経済分析第47号
労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果 他

  • <分析1>労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果
  • <分析2>レジャー消費とレジャー活動の計量分析
1974年7月
<経済研究所 雇用・賃金ユニット>
古賀 誠,藤間 淑夫,舩津 鴻太

<分析1> 労働時間の決定要因と時間短縮が生産に及ぼす効果

(まえがき)

実質所得の上昇に伴って、わが国でも週休2日制や夏休み制度など余暇増加が現実の問題としてクローズ・アップされている。わが国では余暇の少なさと、生活のあわただしさがしばしば指摘されている。レジャーの過し方そのものも忙がしい。しかし、レジャーはただ増えれば良いと言うものでもない。人々は常に労働よりもレジャーを好むとは限らない。高齢者その他就業面でのハンディキャップ層に仕事が与えられないことによって強制されるレジャーは、かりに生活の最低水準が保障されたとしても、楽しみよりは苦痛を与える場合があるし、また、その他の人々にとっても、過ぎたレジャー時間は、時間を楽しむよりは、オーエン(J.D.OWen注)後出)が述べているように時間をツブスことに苦しむことになろう。ここでは、レジャーの限度以上の増加は、人々にマイナスの効用を与えるものに外ならない。

その意味でも、週休、休日、休暇、時間等のレジャーに関連する施策のあり方は、人々の自発的選好をよく反映するものでなければならない。反面、時間制度は企業の需要としての側面がきわめて大きな要素を占めていること、また、それが生産に響く問題であることも忘れることはできない。

いわゆる余暇時間は労働時間その他の生産時間を除いた残りの時間であるが、これらの生活時間に関する資料が十分でない現状では勤労者の労働時間面から接近するのが手っ取り早い方法である。

このような労働時間面からの分析としては、アメリカでは1930年代のダグラスの先駆的研究をはじめ、主としてクロス・セクション・データーによる所得=余暇選好の面から分析が加えられているものが多い。わが国でも、国際比較、産業別よるクロス・セクションでの比較などの形で部分的にとりあげたものがあるが、なお計測例にとぼしく、また、時系列データーによる分析や、企業側からの労働需要の側面からの分析はほとんど行なわれている例がない。

われわれは、ダグラスから、フィネンガン、フライシャーに至る所得=余暇選好に関する研究と、その後のベッカーおよびオーエンの理論ならびに実証的研究を参考として、わが国の労働時間決定要因を供給側および需要側の両面から検討し、さらに今後の労働時間短縮、なかんずく、週休2日制等の普及による労働日数の減少が生産面に及ぼす影響を計測してみることとした。

この論文は、三つの部分に別けられる。
 第一章では、供給側からの所得=余暇選好の分析を、クロス・セクション、タイム・シリーズの両面からのデーターを用いて行なっている。
 第二章では、労働時間、労働日数の短縮が労働生産性に及ぼす影響を生産関数を用いて計測している。
 第三章では、使用者側からの労働時間ベースでの労働需要関数の推計を行ない、これに第一章でとりあげた労働者側からの供給関数を加えた労働需給連立モデルを作成して推計を行なっている。

なお、この小論の最終的取りまとめに当っては

  • 慶応大学経済学部
    小尾 恵一郎教授
  • 慶応大学商学部
    西川 俊作教授
  • 佐野 陽子教授

からの有益な御批判を載いて修正が加えられている。コメントをお寄せ戴いた上記先生に厚く御礼申し上げたい。


全文の構成

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  2. 1ページ
    まえがき
  3. 4ページ
    第一章 労働(時間)供給関数の推計
    1. 4ページ
      1.レジャー時間需要に関する仮説
    2. 6ページ
      2.クロスセクションデーターによる労働供給関数の推計
      1. 7ページ
        (1)製造業中分類データーによる分析
        1. 7ページ
          1)変数の種類
        2. 7ページ
          2)回帰計測結果
      2. 11ページ
        (2)製造業都道府県別データーによる分析
        1. 11ページ
          1)変数の種類
        2. 11ページ
          2)回帰計測結果
      3. 16ページ
        (3)他の回帰計測結果との比較
        1. 16ページ
          1)わが国での計測結果との比較
        2. 16ページ
          2)アメリカにおける計量分析結果との比較
          1. 17ページ
             (イ) 産業別によるクロス・セクション分析
          2. 17ページ
             (ロ) 地域別によるクロス・セクション分析
          3. 17ページ
             (ハ) 職種別によるクロス・セクション分析
          4. 18ページ
             (ニ) 収入階級別によるクロス・セクション分析
          5. 18ページ
             (ホ) 国別データによるによるクロス・セクション分析
    3. 18ページ
      3.タイム・シリーズ・データーによる所得=余暇選好の分析
      1. 18ページ
        (1)時系列分析上の仮説と時系列モデル
      2. 19ページ
        (2)変数の種類
      3. 20ページ
        (3)労働時間の回帰式と計測結果
        1. 21ページ
          1)賃金率及および労働者厚生に関する変数による回帰
          1. 21ページ
             (イ) 総実労働時間
          2. 22ページ
             (ロ) 所定内労働時間
        2. 22ページ
          2)教育および消費時間の生産性の効果
          1. 22ページ
             (イ) 総実労働時間
          2. 24ページ
             (ロ) 所定内労働時間
          3. 24ページ
             (ハ) 教育年数の意味する内容
        3. 25ページ
          3)レクリエーション相対価格の効果
          1. 25ページ
             (イ) 総実労働時間
          2. 26ページ
             (ロ) 所定内労働時間
        4. 26ページ
          4)通勤時間COTの効果
        5. 27ページ
          5)アメリカにおける時系列分析との比較
          1. 35ページ
            参考資料-1
          2. 36ページ
            参考資料-2
  4. 40ページ
    1. 40ページ
      1.労働時間に関する収穫逓減
    2. 41ページ
      2.時短と労働生産性に関するモデル
      1. 41ページ
        (1)辻村モデルの内容
      2. 41ページ
        (2)労働日数および1日当り所定内労働時間を用いたモデル
    3. 43ページ
      3.回帰計測結果
  5. 47ページ
    第三章 労働時間の需給連立モデル
    1. 47ページ
      1.労働需給連立モデルの内容
      1. 47ページ
        (1)オーエンの完全雇用期についてのモデル
      2. 48ページ
        (2)労働需給連立モデル
    2. 49ページ
      2.回帰計測結果

