経済分析第171号
経済分析第171号(ジャーナル版)

平成15年12月
「誰が所得再分配政策を支持するのか?」
大竹 文雄(大阪大学社会経済研究所)
富岡 淳(大阪大学大学院経済学研究科)
「社会資本と地方公共サービス-資本化仮説による地域別社会資本水準の評価-」
林 正義(明治学院大学)
「信用乗数の変化はいかに説明できるか」
飯田 泰之(駒澤大学経済学部専任講師、内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
原田 泰(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)
浜田 宏一(イェール大学教授、前内閣府経済社会総合研究所所長)
「マクロ計量モデルにおける乗数推定値の精度-確率的シミュレーションによる評価-」
堀 雅博(前内閣府経済社会総合研究所、現内閣府政策統括官(経済財政-運営担当)付参事官(国際経済担当)付企画官)
山根 誠(前内閣府経済社会総合研究所、現国際協力事業団)
田邉 智之(前内閣府経済社会総合研究所、三井情報開発株式会社)
「デフレ期待と実質資本コスト-ミクロデータによる90年代の設備投資関数の推計-」
清水谷 諭(内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
寺井 晃(東京大学大学院経済学研究科博士課程)
「昭和恐慌をめぐる経済政策と政策思想:金解禁論争を中心として」
若田部 昌澄(早稲田大学政治経済学部助教授)
「FTPL(Fiscal Theory Price Level)をめぐる論点について」
河越 正明(内閣府政策統括官(経済財政-運営担当)付企画官、経済社会総合研究所特別研究員)
広瀬 哲樹(前内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官(現同研究所特別研究員))

(要旨)

「誰が所得再分配政策を支持するのか?」

本稿では、独自のアンケート調査を用いて、再分配政策強化に対する支持・不支持を決定する個人属性を計量経済学的に明らかにした。失業者、低所得者、高齢者、危険回避的な者が再分配政策を支持していることが明らかにされた。

「社会資本と地方公共サービス-資本化仮説による地域別社会資本水準の評価-」

本稿では、地代に資本化する効果はネットの便益であり、社会資本が地域に費用を発生させる限りにおいて、地代勾配で表現される社会資本の効果は社会資本の限界純便益として捉えられなければならないことを理論分析によって明示する。さらに、地方公共サービスの最適性を評価する方法が社会資本にも適用可能であることを示し、同方法を応用することによって我が国の社会資本の水準を分野別に評価する。

「信用乗数の変化はいかに説明できるか」

本稿では,信用乗数の変化要因に関し寄与度分解と時系列分析によって考察した.分析からは,1)90年代の信用乗数低下期に家計の現金保有性向上昇の寄与は極めて大きい,2)80年代・90年代ともに期待インフレ率動向は信用乗数に正の影響を与えている,3)90年代推計では不良債権残高動向も信用乗数の変化に有意な影響を与えているが,その影響力は数量的には大きくない,などの結論を得ることができた。

「マクロ計量モデルにおける乗数推定値の精度-確率的シミュレーションによる評価-」

本研究では「短期日本経済マクロ計量モデル」をベースに確率的シミュレーションを行い、いわゆる乗数等に関する推定精度を検討している。計算結果からは、各種乗数の計測結果が確率変数の実現値に過ぎず、相当の幅(信頼区間)をもって解する必要があること等が明らかになる。

「デフレ期待と実質資本コスト--ミクロデータによる90年代の設備投資関数の推計-」

90年代には名目金利は相当程度低下した一方、デフレ期待が実質資本コストを押し上げた。本論文は企業レベルの実質資本コストを計測し、特に90年代後半は横ばいないし上昇気味であったこと、実質資本コストの動きは、設備投資の動きと統計的に有意な関係であることを実証した。

「昭和恐慌をめぐる経済政策と政策思想:金解禁論争を中心として」

過去のデフレ不況である1930-31年の昭和恐慌前後について、経済思想と経済政策の関連について考察した。当時の経済論戦の対立軸は、デフレ政策の意図的追及による不良事業・企業・産業の徹底淘汰という清算主義の是非をめぐるものだった。恐慌からの脱出は金本位制からの離脱、その後の積極的金融財政緩和というリフレ政策(デフレの弊害を除去するインフレ政策)という政策転換を必要とした。

