経済分析第98号
世界経済モデルによる政策シミュレーションの研究

  • <分析1>政策シミュレーションにおける世界経済及び各国経済の展望:1985-86
  • <分析2>世界経済モデルの考え方と構造
1985年3月
<分析1>
鶴岡 詳晃,小島 祥一,西田 卓馬,
平野 正宣,広瀬 晴子,広瀬 哲樹,
佐々木隆博,川崎 研一,増淵 勝彦,
石尾 勝,植田 哲史,松田 正弘,
三和 元純,矢萩 恵一
<分析2>
小島 祥一,西田 卓馬,平野 正宣,
広瀬 晴子,広瀬 哲樹,川崎 研一,
増淵 勝彦,石尾 勝,植田 哲史,
松田 正弘,三和 元純,大林 守

世界経済モデルによる政策シミュレーションの研究

経済研究所は昭和54年度に世界経済モデルの開発に着手し57年度に完成した。同年第1回世界経済モデルに関する国際シンポジウムを開催し、同モデルによる政策シミュレーションを行った。その後58年度にはデータの更新によるモデルの再推定を行い、その分析結果は本年3月の第2回国際シンポジウムにおいて、内外の学者および専門家から高い評価を得たところである。今回の作業は、この世界経済モデルを用いて、今後2カ年の世界経済における一定の政策課題について、学術的な見地から、計量的な政策シミュレーションを試みたものである。


全文の構成

  1. I  目次別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 15 KB)
  2. 1ページ
    I  世界経済モデルの概要別ウィンドウで開きます。(PDF形式 142 KB)
  3. 1ページ
    II 今回の作業の目的と主要な結論
    1. 5ページ
      付表
  4. 9ページ
    (補論)

<分析1> 政策シミュレーションにおける世界経済及び各国経済の展望:1985-86

(はじめに)

世界経済モデルによる政策シミュレーションの研究においては、モデルによって描き出される代替的な世界経済および各国経済の姿の現実妥当性をチェックするために、各国100内外、アメリカ、日本の大型国別モデルにおいては200内外の構造方程式により、支出項目、雇用、賃金、価格、分配、財政、金融、貿易、国際収支の各項目の整合性を四半期データにより詳細に検討している。このような個々のメカニズムを可能な限り現実に近いものとしてモデル化することにより、大きな経済の流れを適確にとれえることが出来ると考えられるからである。個々の構造方程式は誤差を含み、またデータおよび規模の制約からモデルと現実との乖離は避けられないものがあるが、これまでの世界経済モデルの分析の経験から、大きな経済の流れをとれえるための有用性はかなり高いといえる。本分析は、このような世界経済モデルによる政策シミュレーションの研究の背景となる世界経済と各国経済の、支出項目等の詳細にたちいった各論的展望を行ったものである。

なお、本分析は、本文の「世界経済モデルによる政策シミュレーションの研究」(59年11月)に関する作業に伴い、1984年9月までに公表されたデータを用いて行ったものであるが、同時にその後の世界経済の動向の一部をもとり入れたものとなっている。すなわち、石油市場に関しては、予想を上回る市況の軟化が生じたため、名目原油価格横ばいを前提としたケース(本分析単純外挿 I ケース)を主たる分析の対象とすることとした。また、協調政策においても、各国の金融政策は、通貨供給量の伸び率を目標範囲内に厳しく管理することが、より現実的であると判断されたため、本文のケースよりも、若干金融政策を抑制的にしたものを協調政策ケース(本分析協調政策ケース)の主たる分析の対象としている。これらの前提の若干の変更は、何ら本文の結論に重要な変更を生ずるものではない。なお、分析を明確にする目的から、日本の製品輸入所得弾性値上昇の効果を織り込むケースは区別して(本分析単純外挿IIIケース)述べている。本文と本分析におけるケースの対応関係は次のとおりである。


