経済分析第50号
行政府のための社会指標
-PPBSの再検討-

1974年8月
<経済研究所システム分析調査室>
公文 俊平,小野 宏逸,平田 文夫,村上 建吾

(はしがき)

PPBSの研究については、昭和44年度に大蔵省が科学的財務管理方法導入準備調査費を計上して以来、各省庁、大学の研究室、民間のシンク・タンク等でさまざまな事例研究が行われている。この研究は今までのPPBSの研究成果と反省の上にたって、PPBSを「社会システム・モデル」という考え方にたって再検討するとともに、社会システム・モデルを前提(社会システム・モデルそのものは、人間の自然と社会と人間についての知識が豊になればなる程、正確なモデルとなると期待される)にして、行政当局の供給する財貨・サーヴィスの量を測定する指標(行政活動指標)と、それによって生ずる社会状態の変化を測定し、行政当局の行動の指針とする指標(社会状態指標)を神奈川県藤沢市を事例として選定しようとするものである。

PPBSとは何かという問に対して、政府の供給する財貨・サーヴィスを合理的・効率的に提供するように行政活動を管理していくために開発されたシステムであるという考え方がある。このような考え方にたてば、政府は「公共財」(公共当局が供給する財という意味で用いる)生産のため設立された一つの経営体であって国民の行政当局に対するニーズを充足するため最大の効果をあげる事を目的とする合理的個別主体であるという見方をしている事になる。

こうして、企業活動における原価管理の考え方を財政活動にも適用しようという考え方が、ごく自然に生じてくる。しかし、このような考え方は本論で述べるように、限界があるように思える。PPBSを財政活動のマネジメントのためのシステムであると考えるよりは、社会のマネジメントのためのシステムであると考える方が、今後のPPBSの発展のためにはより有用であると思える。PPBSを社会のマネジメントのためのシステムであると考えるならその理論的帰結として、「社会システム・モデル」の作成が必要となろう。

行政活動が社会のマネジメント活動として有用であるためには、まず社会をある程度自立的に運動する一つのシステムであると考え、このような社会運動をできるだけ正確に認識するためのモデルが必要となろう。社会システム・モデルとは、社会の構造や挙動を説明するのに適した変量や要素を選びだし、それらの間の関係を与えるモデルと、定義していこう。

以上のように考えれば、PPBSの最終的目標は社会システム・モデルを前提にした社会の有効なマネジメントということになろう。システム分析は社会システム・モデルを意識して分析がすすめられるべきであり、従来の事例研究でみられたように行政活動の効果の測定にあたって、直接効果のみを考え、副次的効果を無視するとか、あるいは、分析者の立場で金額換算できるものだけを取り出し、強引に費用・効果を分析するということではなく、行政活動が社会にもたらす波紋を有効度ベクトルとしてできるだけ広い範囲にとり、意識決定者に対してより多くのお起きの情報を提供すべきであるということになろう。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 685 KB)
  2. 1ページ
    はしがき
  3. 2ページ
    第1章 PPBSと社会システムモデル
    1. 2ページ
      第1節 社会システムモデル作成の必要性
    2. 4ページ
      第2節 社会システムモデルと社会指標
    3. 8ページ
      第3節 行政活動指標と社会状態指標
    4. 9ページ
      第4節 社会指標選定のフレーム・ワーク
  4. 10ページ
    第2章 藤沢市はどのような都市か
    1. 10ページ
      第1節 概況
    2. 12ページ
      第2節 行政に対する市民の欲求
    3. 19ページ
      第3節 藤沢市の行政活動
    4. 32ページ
  5. 37ページ
    第3章 藤沢市の行政活動指標
  6. 40ページ
    第4章 社会状態指標体系の選定
    1. 40ページ
      第1説 陳情・請願にもとづく社会状態変数の摘出
    2. 40ページ
      第2節 行政活動にもとづく社会状態変数の摘出
    3. 41ページ
      第3節 社会状態変数の統合
    4. 48ページ
      第3節 藤沢市の社会状態指標
  7. 60ページ
    あとがき
  8. 60ページ
    <参考文献>
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