一歩が印された。

当ユニットにおけるターンパイク・モデルの開発を中心とする多部門成長分析の骨格は上記論文に明らかであるが、現在、モデルの実用化を指向して、諸種の観点からその一般的定式化をさぐるとともに、昭和40年基準データに基づく計数作業を進めている。

現在進められている作業の一貫として、今回の論文のねらいは、第1に56部門に細分された詳細な「資本係数行列」を公表することにある。云うまでもなく、従来この種の動学的産業連関分析におけるデータ面での最大の制約は、適切な資本行列が得られないところにあった。経済企画庁経済研究所では昭和45年度事業の一環として経済企画協会にその開発を委託し、このほど利用できる状態として一応の完成をみたので、その広範な利用を期し、ここに公表することとした。データの開発に御尽力をいただいた、今井賢一、小野塚芳雄、木下宗七、鈴木康、西部邁、村上秦亮の諸氏にはこの紙上を借りて謝意を表したい。本論文の第2のねらいは、56部門の資本係数行列が利用可能となったことから、これを用いで従来の行ない得なかった大部門数の演算を試みることである。まず第1に、動学的投入産出体系のノイマン均衡成長径路(ターンパイク)に対する相対的不安定性の問題に関するものであるが、この性質は、日本だけでなく米国等も含めて過去に多くの計算例によって例外なく認められてきた。しかしながらこれらの計算はすべて20部門以下の小部門数のモデルによるものであり、大部門数のモデルに関して同様の不安定性が成立するか否かは疑問とされる点があった。今回の56部門モデルによる計算から、このような大部門数のモデルにおいても動学的投入産出体系は相対的に完全に不安定であること-ノイマン成長係数を除く全ての(55個の)均衡成長係数の絶対値がノイマン成長係数より大きいこと-が確認された。この結果は、相対的不安定性問題に対するインサイトの追加として、過去にえられた結果の有力な補強材料となろう。さらに、資本係数行列の信頼性をチェックする参考として今回は、56部門によるノイマン径路(資本蓄積ターンパイク)の導出、及び労働制約にもとに均衡成長を仮定した場合の消費数準を最大化する56部門別産出比率(消費ターンパイクの導出、Small L.P)を求めることとした。しかしながら電子計算機の容量の関係から均衡成長という仮定をはずした本格的L.P(Large L.P),すなわち最適成長径路の導出は行ない得なかった。


(注1) 村上泰亮、時子山和彦、西藤沖、時子山ひろみ、日水俊夫、諸氏の分析研究による。


全文の構成

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  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 2ページ
    2.有効均衡成長径路の算出
    1. 2ページ
      2-1 モデルの定式化とその意味
    2. 3ページ
      2-2 有効均衡成長径路の試算結果
  4. 5ページ
    3.消費ターンパイクの試算
    1. 5ページ
      3-1 試算にあたって
    2. 7ページ
      3-2 消費ターンパイクの試算結果
  5. 9ページ
    4.資本係数行列の開発について
    1. 9ページ
      4-1 資本係数行列作成手法の概略
    2. 10ページ
      4-2 建設仮勘定を含めた資本ストック行列(データ)
  6. 14ページ
    5.付表
    1. 14ページ
      (1) ベクトルデータ
    2. 16ページ
      (2) Input-Output Matrix
    3. 22ページ
      (3) Capital Matrix
  7. 28ページ
    (参考)資本係数行列の修正について

<分析2> ターンパイク・モデルと産業連関モデル

(概要)

当ユニットにおいて理論的開発を進めているターンパイク・モデルはいわゆる、決定型ないし計画型の範中に属するモデルであり、実用の段階では、経済計画等の作成に資することとなろう。

本稿では、現在、経済計画作成の上で実際に用いられている「マクロ・モデル-産業連関モデル」体系と、ターンパイク・モデルとの付き合せを行なうことにより、ターンパイク・モデル実用化への一考察を得ようと思う。なお、両モデル体系の性格上の相違がまず問題になるわけであるが、この点については、すでに「経済分析30号第1章-多部門成長理論の意味と応用について」で記述されたところであるので参照されたい。

さて、我々は付き合せの対象となる産業連関モデルの試算例として、経済審議会計量委員会第3次報告(昭和45年9月)に掲載されているSimulation case B’(case B’はマクロ・モデルの時系列的変動を除脚し、世界貿易の伸びが比較的高く、かつ、民間設備投資の伸びが公共投資のそれを上回っており、実質GNPの伸びが平均11.4%となるケースである)を用いることとしたが、特にcase B’る選択した意図があるわけではない。