全文の構成

  1. 13ページ
    はじめに別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 189 KB)
  2. 14ページ
    I  代替的な経済政策とその世界経済に及ぼす影響
  3. 28ページ
    II 各国経済の動向別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 164 KB)
    1. 28ページ
      II-1 アメリカ
    2. 36ページ
      II-2 日  本
    3. 40ページ
      協調政策ケース別ウィンドウで開きます。(PDF形式 264 KB)
    4. 43ページ
      II-3 西ドイツ
    5. 51ページ
      II-4 イギリス
    6. 58ページ
      II-5 フランス別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 123 KB)
    7. 63ページ
      II-6 イタリア別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 220 KB)
    8. 71ページ
      II-7 カ ナ ダ
    9. 77ページ
      II-8 オーストラリア
    10. 81ページ
      II-9 韓  国

<分析2> 世界経済モデルの考え方と構造

(はじめに)

 わが国のマクロ経済政策の策定において、貿易と資本移動を通じたアメリカをはじめとする世界経済との相互依存関係を考慮に入れることは不可欠となっており、とくに変動相場制下において、その必要はますます高まっている。諸外国のとる経済政策は、このような相互依存のチャンネルを通じてわが国経済に大きな影響を及ぼし、同時にわが国のとる政策も諸外国に影響していくからである。

 世界経済モデルは、このような世界経済の相互依存のチャネルを、マクロ経済の観点から可能な限り計量的に把握・分析しようとするものである。この分野では多くの学説が提示されており、政策立案と学術的発展を結びつけるこのようなモデル・ビルディングは、経済研究として極めて重要であると考えられる。さらにその成果は、マクロ経済政策の策定においても、1つの新たなツールと情報を提供するものとなることが期待される。

 世界経済モデルは世界経済の短期のマクロ経済分析を主眼とすることから、四半期毎の財市場、労働市場、金融市場、外国為替市場における需要・供給およびそれらの内外を通じた相互作用を適確に把握したものである必要がある。このような観点から、(1)財市場においては、各支出項目への金利や資産効果等金融市場の影響、税制の影響、輸出入への為替レートの影響等が明示的に織り込まれている。(2)価格については、フル・コストおよびマーク・アップによる価格形成の径路、実質貨幣残高への需要を介して貨幣供給が影響を及ぼす径路、稼働率を通じて需給が影響を及ぼす径路を含んでいる。(3)労働市場においては、生産性、稼働率が雇用量に影響し、賃金率は、インフレ期待によりシフトするフィリップス曲線により失業率と結びつけている。(4)金融市場においては、中央銀行、市中銀行、非銀行民間部門のバランス・シートの各項目が各種金融資産への需要・供給をあらわしていると考え、金利はその均衡条件により定まると定式化されている。このような観点から中央銀行の対政府信用は公開市場操作により貨幣供給量をコントロールし、金利に影響を与える重要な政策変数となっている。同時に、公定歩合、ユーロ・ダラー金利との連動も織り込まれている。(5)外国為替市場においては、アメリカ以外の各国の経常取引および資本取引より生ずる外国為替の超過供給が公的介入需要とちょうど均衡するところで対ドル・レートが定まると定式化されている。外国資産の選択においては内外金利差および期待為替変動率が影響するため金融市場との相互作用が生じている。(6)世界貿易においては、各国の輸入需要を、貿易シェアにより各国の輸出に変換し、遂次計算により輸出入の世界計が等しくなるようにしている。このように各市場間、各国間の相互依存度は極めて高く、基本的には各国の各変数が同時決定されると考えてよい。本分析は、このような世界経済モデルの考え方と構造を、セクター別に、各国横断的に明らかにすることを目的としている。

(付記)

 具体的には、世界経済モデルは各国モデル1,020式、貿易モデル360式の計1,380本の方程式によって構成されている。このうち各国の行動方程式として推計されているものは410式である。このうち金融および国際収支が199式と半分を占めていることからも、この世界経済モデルの特徴が見てとれよう。式の国別・部門別構成および各国モデルと貿易モデルの関係を次頁に表示する。


