経済分析第110号
世界経済モデルにおける日本経済モデル

1987年7月
  • 貞広 彰,川崎 研一,丸山 雅章,金城 毅

(はじめに)

本稿は当研究所の世界経済モデル(EPA World Economic Model)の中核的地位をしめる日本経済モデルの第3次バージョン(暫定版)の解説をすることを目的としている(注1)。今回の改定にあたってはa. 昭和60年10月に移行した昭和55年価格基準の新SNAデータを全面的に利用し、b. 構造方程式の推計にあたっては、第1次オイルショックを境として、それまでの高度成長期の経済構造からの変化が各分野にみられることにかんがみ、標本期間を一部の例外を除いて1975年以降に限定し、可能なかぎり、最近の経済構造を反映する構造パラメーターを得ることに意を用いた。なお、第2次版(注2)(以下旧版とよぶ)の標本期間の最終期はおおむね、1982年第1四半期であったが、今回のモデル(以下新版)においては1985年第1四半期までのデータを使用した。また、モデルの基本構造については、ほぼ旧版の考え方を踏襲しているが、後に、詳細に述べるように、国際収支・為替レートブロックについてはTsiang-Zohmenタイプの為替レート決定に関する理論フレームにもとづき全面的な修正を行った。

本稿の構成は次のとおりである。まず第1章では、個別方程式の推計結果の吟味を行う。第2章では、モデルの動学的パフォーマンスを示す。第3章では本モデルの特性をいくつかのシュミレーションによって検討するが、特に(i)IS曲線の形状が旧版モデルに比してどの程度変化しているかを検討し、(ii)これまでの研究では日本のLM曲線はきわめてフラットであることが明らかにされているが、この理由は日本の貨幣の供給関数がきわめてフラットであることによるものであることを明らかにし、ついで(iii)財政支出の拡大による為替レートへの効果については、non-accommodatingな金融政策の定義の仕方によって異なってくることを明らかにし、さらに(iv)これまでの研究では比較的に明示されていなかった金利引下げによる直物レートと先物レートへの相対的なインパクトの大きさについて検討する。なお補論ではTsiang-Zohmenタイプの為替レート決定に関するフレームワークをマクロ経済フレームワークの中で位置づけ、為替市場、財市場、債券市場、貨幣市場の相互関係を考案し、Tsiang-Zohmen モデルをMundell-Flemmingモデルと関係づける試みを行う。


(注1)本稿は昭和61年6月時点のモデルをベースにしたものであり、Yashiro, Ikeda et al〔1987〕による3カ国モデルシミュレーションがベースとしている同年12月時点の日本モデルとは異なる。

(注2)当研究所の第2次版世界経済モデル(84年2月版世界経済モデル)については、Yoshitomi, et al〔1984〕を参照されたい。


全文の構成

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  2. 1ページ
    はじめに
  3. 2ページ
    第1章 モデルの構造
    1. 2ページ
      第1節 最終需要ブロック
    2. 8ページ
      第2節 生産・稼働率・雇用ブロック
    3. 11ページ
      第3節 賃金・価格ブロック
    4. 15ページ
      第4節 分配所得および財政ブロック
    5. 19ページ
      第5節 国内金融ブロック
    6. 24ページ
      第6節 国際収支・為替レートブロック
  4. 34ページ
    第2章 モデルの動学的パフォーマンスと為替レートの安定性
    1. 34ページ
      第1節 最終テストの結果
    2. 34ページ
      第2節 為替市場の安定性
  5. 40ページ
    1. 41ページ
      第1節 IS-LM-BP曲線とマクロ政策の効果(I)
    2. 49ページ
      第2節 IS-LM-BP曲線とマクロ政策の効果(II)
    3. 52ページ
      第3節 国際収支ブロックの特性と金融政策の効果
    4. 57ページ
      第4節 主要政策変数および外生変数の効果
    5. 61ページ
      付表  主要乗数一覧表
  6. 78ページ
    1. 78ページ
      第1節 為替市場の均衡と為替レートの決定
    2. 80ページ
      第2節 マクロ・フレームワーク
    3. 84ページ
      第3節 マンデルーフレミングモデルのフレームワーク
  7. 91ページ
    付録1 日本モデル方程式体系一覧表
  8. 109ページ
    付録2 変数一覧表
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