経済分析第60号
短期経済予測パイロットモデル SP-17

1976年3月
馬場 正雄,小金 芳弘,降矢 憲一,馬場 孝一,栗林 世,今井 慶子,山本 力,長尾 久子,坂口 俊輔,藤井 正志,中城 吉郎,大守 隆

(はじめに)

「経済分析」第21号(昭和42年3月)にはじめて発表された短期経済予測パイロット・モデルは、その後、改定に改訂を重ね、「経済分析」付録第16号(昭和50年9月)には、昭和45年基準データにもとづいて、その再推定結果を発表するに到った。パイロット・モデルは、もともとその名の示すように来るべきヨリ大規模な短期予測余モデルへの先駆としての役割が期待されていた。その期待はみごとに実現して、「短期経済予測マスター・モデルの研究」経済企画庁経済研究所研究シリーズ第21号(昭和45年1月)として結実した。しかしながら、その後も時々刻々変化する経済情勢の下、ハンディな短期予測モデル利用への需要もあとを絶たず、したがって、小規模な構成をもつパイロット・モデルもそれなりのメリットがみとめられて今日まで存続してきたわけである。

今回、本誌上に発表するSP-17(Short-term Prediction Model-17)は、昭和50年9月にSP-16として発表した昭和45年基準によるモデルにさらに磨きをかけ、パラメーター推定期間を昭和35年度から昭和48年度までに統一したうえで、再構築したものである。

そして、モデルの再構築にとどまらず、モデル分析の常道に従って、内挿・外挿テストおよび乗数分析を行った。その結果の詳細は本文にゆずるが、内挿テストは昭和48年度までであり、外挿テストは昭和49年度についての1年間だけであることに、このさいとくに注意を喚起しておかねがならない。なぜならば、48年から49年にかけては過剰流動性、中東動乱に起因する石油ショック、狂乱物価、戦後はじめてゼロ成長等を含む激動期であったからである。いうまでもなく、モデルの構築は、過去の経験的データとそれら相互の間の自律的関係に依拠している。ところが、激動期は、モデルの依拠する過去の相互依存システムそのものが激変にさらされることになる。ここに、激動期おけるモデル予測の困難が伏在する。地震計は、あらゆるものが破滅の危機にひんするほどの激震に耐えてこそ、その機能が高く評価される。経済モデルもそのような耐震性をそなえた頑健なものであることが、もとより望ましい。

しかし、「経済基盤の変革」(高橋亀吉『私の実践経済学』昭和51年刊からの引用語句)の時期にも、現実的妥当性を失わないようなモデルは果たして構築できるものなのか。ともあれ、牛の歩みは遅くともつねに前進を志す気構えこそ大切であるとおもう。大方の御叱正を乞う次第である。

おわりに、今回はモデルを構築する主要ブロックを基本としたフロー・チャートを提示するとともに、モデル内で諸変数(内生変数)がどのような相互関係をもつかを表わした相互関連表(表の名称が適当かどうかについても教示を賜りたい)の作成をこころみたことを付言したい。モデルの全容を一望におさめる便となれば幸いである。


全文の構成

  1. 全文別ウィンドウで開きます。(PDF形式 463 KB)
  2. 1ページ
    I はじめに
  3. 2ページ
    II 総論
    1. 2ページ
      1 SP-17の特徴
    2. 3ページ
      2 これからの課題
  4. 4ページ
    III モデルの方程式体系
    1. 4ページ
      1 構造方程式
    2. 7ページ
      2 定義式
    3. 8ページ
      3 変数記号表
    4. 11ページ
      4 ブロックチャート
  5. 15ページ
    IV 個別方程式別ウィンドウで開きます。(PDF形式 664 KB)
    1. 15ページ
      1 国内最終需要
      1. 15ページ
        (I) 個人消費支出
      2. 15ページ
        (II) 民間住宅投資
      3. 16ページ
        (III) 民間設備投資
      4. 21ページ
        (IV) 民間在庫投資
    2. 22ページ
      2 貿易
      1. 22ページ
        (I) 商品輸出関数
      2. 25ページ
        (II) 商品輸入関数
      3. 26ページ
        (III) 商品外輸出関数
      4. 28ページ
        (IV) 運賃保険料を除く商品外輸入
    3. 29ページ
      3 生産
      1. 29ページ
        (I) 鉱工業生産指数
      2. 30ページ
        (II) 製造業稼働率指数
    4. 33ページ
      4 賃金・雇用
      1. 33ページ
        (I) 一人当り雇用者所得
      2. 36ページ
        (II) 雇用者関数
      3. 37ページ
        (III) 有効求人倍率関数
    5. 43ページ
      5 デフレーター別ウィンドウで開きます。(PDF形式 521 KB)
      1. 43ページ
        (I) 個人消費支出デフレーター
      2. 43ページ
        (II) 民間住宅投資デフレーター
      3. 44ページ
        (III) 民間設備投資デフレーター
      4. 44ページ
        (IV) 政府固定資本形成デフレーター
      5. 47ページ
        (V) 民間在庫デフレーター
      6. 48ページ
        (VI) 商品輸出デフレーター
    6. 49ページ
      6 分配所得
      1. 49ページ
        (I) 法人所得関数
      2. 51ページ
        (II) 法人税関数
      3. 53ページ
        (III) 個人配当
    7. 53ページ
      7 金融
      1. 53ページ
        (I) コール・レート
      2. 53ページ
        (II) 全国銀行約定平均金利
      3. 55ページ
        (III) 現金流通高増減
      4. 56ページ
        (IV) 産業資金供給増減
  6. 59ページ
    V 乗数分析
    1. 59ページ
      1 政策効果(短期乗数)
    2. 64ページ
      2 モデルのリニアリティテスト
    3. 65ページ
      3 モデルの整合性
    4. 68ページ
      4 モデルの動学的性格(長期乗数)
  7. 68ページ
    VI 内外挿テスト別ウィンドウで開きます。(PDF形式 391 KB)
    1. 68ページ
      1 全体テストおよび長期内挿テスト
    2. 73ページ
      2 短期内挿テスト(イニシャルテスト)
    3. 75ページ
      3 外挿テスト
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)