経済分析第133号
働き過ぎと健康障害
-勤労者の立場からみた分析と提言-

1994年1月
  • 徳永 芳郎(経済企画庁経済研究所前総括主任研究官)

(はじめに)

「日本人は働き過ぎである」という批判は、20年ほど以前から欧米諸国から出されていた。このような批判は、貿易面で日本製品に競争力があり過ぎる背景として取り上げられたものであった。その後も、日本経済は幾度も難しい局面を乗り越えて成長を続け、経済大国としての地位を不動のものにするに至った。この間、我が国の平均寿命は、栄養状態の改善や医学の進歩などを反映して延び続け、世界一の長寿国となるに至った。しかしながら、近年の我が国では、産業の高度技術化、情報化、社会情勢の変化などを反映して働き過ぎによる健康障害が増加し、「過労死」という象徴的な形で社会問題化するようになっている。豊かな社会、少なくとも豊かになった筈の社会で、「過労死」が多くの人々の重大な関心を呼ぶという事態は尋常なこととは言えないであろう。

本稿では、今日における働き過ぎによる健康障害の問題を取り上げて、実態と背景を把握し、具体的な改善策を提言することとしたい。


全文の構成(PDF形式、 全2ファイル)

  1. 2ページ
    1. 2ページ
      (1) はじめに
    2. 2ページ
      (2) 勤労者の立場から総合的に分析する
    3. 2ページ
      (3) 一般の読者を対象に、出来るだけ平易に説明する
    4. 3ページ
      (4) 働き過ぎと健康障害についての主な現状認識
    5. 4ページ
      (5) 研究上の目新しさ
    6. 4ページ
      (6) 具体的な改善策
  2. 6ページ
    第1章 勤労者の健康状態
    1. 6ページ
      (1) 健康についての自覚症状
    2. 7ページ
      (2) 持病の状況
    3. 7ページ
      (3) 職業上のストレスの状況
    4. 7ページ
      (4) 疲労やストレスの解消方法
  3. 9ページ
    第2章 「過労死」の実態
    1. 9ページ
      (1) 過労死とは何か
    2. 9ページ
      (2) 過労死問題はいつ頃から生じたのか
    3. 10ページ
      (3) 「過労死110番」に寄せられた相談内容
    4. 10ページ
      (4) 相談窓口でみた「働き過ぎ」の内容
    5. 10ページ
      (5) 壮年期の「急な病気」の実態調査
    6. 16ページ
      (6) 大手企業に勤めているホワイトカラー層の自己診断
  4. 18ページ
    第3章 労働時間についての比較検討
    1. 18ページ
      (1) 毎勤統計でみた労働時間の推移(男女平均)
    2. 19ページ
      (2) 男女別の労働時間の推移(労働力調査)
    3. 20ページ
      (3) 超長時間労働の男性の雇用者数は増大している
    4. 22ページ
      (4) 労働力調査と毎勤統計の比較
    5. 23ページ
      (5) 労働力調査の方が実態に近いと考えられる
    6. 25ページ
      (6) サービス残業の実態(民間の労働者)
    7. 27ページ
      (7) 公務員の残業について
    8. 28ページ
      (8) 平均値をみるだけでは不十分である
    9. 28ページ
      (9) 労働時間の国際比較
    10. 28ページ
      (10)在社時間についての国際比較(事例研究)
    11. 30ページ
      (11)深夜・変則勤務についての国際比較(事例研究)
  5. 32ページ
    第4章 労災補償の制度と課題
    1. 32ページ
      (1) 労働基準法における労災補償の考え方
    2. 32ページ
      (2) 労災保険の概要
    3. 35ページ
      (3) 公務員の災害補償制度
    4. 35ページ
      (4) 脳血管・心疾患の業務上外の認定基準
    5. 35ページ
      (5) 認定基準を巡る論争の背景
  6. 53ページ
    1. 53ページ
      (1) 保険とは何か
    2. 53ページ
      (2) 保険と貯蓄の比較
    3. 53ページ
      (3) 保険需要者の特徴的な行動(モラルハザードと逆選択)
    4. 54ページ
      (4) 保険会社の特徴的な行動
    5. 55ページ
      (5) 保険の観点からみた労災保険の特徴
    6. 56ページ
      (6) 労災保険の防災効果
    7. 58ページ
      (7) 過労死問題の予防策
    8. 59ページ
      (8) 労働時間の長さと疲労の蓄積
    9. 63ページ
      (9) 「時短促進料率」の提案
  7. 67ページ
    第6章 医学的知見と働き過ぎ
    1. 67ページ
      (1) 効率の追求と健康への負担
    2. 68ページ
      (2) 脳の仕組みからみた生存と精神の中枢機能
    3. 69ページ
      (3) ストレスの実態と健康障害
    4. 70ページ
      (4) ストレスの管理と発散の方法
    5. 71ページ
      (5) 栄養分の過剰摂取
    6. 72ページ
      (6) 好循環と悪循環
  8. 75ページ
    第7章 価値観と日本人の働き過ぎ
    1. 75ページ
      (1) 価値観のとりあげ方
    2. 75ページ
      (2) 最大の特徴は長期の個人間競争
    3. 75ページ
      (3) 日本的経営における働かせ方
    4. 76ページ
      (4) 働き過ぎにも経済合理性がある
    5. 76ページ
      (5) なぜ「働き過ぎ」が生じるのか
    6. 77ページ
      (6) 「過労死」紛争にみる価値観のギャップ
    7. 78ページ
      (7) 日本的儒教にみる「忠」と「仁」のアンバランス
    8. 78ページ
      (8) 教育の方法と「会社人間」の輩出
    9. 79ページ
      (9) 会社中心主義と個人の選択の自由
  9. 81ページ
    第8章 具体的な改善策
    1. 81ページ
      (1) 労災補償制度を救済と予防に活用する
    2. 82ページ
      (2) 法定の労働時間の短縮と割増賃金率の引き上げを推進する
    3. 84ページ
      (3) 公務員の残業を減らすために、特別の工夫を導入する
    4. 87ページ
      (4) 経営者には、経済大国に相応しい経営理念がある
    5. 88ページ
      (5) 中間管理職は自衛策を講じる必要がある
    6. 89ページ
      (6) サラリーマンは、健康的な価値観を持つように心掛けよう
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