付き合せにあたっては、ターンパイク・モデルの諸係数をできるだけCase B’の諸数値に合せる必要があるわけだが、ここでは主として、

  • 1) ターンパイク・モデルの消費関数(我々の消費関数には、輸出および競争輸入が含まれている)を推定するためのデータをcase B’の内外挿時系列数値から作成して用いる。
  • 2) 産業連関モデルの資本係数はモデルの内生変数から決定されるが、ターンパイク・モデルでは、資本係数行列として所与のものである。従って、case B’の外挿結果から得られる部門別資本係数を40年資本係数の列構成比に基づいて行列化して与える。

こととした。特に1)の消費関数については、産業連関モデルに与えられる部門別消費が非線型となっているために、今回のターンパイク・モデルではこれを2つの部分に分割し、部分線型型式で近似させnon-linear programingの解を求めることとした。

以上、1)および2)のデータを用いることにより、貯蓄率、資本係数がほぼ同様の値として両モデルに関与していることになる。そこで、もし両モデルで用いられるデータが完全に同一であるならば両モデルから算出される生産レベルの相違は、一方が過去の経済活動の延長上での予測値であるのに対し、他方は計画最終期の資本蓄積の最大化を目的とした最適成長径路上の数値である。というモデルの性格に由来するものと考えられる。しかしながら、今回の試算においては、両モデルの結果の相違をすべてモデルの性格に帰することはできない。その理由の主要点は、産業連関モデルのcase B’は35年産業連関表をベースとしており、他方、今回のターンパイク・モデルは40年産業連関表、40年資本係数行列をベースにしている点である。従って、両者の間には、相対価格の相違、生産技術構造の相違が内存していることになる。従って、両モデルの厳密な意味での比較は40年基準の産業連関モデルの作業を待たねばならない。

今回の試算はcase B’の算出結果を35年-40年インフレーターを用いて事後的に40年価格体系に変換した上での付き合せであって、不完全なものであるとの評判はまぬがれえず、付き合せ結果からして、両モデルの当否を簡単に論ずることはできない。始めにも記したように、今回の試算は、実用性という実績をもつ産業連関モデルに対応させて、ターンパイク・モデル実用化の可能性の程度を知るための一つの試みであることを明記しておく。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 427 KB)
  2. 41ページ
    1.概要
  3. 42ページ
    2.Non-linear Turnpike Model 011Aの構造
  4. 44ページ
    3.Turnpike Model 011Aの結果概要
  5. 51ページ
    4.非線型ターンパイクモデル011Aのデータ

<分析3> QE法による国民所得の分配の推定について

(はしがき)

当研究所においては、国民所得統計の速報性強化を求める各界の要請に答えるため、さきに、支出面についていわゆるQE法(Quick Estimation Method)を開発した。以後、約4年に渡って四半期別試算値の発表を続けると同時に、手法の改良および検定を行なってきたが、この手法は、ほぼ確立したものと考えられる。そこで分配所得をも同時に算出し、両者の斉合性について検討することにより、推計の精度をさらに向上させ、信頼性を高めるため、新たに、同一手法による分配所得の算出式を開発した。

分配所得のQE法を開発するにあたって、支出面の場合と同様な基本方針がとられたが、その内容は、

  • (1) 当該四半期終了後2か月以内に算出が可能であること。
  • (2) 原則として、国民所得統計「主要系列表2.国民所得の分配」程度の表章ができるようにすること。
  • (3) 少ない情報を用いて高い精度を得るため、積上げ計算に代えて、回帰式によって算出すること。
  • (4) 説明変数は、分配所得の各項目について早期に入手しうる延長指標を用い、算出には行動方程式を含めないこと。

である。また、開発のスピードアップをはかるため、国民所得部との共同作業体制をとった。

なお、分配所得の構成項目のうち、「政府の事業所得および財産所得」については、従来から算用されている積上げ方式がそのまま適用できるので、QE法による算式の開発は行なっていない。

ところで、分配・支出の推計値の精度を高めるためには、国民所得統計の「基本勘定I・国民総生産と総支出勘定」を作成できるようにすることが望ましい。この勘定を作成するためには、さらに、「資本減耗引当」、「間接税」、「経済補助金」の計数が必要であるが、「間接税」、「経済補助金」については、積み上げ方式による推計が適用できるので、本稿では、「資本減耗引当」の算式を参考として掲げてある。

なお、算出の手法については、従来から行なっている支出面の手法と同じなので、以下では個々の算式についてのみふれることとする。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 445 KB)
  2. 61ページ
    I.はしがき
  3. 61ページ
    II.各統計式について
  4. 64ページ
    III.推定式および国民所得統計との比較表
  5. 85ページ
    IV.(参考)推計方法と資料の対比表
  6. 100ページ
    V.結びに代えて
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