経済分析第134号
環境・エネルギー・成長の経済構造分析
-産業連関分析とニューラルネットワーク-

1994年4月
植田 和弘
(経済企画庁経済研究所客員主任研究官、京都大学教授)
長谷部 勇一
( 同 客員研究員、横浜国立大学助教授)
鷲田 豊明
( 同 客員研究員、和歌山大学助教授)
寺西 俊一
( 同 客員研究員、一橋大学教授)
宮崎 誠司
( 同 委嘱調査員、四国電力)
家田 忠
( 同 行政実務研修員、埼玉県)

(要旨)

本研究では、地球環境問題の核心は、環境・エネルギー・成長をめぐる経済構造の問題であるという認識に基づいて、その構造分析に2つのアプローチで接近している。

1つは、地球環境問題なかんずく地球温暖化問題の解決には、地球的規模での化石燃料消費効率の向上が不可欠であるとの立場から、我が国の化石燃料消費効率について時系列的変化および国際間の差異が生じた原因を、産業連関分析の手法を用いて、技術、産業構造、消費構造、貿易等の要因に分解し、化石燃料消費効率に関する我が国の特徴を明らかにすることである。

1970年から1989年までの日本の化石燃料消費構造の変化の時系列比較と、1985年時点のアメリカ、フランス、西ドイツ、イギリス、マレーシア、インドネシア、およびタイを対象とする国際比較分析を、レオンティエフが開発した産業連関表によるスカイライン分析等を用いて行った。その結果、以下に示すいくつかの知見が得られた。

日本の化石燃料消費誘発係数の減少、すなわち省エネルギー化は、1975年から85年の10年間に顕著にすすんだが、その大部分は投入構造要因の変化に起因している。この期間の需要面における改善効果は技術的要因による効果に比べてきわめて小さい。それでも、需要面の改善はそれなりに着実に進んできたが、85年から89年にかけては、逆に悪化している。そのため、この間技術的には若干ではあるがひきつづき改善されたにもかかわらず、全体では化石燃料消費誘発係数は増加している。それゆえ今後の省エネルギー対策は、技術面での取り組みだけではなく需要面、たとえばライフスタイルや社会システム面での配慮が必要なことが明らかになった。

また、スカイライン分析を用いて、輸出入が化石燃料消費誘発に及ぼす影響を定量的に分析すると、輸入による化石燃料消費誘発の削減効果が1985から89年にかけて顕著であった。これは85年の円高以降特に素材製品の輸入が拡大したことを反映したものである。

さらに、日本と諸外国の化石燃料消費効率を投入構造要因と最終需要構造要因とに分解して、時系列的変化の分析と同様の方法を用いて比較した。欧米先進国との比較については、投入構造要因では、フランス以外のアメリカ合衆国、イギリスおよび旧西ドイツの3国は日本よりも多消費型になり、化石燃料消費面における日本の技術優位が確認できる。フランスが日本より寡消費型となるのは電力部門の原子力導入が進んでいるためであり、電力部門を除けば日本の方が寡消費型になる。また、投入構造要因と最終需要構造要因を比べてみると、イギリス以外は最終需要構造要因の方が大きく、日本が欧米先進国に比べて化石燃料寡消費型であるのは、投入構造要因の差によるところもあるが、最終需要構造の違いによるところが大きいと結論付けられる。これに対して、アジア諸国との比較については、日本が化石燃料寡消費型になっているのは、最終需要構造の違いによるよりもむしろ投入構造要因の差によるところが大きいとの分析結果が得られた。

第2のアプローチでは、ニューラルネットワークを用いて、世界・地域別の経済成長、人口、エネルギー、農業の動態パターンを分析した。一般に、計量経済モデルは構造が安定している場合に適用可能であるのに対して、本手法は経済変動パターンを構造的にとりだすことが可能な点に特色がある。ニューラルネットワークは、まだ開発途上の手法であり、分析結果についてはまだ定量的な評価を下せる段階にはないが、経済の相互依存が深くなると特徴的なパターンがでてこないことが明らかになった。


全文の構成(PDF形式、 全10ファイル)

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  2. 第 I 部 産業連関表を用いた化石燃料消費効率の要因分析
    1. 3ページ
      1. 本研究の目的と方法
      1. 3ページ
        1.1 本研究の目的
      2. 4ページ
        1.2 分析の方法
      3. 8ページ
        1.3 分析に用いた産業連関表
    2. 26ページ
      1. 26ページ
        2.1 化石燃料誘発係数と原単位の時系列的変化
      2. 27ページ
        2.2 燃料別の内訳
      3. 28ページ
        2.3 化石燃料誘発係数変化の要因分解
      4. 32ページ
    3. 39ページ
      3. 化石燃料消費構造の国際比較
      1. 39ページ
        3.1 化石燃料誘発係数と原単位の国際比較
      2. 41ページ
        3.2 燃料別の内訳
      3. 42ページ
      4. 54ページ
      5. 63ページ
        3.5 貿易の影響
    4. 65ページ
      4. 今後の課題
      1. 67ページ
        付表
  3. 第 II 部 ニューラルネットワークによる世界・地域別の経済成長、人口、エネルギー、農業の動態パターン分析
    1. 71ページ
      1. 環境問題のグローバリゼーションとリージョナリゼーション
    2. 74ページ
      2. 地域特性としての動態パターン
      1. 74ページ
        2.1 人口の動態
      2. 75ページ
        2.2 GNPの動態
      3. 76ページ
        2.3 農業・食料の動態
      4. 79ページ
        2.4 エネルギー消費の動態
    3. 80ページ
      3. 構造としてのパターン
    4. 82ページ
      4. 相結合型ニューラルネットワークによるモデル
    5. 86ページ
      1. 86ページ
        5.1 基礎データ
      2. 91ページ
        5.2 ユニット間ウェイトの決定方法
      3. 94ページ
        5.3 増加、減少ユニットの設定
      4. 94ページ
        5.4 ラグ付きモデル
    6. 95ページ
      .
      1. 95ページ
        6.1 収束パターンと評価
      2. 99ページ
        6.2 世界リンクモデル
      3. 101ページ
        6.3 ユニットの固定化によるシミュレーション
    7. 105ページ
      7. 結論と課題
    8. 107ページ
    9. 109ページ
    10. 110ページ
      補論2 エネルギー消費のユニット負荷と実際の伸び率(図表)
    11. 112ページ
      参考文献別ウィンドウで開きます。(PDF形式 149 KB)
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