経済分析第146号
主要国における資本ストックの測定法

1996年6月
  • 柳沼 寿(経済企画庁経済研究所客員主任研究官、法政大学教授)
  • 野中 章雄( 同 主任研究官)

(要旨)

近年、東アジア諸国の急速な成長をきっかけとして、その供給力上昇の源泉はどこにあるのか、という研究に注目が集まっている。こうした研究を行う際には、元となるデータについての正確な理解が必要となる。また、資本ストック統計は国際比較ができるような土壌に立って分析されることが重要である。そこで、本研究では各国における「資本ストックの測定法」の実態を明らかにして比較し、それに基づいて我が国の「資本ストックの測定法」が抱える課題を改善するための方策を検討することを目的とする。

資本ストック推計に関する国際基準は、1974年10月の第18回国際連合統計委員会に、国連事務局から提出され採択された、"Draft International Guidelines on the National and Sector Balance-Sheet and Reconciliation Accounts of the SNA" (国連文書番号E/CN. 3/460、1974年7月24日、邦訳:SNAにおける国民及び部門別貸借対照表及び調整勘定)及び1979年2月の第20回国際連合統計委員会に上程された"Draft International Guidelines on Statistics of Tangible Assets" (国連文書番号E/CN. 3/508、1974年4月5日、邦訳:有形資産に関する国際基準)を一部修正したものである。これは1968年2月の第15回国際連合統計委員会で採択された新SNAのストック面を構成するものである。しかし、「資本ストックの測定」の歴史は古く、各国それぞれ異なる状況の下で発展してきた経緯から、各国の推計の現状は必ずしもこの基準に完全に合致したものではなく、推計項目を国際比較する際に困難を生じている(比較表参照)。

例えば、我が国の「資本ストックの測定法」は、初期値として1955年及び70年実施の国富調査結果を利用したベンチマークイヤー法(Bench Mark Year Method:BY法)により、粗及び純資本ストックが推計されている。粗資本ストックは産業別に実質値で、純資本ストックは部門別、資産別に名目値、実質値で推計されている。平均耐用年数は1970年国富調査結果が参照され、残存関数は一括除却が使われている。測定法としてBY法を使用している国は日本と韓国だけであり、直接調査法を採用しているオランダ以外の国では高級棚卸法(Perpetual Inventory Method:PI法)が広く使われている。また、平均耐用年数、残存関数をはじめ資本ストック概念、価格評価及び資産分類等の測定内容も国により様々である。

本稿においては、まず「資本ストックの測定法」の背景にある考え方、測定法等について概観する。次に、OECD加盟国のうち資本ストックの測定が行われていない3カ国(ポルトガル、ルクセンブルグ、トルコ)を除く21カ国のうち資料の収集ができた17カ国及び韓国について、「資本ストックの測定法」の実態を明らかにすることにより各国比較を行う。その際、これらの国の「資本ストックの測定法」について、すでに公表されている資料に新たに収集できた資料を加えることにより、出来る限り現実に近い「資本ストックの測定法」を記述するように心掛けた(残念ながらオーストリア、アイスランド、ニュージーランド、スペインについては資料の収集ができなかった)。最後に、以上の結果を踏まえ、我が国の「資本ストックの測定法」が抱えている様々な課題(除去率の推計バイアス、中古品取得率の長期固定によるバイアス、ストック推計値の修正方法上の問題、推計項目を国際比較する際の相違の問題)について検討し、それらを改善するための方策を提案する。


比較表 1
比較表 2

全文の構成(PDF形式、 全1ファイル)

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  2. 2ページ
    (要旨)
  3. I. 資本ストックの測定法
    1. 3ページ
      1. 資本の定義
    2. 3ページ
      2. 資本ストックの測定法
    3. 7ページ
      3. 資本ストックの評価法
    4. 8ページ
      4. 耐用年数
    5. 14ページ
      5. 残存関数あるいは除却関数
  4. II. 主要国における資本ストックの測定法
    1. 21ページ
      1. オーストラリア
    2. 27ページ
      2. ベルギー
    3. 31ページ
      3. カナダ
    4. 37ページ
      4. デンマーク
    5. 38ページ
      5. フィンランド
    6. 42ページ
      6. フランス
    7. 44ページ
      7. ドイツ
    8. 48ページ
      8. ギリシャ
    9. 49ページ
      9. アイルランド
    10. 50ページ
      10. イタリア
    11. 52ページ
      11. 日本
    12. 56ページ
      12. 韓国
    13. 57ページ
      13. オランダ
    14. 64ページ
      14. ノルウェー
    15. 66ページ
      15. スウェーデン
    16. 69ページ
      16. スイス
    17. 71ページ
      17. イギリス
    18. 74ページ
      18. アメリカ
  5. 81ページ
    III. 推計項目の各国比較・我が国の「資本ストックの測定法」の課題と改善するための方策
    1. 90ページ
      (比較表)資本ストック推計主要項目の国別比較一覧表
    2. 93ページ
      (参考表)各国の資本ストック推計項目一覧表
  6. 106ページ
    ワークショップ質疑応答
  7. 108ページ
    英文要旨
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