<分析2> レジャー消費とレジャー活動の計量分析

(まえがき)

さきに、われわれが行った労働時間の分析結果によると、労働時間は、実質賃金の1%の上昇によって、0.2%前後減少する1)、このような労働時間の短縮に伴う余暇時間の増加、なかでも週休2日制や夏季休暇制度の急速な普及が生み出す時間的にまとまった余暇時間の増加は、今後の消費生活やレジャー活動などの面に大きな影響を及ぼさずにはおかないであろう。

この小論は家計支出面から、いわゆる商業的レジャーを推計しその決定要因の分析を試みたものである。

「1」では分析の対象とするレジャーの範囲を規定し、「2」では、昭和30~47年の各年について、レジャー時間(処分自由な時間)、レジャー消費(商業的レクリエーション支出および観光行楽レクリエーション支出)およびレジャー関連物価指数の推計を行なっている。

「3」では、以上のデーターを基礎にして、レジャー消費についての需要関数の計測を試みた。

「4」では時間と財およびサービスの投入によって創出される「レジャー活動」の指標として、レジャー活動指数の算出を試み、その需要関数の計測とレジャー活動におけるレジャー時間と市場レクリエーションとの代替の弾力性の計測を行なっている。

この分析はJ.Dオーエン2)およびG.Sベッカー3)の論文を主として参考にしているが、とりまとめに当っては、慶応大学経済学部小尾恵一郎教授、同商学部佐野陽子教授、同西川俊作教授からの貴重なコメントを戴き、若干の修正を加えた。記して厚く感謝の意を表したい。


1.「経済分析」第47号「労働時間の決定要因と労働時間短縮が生産に及ぼす効果」参照

2.J.D.Owen "The Price of Leisure" Universitaire Pers Rotterdan 1969(斉藤精一郎訳「レジャーの経済学」日本経済新聞社昭和46年)

3.G.S.Becker "A Theory of the allocation of time" The Economic Journal L25(September,1965)
G.S.Becker "On the Economics of Time": The Econometric Society Boston Mass December 29.1963


全文の構成

  1. 67ページ
    全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 585 KB)
  2. 67ページ
    まえがき
  3. 67ページ
    1.レジャーの範囲
  4. 69ページ
    2.レジャー時間とレジャー消費の集計
    1. 69ページ
      (1)レジャー時間の算出
      1. 69ページ
        1)年平均月間総実労働時間
      2. 69ページ
        2)通勤時間
      3. 70ページ
        3)生理的基礎生活時間および家事時間
      4. 71ページ
        4)レジャー時間(LT)とレジャー日数(LD
    2. 71ページ
      (2)レジャー消費支出と価格指数の集計
      1. 71ページ
        1)商業的レクリエーション支出(ER
      2. 72ページ
        2)商業的レクリエーション物価指数(P(R)
    3. 73ページ
      (3)観光行楽レクリエーション支出と価格物価指数の集計
      1. 73ページ
        1)観光、行楽レクリエーション支出(EST
      2. 75ページ
        2)観光、行楽レクリエーション物価指数(P(ST)
  5. 75ページ
    3.市場レクリエーション需要の推計
    1. 75ページ
      (1)分析に用いる変数
      1. 75ページ
        1)被説明変数
      2. 75ページ
        2)説明変数等
    2. 76ページ
      (2)回帰結果
      1. 76ページ
        1)商業的レクリエーション需要の推計
      2. 76ページ
        2)観光、行楽レクリエーション需要の推計
  6. 79ページ
    4.レジャー活動需要の分析
    1. 79ページ
      (1)行動モデルとレジャー活動
      1. 79ページ
        1)レジャー時間の実質評価の方法の違いによるケース
      2. 79ページ
        2)世帯単位と労働者単位によるケース
    2. 80ページ
      (2)レジャー活動指数の比較
    3. 82ページ
      (3)レジャー活動需要関数の計測
      1. 82ページ
        1)CaseIのレジャー活動指数について
      2. 85ページ
        2)CaseIIのレジャー活動指数について
    4. 85ページ
      (4)レジャー(時間)と市場レクリエーションの代替弾力性
  7. 86ページ
    むすび
  8. 87ページ
    基礎資料および参考資料
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)