表 世界経済モデル各国モデルの式数 表 世界経済モデル各国モデルの式数2

(凡例)

 以下の記述においては、できる限り実際の世界経済モデルの構造方程式と変数名を正確に述べるように努めているが、記述の簡明さのために省略したり、変更した点がある。そのうち主たるものは次のとおりである。

  1. 分布ラグについては係数の合計のみをΣの下に記すにとどめている(輸出入を除く)。
  2. ダミーはほとんど記述を省略している。
  3. 統計概念の相違を調整するブリッジ式等は記述を省略している。
  4. パーセント表示の変数はすべて少数にもどし、その分パラメータを100倍する等の操作を行っている。(例:I =0.5-0.002rr :パーセント表示の金利)の場合はI =0.5-0.2rr :少数表示)に変えてある。
    このような処理を行っている変数は、金利の他、失業率、稼働率、準備率、為替プレミアムがある。
  5. 基準年次を100とする変数はすべて基準年次を1とするものにもどし、その分パラメータを100倍する等の操作を行っている。このような処理を行っている変数は、デフレータ(ただし、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国の名モデルでは、もともと基準年次を1としている)および生産指数がある。
  6. 世界経済モデルでは、伸び率として、対第i 期前増減率GRi )、対前期増減率G 1(いづれも少数表示。例えば、2.5%増は0.025)、対前4四半期平均増減率GF (1+少数表示。例えば2.5%増は1.025)が混用され、さらに、対前期増減率の年率換算も用いられている。さらにΔlogx ≒(x -x -1)/x -1の関係も利用されている。以下では、Δlogx はそのままとし、他の表現は、とくにことわらない限り、すべて年率とし、記号x で表示することとした。(1四半期増減率の場合はその旨明記してある。)
  7. 上記4~6による係数の単位変更は行っているが、定数項については行っていない場合がある。
  8. Δxx の対1四半期前増減差を示し、Δ4x は対前年同期増減差を示す。
  9. 変数の値を安定させるために2期平均等をとっている場合あるが、これについては明示していない。
  10. 変数名は、モデル上はすべて大文字であるが、以下の記述では小文字、ギリシャ文字等も用い、極力理論における用例に近づけるよう努めた。

全文の構成

  1. 88ページ
    はじめに別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 115 KB)
  2. 90ページ
    I  支出ブロック
    1. 90ページ
      1.民間最終消費支出
    2. 94ページ
      2.民間企業設備投資
    3. 98ページ
      3.民間住宅投資別ウィンドウで開きます。 (PDF形式 80 KB)
    4. 100ページ
      4.民間在庫投資
  3. 103ページ
    1. 103ページ
      1.生産関数による定式化
    2. 106ページ
      2.失業率関数の計測
  4. 108ページ
    III  賃金・価格ブロック
    1. 108ページ
      1.賃金率
    2. 111ページ
      2.価格別ウィンドウで開きます。(PDF形式 135 KB)
  5. 117ページ
    IV 分配所得・財政ブロック
    1. 118ページ
      1.分配所得
    2. 121ページ
      2.財政
  6. 125ページ
    V  金融ブロック別ウィンドウで開きます。(PDF形式 127 KB)
    1. 128ページ
    2. 143ページ
      2.金利の決定別ウィンドウで開きます。(PDF形式 66 KB)
  7. 151ページ
    VI 貿易・国際収支ブロック
    1. 152ページ
      A.経常取引別ウィンドウで開きます。(PDF形式 108 KB)
      1. 152ページ
        1.財の貿易
      2. 157ページ
        2.サービスの貿易
      3. 161ページ
        3.移転別ウィンドウで開きます。(PDF形式 107 KB)
    2. 161ページ
      B.資本取引
    3. 171ページ
      C.外国為替市場の需給均衡
    4. 172ページ
    5. 177ページ
      参考文献別ウィンドウで開きます。(PDF形式 44 KB)
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