経済分析第169号
経済分析第169号(ジャーナル版)

平成15年3月
「平成不況の性格:経済理論からの接近」
浜田 宏一(経済社会総合研究所前所長)
「銀行取引関係の経済的価値-北海道拓殖銀行破綻のケース・スタディ-」
堀 雅博(経済社会総合研究所主任研究官)
高橋 吾行(経済社会総合研究所調査員)
「90年代における所得変動と消費:ミクロデータによる消費保険仮説の検証」
清水谷 諭(経済社会総合研究所企画官)
「銀行貸出、マネー、その他の資金調達手段の優位性」
原田 泰(経済社会総合研究所総括政策研究官)
岡本 慎一(日本生命株式部課長補佐)
「社会資本の生産効果と同時性」
林 正義(明治学院大学経済学部助教授)

(要旨)

「平成不況の性格:経済理論からの接近」

本稿の目標は、1990年代から続く日本経済の沈滞が経済理論でどう説明できるかを明らかにすることである。経済政策によって事態の改善を図るには、数量的な知識以上に経済的脈絡の理論的整理が有益と考えるからである。

「銀行取引関係の経済的価値-北海道拓殖銀行破綻のケース・スタディ-」

本研究では、北海道拓殖銀行破綻に着目して、拓銀関係先・非関係先の計3千社近い企業の株価及び財務データの分析を行い、銀行の変調が取引企業に与える影響を実証的に評価している。株価分析の限界を明らかにした上で、破綻前後における取引先企業の財務データの変化を分析した結果、上場・店頭等公開企業では懸念される影響は見出せず、北海道内の非公開企業データを用いても影響は極めて限定的であることが明らかになった。

「90年代における所得変動と消費:ミクロデータによる消費保険仮説の検証」

この論文では、「消費保険仮説」の検証を通じて、90年代の所得変動と消費の関係を定量的に検証した。「家計調査」の個票を用いた推計の結果、90年代の日本では、消費保険仮説は、消費全体でも、財・サービス別の消費でも強く棄却され、家計は消費を完全には平滑化していなかったことがわかった。しかしながら、消費保険仮説からの乖離は小さく、世帯主所得の変化の多くの部分は貯蓄によってカバーされていることがわかった。

「銀行貸出、マネー、その他の資金調達手段の優位性」

銀行の機能低下が経済に決定的な影響を与えているという議論があるが、そのような実証研究はむしろ少ない。銀行貸出、マネーサプライ、その他の資金調達手段の経済変動に対する影響をVAR(Vector Autoregression)モデルによって考察すると、一般に、マネーサプライが、貸出や総資金調達よりも大きな影響力を持っていた。中小企業の付加価値や設備投資においても、マネーサプライの影響が銀行貸出の影響を上回っていた。

「社会資本の生産効果と同時性」

社会資本の同時性は実証分析において頻繁に言及される論点であるが、その概念を誤って理解し、不適切な対処方法を用いている研究も少なくない。本稿では、この「同時性」にかかわる実証分析上の問題を、1.同時性の適切な認識、2.ストックデータのタイミングとその含意、3.攪乱項の系列相関、および、4.労働投入と資本稼働率の内生性と操作変数選択という視点から整理し、我が国の先行研究を批判的にサーベイするものである。


本号は、政府刊行物センター、官報販売所等別ウィンドウで開きます。にて刊行しております。

全文の構成

(論文)

「平成不況の性格:経済理論からの接近」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 742 KB)

浜田 宏一

  1. 2ページ
    1.はじめに
  2. 2ページ
    2.経済理論の方法と現実の複雑性
  3. 2ページ
    3. 不況の実物的要因1
  4. 3ページ
    4. 不況の実物的要因2
  5. 7ページ
    5. 複数均衡の可能性
  6. 10ページ
    6. 貨幣的要因の重要性
  7. 11ページ
    7. 不良債権の存在
  8. 17ページ
    むすびに代えて
  9. 19ページ
    参考文献

「銀行取引関係の経済的価値-北海道拓殖銀行破綻のケース・スタディ-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 693 KB)

堀 雅博, 高橋 吾行

  1. 24ページ
    1.はじめに
  2. 25ページ
    2. 拓銀破綻公表時の株式市場変動によるイベント・スタディ
  3. 30ページ
    3. 公開企業の財務データにみる拓銀破綻の影響
  4. 40ページ
    4. 非公開企業の財務データにみる拓銀破綻の影響
  5. 48ページ
    5. むすび
  6. 49ページ
    参考文献

「90年代における所得変動と消費:ミクロデータによる消費保険仮説の検証」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 577 KB)

清水谷 諭

  1. 52ページ
    1. 動機と目的
  2. 53ページ
    2. これまでの研究
  3. 55ページ
    3. データ
  4. 56ページ
    4. 消費保険仮説の検証
  5. 62ページ
    5. 消費平滑化の要因
  6. 64ページ
    6. 消費保険仮説と流動性制約
  7. 67ページ
    7. 結論
  8. 68ページ
    参考文献

「銀行貸出、マネー、その他の資金調達手段の優位性」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 0.97 MB)

原田 泰, 岡本 慎一

  1. 71ページ
    1. はじめに
  2. 71ページ
    2. これまでの研究
  3. 74ページ
    3. データの観察
  4. 77ページ
    4. 経済変動と貸出、総資金調達、マネーのVARモデルによる分析
  5. 85ページ
    5. 結語
  6. 86ページ
    参考文献

(展望)

「社会資本の生産効果と同時性」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 585 KB)

林 正義

  1. 88ページ
    1. はじめに
  2. 89ページ
    2. 同時性と内在性
  3. 93ページ
    3. ストックデータのタイミングと同時性
  4. 97ページ
    4. 撹乱項の系列相関と社会資本の内生性
  5. 99ページ
    5. 労働・民間資本の同時性と操作変数の選択
  6. 104ページ
    6. 結語
  7. 104ページ
    参考文献
  8. 109ページ
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