経済分析第173号
循環型経済社会システムの計量分析モデル

平成16年3月
  • 清水 雅彦(内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官、慶應義塾大学経済学部教授)
  • 菅 幹雄(同客員研究員、東京国際大学経済学部助教授)
  • 斉藤 崇(同部外協力者、慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程)
  • 林田 雅秀(同前研究官、内閣府参事官補佐)
  • 田邉 智之(同前経済社会研究調査員、三井情報開発株式会社総合研究所経済社会研究センター研究員)
  • 中田 一良(同前研究官、内閣府参事官補佐 海外経済担当)

(要旨)

1.目的

調査研究の目的は、「循環型社会形成推進基本法」がめざす循環型社会経済システムを具体的に構想し、特に実物経済面での資源循環に係る「リサイクル・プロセス」あるいは「リサイクル・アクティビティー」を陽表的に導入した経済システムの計量分析モデルを構築することである。その上で、モデルに基づいて「リサイクル・プロセス」あるいは「リサイクル・アクティビティー」の導入条件と導入に伴う経済システムへの影響を計量的に分析したものである。

2.問題意識

本調査研究の背景にある問題意識は次のとおりである。まず、再生された部品あるいは原材料(リサイクリングマテリアル、RM)によって生産された製品とヴァージンマテリアル(VM)を用いて生産された製品の間には多くの場合においてユーザーから見た品質格差が存在しており、「RMの価格がVMの価格に比較して十分に安い」といった条件が満たされていなければ、RMの利用を促進することは困難であり、補助金や租税負担の軽減(減税)といった政策的対応によってRMとVMの相対価格体系を変化させて半ば強制的にリサイクルを促進するといった方法が有効な手段となりうる。ただし、これらの政策の実行に際して必要となる費用要素を比較しながら、適切な方法を検討しなければならないことは言うまでもない。さらには、特定部門におけるリサイクル率の変化は、経済の一般均衡体系の中で、産業相互の技術的な依存関係を通じて経済全体の価格体系および生産量に影響を与えており、さらには温室効果ガスの排出量を変化させるであろう。このような経済全体への影響をも計測した上での議論がなされなければならない。

3.分析手法

本調査研究では、鉄、ガラス、紙、アルミニウム、PETといった素材別のサブモデルを構築した。サブモデルではRMとVMの相対価格の変化に伴う、代替が描かれている。素材別のサブモデルの結果をもとにして、各素材に関するリサイクルの促進が我が国経済社会全体に与えた影響について、産業連関表を利用した実証分析を行った。具体的には、補助金等の政策によって各素材のリサイクル価格の変化と、生産にまつわるCO2排出量の変化を計測した。

4.インプリケーション

計測結果によるCO2排出量への影響は一見小さなものに見えるかもしれない。だが、本調査研究の目的は、ある特定の手段による環境負荷削減効果をさもインパクトあるように示すことではなかった。上で述べたように、本調査研究におけるモデル作成の目的は「RMとVMについて価格メカニズムが機能しうるのか」ということを検証することにあった。もしも、RMについて価格メカニズムが機能しないとすれば、我々は社会的に高い費用でリサイクルを進めなければならないか、革新的な新技術の登場を待つほかないからであり、価格メカニズムが機能しうる可能性が検証できれば、後は市場の成立に向けた社会システムの整備を進めればよいと思われるからである。


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全文の構成(PDF形式、 全5ファイル)

  1. 3ページ
    要旨別ウィンドウで開きます。(PDF形式 70 KB)
  2. 5ページ
    第1章 本調査研究の目的と分析視点
  3. 11ページ
    第2章 リサイクルと気候変動
    1. 11ページ
      第2.1節 はじめに
    2. 11ページ
      第2.2節 廃棄物処理オプションとしてのリサイクル
    3. 13ページ
      第2.3節 リサイクルによる副次的な効果
    4. 15ページ
      第2.4節 二酸化炭素以外の温室効果
    5. 16ページ
      第2.5節 まとめ
  4. 18ページ
    1. 18ページ
      第3.1節 分析枠組
    2. 19ページ
      第3.2節 サブモデル
    3. 21ページ
      第3.3節 リサイクル分析用産業連関表
    4. 23ページ
      第3.4節 産業連関モデル
    5. 27ページ
      第3.5節 サブモデルと産業連関モデルの接続
    6. 29ページ
  5. 32ページ
    1. 32ページ
      第4.1節 基本的概念
    2. 32ページ
      第4.2節 リサイクル分析用産業連関表の作成手順
  6. 38ページ
    第5章 鉄リサイクルのサブモデル
    1. 38ページ
      第5.1節 問題の所在
    2. 41ページ
      第5.2節 鉄鋼製品の種類、鉄鋼メーカーの業態と主な生産フロー
    3. 43ページ
      第5.3節 分析対象となる鋼材の種類-普通鋼形鋼-
    4. 44ページ
      第5.4節 鉄リサイクルのサブモデル
    5. 47ページ
      第5.5節 データベースの構築
    6. 49ページ
      第5.6節 パラメータ推定結果
    7. 53ページ
      第5.7節 シミュレーション
    8. 55ページ
      第5.8節 今後の展望
  7. 57ページ
    第6章 ガラスびんリサイクルのサブモデル
    1. 57ページ
      第6.1節 はじめに
    2. 57ページ
      第6.2節 ガラスびん部門のモデル
    3. 61ページ
      第6.3節 産業連関分析
    4. 68ページ
      第6.4節 まとめ
  8. 70ページ
    第7章 古紙リサイクルのサブモデル
    1. 70ページ
      第7.1節 古紙リサイクルのマテリアル・フロー
    2. 71ページ
      第7.2節 古紙リサイクルの現状
    3. 72ページ
      第7.3節 モデル
    4. 76ページ
      第7.4節 データベースの作成
    5. 77ページ
      第7.5節 パラメータ推定結果
    6. 81ページ
      第7.6節 シミュレーション
    7. 83ページ
      第7.7節 今後の展望
  9. 85ページ
    第8章 アルミニウムリサイクルのサブモデル
    1. 85ページ
      第8.1節 はじめに
    2. 86ページ
      第8.2節 モデル
    3. 89ページ
      第8.3節 シミュレーション分析
    4. 93ページ
      第8.4節 産業連関分析
    5. 101ページ
      第8.5節 まとめ
  10. 103ページ
    第9章 PET樹脂リサイクルのサブモデル
    1. 103ページ
      第9.1節 はじめに
    2. 103ページ
      第9.2節 PET樹脂の生産とその用途
    3. 110ページ
      第9.3節 モデル
    4. 112ページ
      第9.4節 理論的考察
    5. 114ページ
      第9.5節 シミュレーション分析
    6. 118ページ
      第9.6節 産業連関分析
    7. 123ページ
      第9.7節 まとめ
  11. 125ページ
  12. 134ページ
    第11章 今後の展望
  13. 136ページ
    ワークショップにおける主要コメント
  14. 図表索引
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