「FTPL(Fiscal Theory of Price Level)を巡る論点について」

物価水準の財政理論(FTPL)について、理論、実証及び政策的な含意を展望し、検討した。政府の予算制約式が物価水準を決めるというFTPLの主張は、金融政策や国債の満期構成等の前提の変更により、不明確になる。また、そもそもNon-Ricardian型財政政策が実際に採用されているか、不明である。日本に関し、事実上FTPLの処方箋を実施していのに流動性の罠から脱出できないのはなぜかという疑問が残る。


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全文の構成

  1. 1ページ
    はじめに別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.1 MB)

(論文)

「誰が所得再分配政策を支持するのか?」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 601 KB)

大竹 文雄,富岡 淳

  1. 5ページ
    1.はじめに
  2. 6ページ
    2.所得再分配政策に対する支持・不支持の決定要因
  3. 8ページ
    3.推定モデルとデータ
  4. 12ページ
    4.推定結果
  5. 22ページ
    5.おわりに
  6. 23ページ
    参考文献
  7. 25ページ
    変数の説明

「社会資本と地方公共サービス-資本化仮説いよる地域別社会資本水準の評価-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 934 KB)

林 正義

  1. 30ページ
    1.はじめに
  2. 31ページ
    2.モデル
  3. 34ページ
    3.資本化と地代勾配
  4. 37ページ
    4.地域社会資本水準の評価
  5. 43ページ
    5.結語
  6. 43ページ
    参考文献

「信用乗数の変化はいかに説明できるか」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 795 KB)

飯田 泰之,原田 泰,浜田 宏一

  1. 49ページ
    1.はじめに
  2. 49ページ
    2.信用乗数の動向
  3. 53ページ
    3.信用乗数の変動要因
  4. 55ページ
    4.信用乗数の説明モデル
  5. 65ページ
    5.おわりに
  6. 65ページ
    参考文献

「マクロ計量モデルにおける乗数推定値の精度-確率的シミュレーションによる評価-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 730 KB)

堀 雅博,山根 誠,田邉 智之

  1. 69ページ
    1.はじめに
  2. 70ページ
    2.マクロ計量モデルにおける不確実性の源泉
  3. 73ページ
    3.乗数と確率的シミュレーション
  4. 75ページ
    4.主要乗数の標準偏差:モンテカルロ・シミュレーションの結果
  5. 81ページ
    5.おわりに
  6. 83ページ
    参考文献

「デフレ期待と実質資本コスト-ミクロデータによる90年代の設備投資関数の推計-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 752 KB)

清水谷 諭,寺井 晃

  1. 87ページ
    1.はじめに
  2. 89ページ
    2.これまでの資本コストに関する実証研究
  3. 90ページ
    3.実質資本コストの計測
  4. 98ページ
    4.設備投資関数の推計
  5. 101ページ
    5.政策的インプリケーションと今後の課題
  6. 106ページ
    参考文献

(展望論文)

「昭和恐慌をめぐる経済政策と政策思想:金解禁論争を中心として」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 853 KB)

若田部 昌澄

  1. 110ページ
    1.序論:経済政策と経済政策思想
  2. 112ページ
    2.恐慌へ前奏曲:金解禁論争
  3. 126ページ
    3.昭和恐慌:金解禁の帰結
  4. 129ページ
    4.恐慌からの脱出:金解禁論争の終結
  5. 133ページ
    5.結語:経済危機の教訓
  6. 135ページ
    参照文献

「FTPL(Fiscal Theory of Price Level)を巡る論点について」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.06 MB)

河越 正明,広瀬 哲樹

  1. 142ページ
    1.はじめに
  2. 143ページ
    2.FTPL理論の概要
  3. 150ページ
    3.FTPLの諸前提の再検討と拡張
  4. 162ページ
    4.実証分析の論点別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.0 MB)
  5. 170ページ
    5.デフレ克服についての政策的な含意
  6. 177ページ
    6.結び
  7. 178ページ
    参考文献
  8. 184ページ
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