経済分析第44号
規模別賃金変動要因の計量分析
-学卒初任給,個別賃金,平均賃金における規模別賃金変動要因と賃金変動の相互関係について-

1973年6月
<経済研究所雇用・賃金ユニット>
古賀 誠,藤間 淑夫

(はじめに)

昭和30年以降のわが国賃金変動については、マクロの分析からは、労働需給関係ではほぼ説明しつくされるとする見方が多いようである。

しかし規模別の段階や、個別賃金段階などのミクロの分析においてみると、労働力不足の賃金上昇に与える影響が大きいと目されている中小企業賃金変動のほうが、大企業賃金よりも労働需給指標との相関が低く、また完全競争市場に近いとされている新規学卒者の初任給変動も労働需給だけからでは説明できないという矛盾した関係がみられる。これらの問題については、(1)わが国の規模間、年令間などの賃金に大幅な格差があったためであるとか、(2)規模別などの労働需給関係の違いで説明できるとする解釈などの論争があるが、前者の賃金格差の問題は、賃金条件で劣る分野への労働力供給の減少など労働需給関係に包含されるべき問題であり、他方後者については、資料的に必ずしも実証されていないのみならず、これまで新規学卒初任給変動が学卒労働需給によって十分に説明されていないという実態からしてなお疑問が残る。

われわれは、必要な統計資料を作成整備してこれらの疑問の解明を試みることとした。

規模別賃金や、学卒初任給を含む個別賃金問題は同時にわが国賃金、雇用制度と、賃金および労働市場構造の特徴を抜きにして取り扱うことのできない分野でもある。われわれは、これらの点についても、わが国の実情に即した分析になるように留意した。

分析は、学卒初任給変動、在籍者個別賃金変動(個別賃金の平均的変動率を示すものとしての純ベースアップ率)、および平均賃金変動のそれぞれを対象とし、その規模別の変動要因と、各種賃金変動の相互関係を明らかにすることに主力をおいた。

なお、分析の基礎となる各種資料については、既存の資料をなるべく広範に検討、吟味して選別するとともに、各種資料の組み合せや、統計調査原票を再集計して新たに作成したものを多く使用している。

その主要なものについては、付論編にまとめて掲載している。


全文の構成

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  1. 第1部 本論編
  2. 1ページ
    はじめに
  3. 1ページ
    1.分析結果の概要
  4. 5ページ
    2.わが国労働市場および賃金制度の特徴と分析の視点
    1. 5ページ
      2-1 わが国労働市場構造の特徴
      1. 5ページ
        2-1-1 労働市場構造の特徴
      2. 7ページ
        2-1-2 労働市場統計の種類と性格
        1. 7ページ
          (1) 労働市場構造と労働市場統計
        2. 8ページ
          (2) 一般労働市場統計の性格と問題点
        3. 9ページ
          (3) 新規学卒労働市場統計の性格と問題点
      3. 11ページ
        2-2 わが国賃金制度の特徴と各種賃金統計の性格
        1. 11ページ
          2-2-1 労働市場構造と賃金統計
        2. 11ページ
          2-2-2 年功賃金制度と賃金水準統計、個別賃金統計
  5. 13ページ
    3.新規学卒者初任給の規模別変動要因の分析
    1. 13ページ
      3-1 新規学卒者初任給規模別賃金調整関数の計測 -その1、労働需給指標による回帰-
      1. 13ページ
        3-1-1 労働需給指標との相関
      2. 17ページ
        3-1-2 水増し求人効果または期待効果を加味したモデルによる回帰
        1. 17ページ
          (1) 水増し求人除去モデル
        2. 17ページ
          (2) 水増し効果ないし期待効果を加味したモデル型
        3. 18ページ
          (3) 計測結果の検討
        4. 19ページ
          (4) 労働需給ギャップ率の変化率(V, U)の意味する内容について
      3. 20ページ
        3-1-3 新規学卒就職者の質の変化を加えた回帰
        1. 21ページ
          (1) モデル型
        2. 21ページ
          (2) 計測結果の検討
    2. 21ページ
      3-2 新規学卒初任給の規模別賃金調整関数の計測 -その2-
      1. 21ページ
        (1) 追加する変数
      2. 21ページ
        (2)モデル型
      3. 24ページ
        (3)計測結果の検討
    3. 26ページ
      3-3 規模別初任給変動要因についてのとりまとめ
      1. 26ページ
        (1) 変動要因とその寄与率
      2. 28ページ
        (2) 説明変数として利潤率の意味
  6. 32ページ
    1. 32ページ
      4-1 個別賃金変動と平均賃金変動の違い
    2. 36ページ
      4-2 春季ベースアップ率の変動要因分析
      1. 36ページ
        4-2-1 春季ベースアップ率と個別賃金変動の関係
      2. 38ページ
        4-2-2 春季ベースアップ率と労働需給ギャップ率との相関
      3. 42ページ
        4-2-3 春季ベースアップ率の変動要因
        1. 42ページ
          (1) 主要民間企業春季ベースアップ率の変動要因
          1. 42ページ
             1) 回帰モデルによる要因の計測
          2. 43ページ
             2) 交渉力要因について -学卒初任給変動要因分析結果との対比において-
        2. 46ページ
          (2) 中小企業春季ベースアップ率の変動要因
    3. 46ページ
      4-3 平均賃金の規模別変動要因の分析
      1. 46ページ
        4-3-1 平均賃金変動に及ぼす個別賃金変動と雇用構成変化効果の影響
        1. 46ページ
          (1) 大企業所定内平均賃金の変動及ぼすベースアップの影響と雇用構成の変化
          1. 46ページ
             1) 大企業所定内平均賃金変動率とベースアップ率の比較
          2. 46ページ
             2) 大企業所定内平均賃金変動に及ぼす個別賃金変動と雇用構成変化効果の影響度の計測
        2. 49ページ
          (2) 中企業所定内平均賃金変動に及ぼす個別賃金変動と雇用構成変化効果の影響
        3. 52ページ
          (3) 小企業所定内平均賃金変動における個別賃金変動と雇用構成変化効果
          1. 52ページ
             1) 小企業所定内平均賃金変動と新規学卒者初任給変動の比較
          2. 53ページ
             2) 小企業所定内平均賃金変動率の学卒者初任給変動率と雇用構成変化効果による回帰
          3. 57ページ
             3) 小企業所定内平均賃金変動要因の直接回帰による計測
  7. 57ページ
    結び別ウィンドウで開きます。(PDF形式 596 KB)
  8. 74ページ
    基礎資料
  1. 第2部 付論編
  2. 91ページ
    付論I.高卒労働市場における「制度的水増し求人」の除去とこれに基く、中学、高校卒労働需給指標の総合化について
  3. 98ページ
    付論II.学卒労働市場における「思惑的水増し求人」の可能性とその検討
  4. 109ページ
    付論III.学卒および一般労働市場における規模別労働需給指標の作成方法について
  5. 117ページ
    付論IV.学卒および一般(学卒を除きパートを含む)労働需給指標の総合化の方法について
  6. 121ページ
  7. 付論VI.学卒初任給における調査月変更が調査結果に及ぼす影響とその修正方法について
  8. 134ページ
    -調査月変更ダミーによる系列の接続と修正-
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