経済分析第129号
Dynamic Interdependence among the Asia-Pacific Economies

1993年3月
  • 山澤 逸平
  • 安田 靖
  • 永谷 安賢
  • 中藤 泉
  • 杉田 伸樹
  • 平田 章
  • 奥田 英信
  • 小島 博之
  • 金城 均
  • Giovanni Capannelli

(要旨)

本研究プロジェクトはアジア・太平洋地域の経済的相互依存の高まり、その核となるメカニズムおよびそこにおける日本の役割に焦点を当てたものである。

先ず第1章においては、同地域における各国経済の相互依存の高まりを通じた発展の概要が示され、本プロジェクトにおける基本的観点が提示されている。"東アジアモデル"と称される貿易と投資を通じた供給面での発展パターンと、経済成長によってもたらされる国内市場の購買力の高まりという需要面での要因が併せて論じられている。

第2章では、先進国から後進国への産業移転に関する基本的フレーム・ワーク=雁行的経済発展の理論的説明がなされ、同時に産業調整における諸国間の協調の必要性が論じられている。

第3・4章ではそれぞれ、第2章で論じられた産業移転のメカニズムを「繊維・衣料産業」、「電子産業」という具体的な2つの産業のアジア・太平洋地域における発展過程を通じて検証している。

第3章では過去30年間におけるアジア太平洋地域の綿織物、合成繊維そして衣料の貿易マトリックスを使用して同産業の相互関係の変化を分析している。特に1974年に締結されたMFA(多国間繊維取り決め)が80年代におけるアジア諸国の繊維産業に与えた影響に着目し、同取り決めによってNIEs諸国の米国、ECへの輸出が減少し、代わってアジアが輸出市場としての重要性を高めたことを指摘している。また衣料においても主要な輸出先が米国から日本へ次第にシフトしつつあるとしている。結果的に、MFAはアジア地域内における繊維・衣料産業間の相互依存関係を緊密化させることになったとしている。

第4章では日本からマレーシアへの電子産業の移転プロセスが取り上げられている。マレーシアの電子産業の発展と日本からの産業移転のプロセスは"Catching-upproductcycle"仮説で説明しうるが、その原動力となる後発国の現地企業家による追いつき努力がマレーシアの場合まだ限定的な役割しか果たしていないとし、今後、同国の電子産業において外資への依存の度合いを低め、産業移転の過程における技術移転の効用を高めるためにも、現地企業家の育成が重要であると主張している。

第5章では金融面での相互依存関係の変化が分析される。NIEs、ASEAN諸国は外資を導入することにより雁行的経済発展を実現してきたが、各国の外資導入の形態もその産業の発展段階や時代背景によって多様な変化が見られる。特に80年代における東南アジア諸国の対外収支の改善はこれらの国々への国際資本流入のパターンを変化させると同時に各国間の金融面での相互依存関係の強化をもたらしているとしている。

第6章では日・韓・タイの3国間における家電産業の貿易と投資を通じた相互依存的産業発展が分析される。特にここでは輸出特化係数を用いた競争力の比較による雁行的経済発展の家電産業への適合性が検証され、輸入代替から輸出化への発展段階の移行が過度に短期間でなされることによる問題点を提示している。

最後に第7章においては、東アジア経済の発展における雁行的経済発展モデルの評価分析をラテン・アメリカとの比較を通じて行っている。分析の過程で、政府による発展促進政策や現地の企業家精神、一部階層の既得権益の排除といった経済発展の支援要因となる要素を浮き彫りにしていく。更に、雁行的経済発展がより広い地域に広がるための条件としての市場開放の重要性を指摘している。


全文の構成(PDF形式、 全4ファイル)

  1. 5ページ
    Chapter.1別ウィンドウで開きます。(PDF形式 232 KB) The asia pacific development and interdependence : overview
  2. 14ページ
    Chapter.2 Transmission of industrial development and international industrial adjustment
  3. 37ページ
    Chapter.3別ウィンドウで開きます。(PDF形式 489 KB) Trade and industrial interdependence in the pacific region : textile and clothing
  4. 67ページ
    Chapter.4 Transfer of japanese electronics industry to malaysia
  5. 119ページ
    Chapter.5別ウィンドウで開きます。(PDF形式 367 KB) Flying wild geese pattern economic development and the changing pattern of international capital flows in nies and asean countries
  6. 142ページ
    Chapter.6別ウィンドウで開きます。(PDF形式 496 KB) Interdependent development of eastern asian economies-cross country comparison of household electric and electronic industry
  7. 164ページ
    Chapter.7 Can wild geese continue to fly over the world? -the theory of flying wild geese development and will for economic development
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