経済分析第175号
経済分析第175号(ジャーナル版)

平成17年3月
(論文)
長時間介護はなぜ解消しないのか?-要介護者世帯への介護サービス利用調査による検証-
清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授)
野口 晴子(東洋英和女学院大学助教授)
保育士の賃金決定要因と賃金プロファイル-ミクロデータによる検証-
清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授)
野口 晴子(東洋英和女学院大学助教授)
1990年代における男女間賃金格差縮小の要因
川口 章(同志社大学政策学部教授)
インフレターゲティングがもたらす社会厚生の実証分析
岡野 衛士(一橋大学大学院商学研究科博士後期課程)
(展望)
日本の教育経済学:実証分析の展望と課題
小塩 隆士(神戸大学大学院経済学研究科助教授)
妹尾 渉(法政大学大学院エイジング総合研究所特別研究員)
気候変動政策とポリシーミックス
諸富 徹(京都大学大学院経済学研究科助教授)
(研究ノート)
カールソン・パーキン法によるインフレ期待の計測と諸問題
堀 雅博(内閣府計量分析室企画官)
寺井 晃(東京大学大学院経済学研究科博士課程)
短期日本経済マクロ計量モデルにおけるフォワードルッキングな期待形成の導入の試み
村田 啓子(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
青木 大樹(内閣府経済社会総合研究所研究官)
(資料)
開放経済において人口変動が公的年金制度と政府財政へ与える影響について
Ralph C. Bryant(ブルッキングス研究所上席研究員)
島澤 諭抄訳(秋田大学教育文化学部助教授)

(要旨)

(論文)

長時間介護はなぜ解消しないのか?-要介護者世帯への介護サービス利用調査による検証-

本論文は内閣府が独自に実施した要介護者世帯への介護サービス利用調査によって、まず長時間介護の実態を明らかにした。その結果、主として介護を担っている介護者の介護時間は若干減少したものの、要介護者の介護に必要な介護時間に占める割合はあまり低下していないことがわかった。さらに、長時間介護世帯では、要介護者の健康状態が悪く、介護者の健康も蝕まれている可能性があるなど、物理的な時間の長さだけでなく、健康面においても介護負担が深刻である。


保育士の賃金決定要因と賃金プロファイル-ミクロデータによる検証-

本論文は、内閣府が収集した非常に豊富な保育士のミクロデータを用いて、保育士の賃金決定要因の解明を試みた。まず、保育労働市場がいわゆる二重労働市場(dual market)であるかをみるために、公立保育所と私立認可保育所の常勤保育士・非常勤保育士の賃金プロファイルを比較した。


1990年代における男女間賃金格差縮小の要因

1990年代における一般常用労働者の男女間賃金格差縮小の要因を、1990年と2000年の「賃金構造基本統計調査」の個票を用いて分析した。その結果、格差縮小に貢献した最も大きな要因は、女性の勤続の相対的延長であることが分かった。その他、賃金-勤続プロファイルのフラット化、女性の学歴向上、製造業からサービス業への労働力のシフトが女性の相対賃金の上昇に貢献した。


インフレターゲティングがもたらす社会厚生の実証分析

ニューケインジアンオープンエコノミーマクロ経済学(NKOEM)において、インフレターゲティングによる社会厚生を改善することが指摘されているが、本稿ではイギリスのデータを用いてこの指摘を実証分析した。分析にあたりNKOEMに則った小国開放経済モデルを導出し、インフレターゲティングが導入されなかった場合のイギリス経済をシミュレーションした。この結果、イギリスではインフレターゲティングによって経済厚生が改善されたことが示された。


(展望)

日本の教育経済学:実証分析の展望と課題

本稿の目的は、日本の教育についてこれまで行われてきた実証研究を、1)人的資本論と教育の収益率、2)労働市場から見た教育、3)教育成果の要因分析、4)教育の産業分析、5)教育需要の決定要因、6)教育と社会階層という6つのテーマ別に先行研究を分類し、その分析目的や手法、結論や政策的含意を比較することである。これまで多くの研究が蓄積されているが、データの制約などもあり、教育経済学における実証研究には多くの課題が残されている。


気候変動政策とポリシーミックス

本稿では、環境経済学における政策手段の選択問題と複数政策手段の組み合わせ(「ポリシー・ミックス」)の経済分析を取り扱う。その結果、気候変動政策の領域における最近のポリシー・ミックス提案は経済的厚生の損失を抑制する効果を持つこと、EUにおけるような価格規制と量的規制の同時併用は、必ずしも資源配分上の歪みをもたらさないこと、そして、環境税と組み合わされた自主協定は、「情報非対称性問題」を克服するための手段として機能する可能性があることが明らかになった。


(研究ノート)

カールソン・パーキン法によるインフレ期待の計測と諸問題

本研究ノートでは、期待インフレ率計測の試みとしてカールソン・パーキン法を取り上げ、日本の公表データに適用した結果を紹介するとともに、その過程で明らかになった問題点を指摘する。本ノートの結果を踏まえるなら、CP法は期待系列導出の積極的取組として評価できるものの、一層の改善を要する。


短期日本経済マクロ計量モデルにおけるフォワードルッキングな期待形成の導入の試み

本稿では、短期日本経済マクロ計量モデルにフォワードルッキングな期待形成を試験的に導入し、政策効果シミュレーションを行うことにより、従来のバックワードルッキングの期待形成を用いたモデルによる結果との比較を試みる。分析の結果、フォワードルッキングを含んだ期待形成を想定した場合、バックワードルッキングの期待を想定した場合に比べ、政策効果の規模や持続性が異なり、また、政策発動を事前に予見していたか否かによっても、その効果の現出に差がみられる、等の結果が得られた。


(資料)

開放経済において人口変動が公的年金制度と政府財政へ与える影響について

本稿では、出生率の低下によって引き起こされた老年従属率の上昇が内外経済へ与える影響について研究した結果、対外経済との結びつきを分析へ十分取り込んだ場合には、公的年金制度を運営し、政府債務を管理する方法いかんによっては、全く異なるマクロ的影響を有することが示された。


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全文の構成

  1. 1ページ
    目次別ウィンドウで開きます。(PDF形式 952 KB)

(論文)

「長時間介護はなぜ解消しないのか?-要介護者世帯への介護サービス利用調査による検証-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 387 MB)

清水谷 諭、野口 晴子

  1. 3ページ
    1.序論
  2. 4ページ
    2.「高齢者の介護利用状況に関するアンケート調査」の調査概要
  3. 5ページ
  4. 15ページ
    4.長時間介護をもたらす要因
  5. 22ページ
    5.長時間介護をもたらす要因の定量的検証
  6. 27ページ
    6.結論及び政策的インプリケーション
  7. 28ページ
    参考文献別ウィンドウで開きます。(PDF形式 307 MB)

「保育士の賃金決定要因と賃金プロファイル:ミクロデータによる検証」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 709 MB)

清水谷 諭、野口晴子

  1. 35ページ
    1.はじめに
  2. 37ページ
    2.データ
  3. 40ページ
    3.定式化と推計結果
  4. 42ページ
    4.経営主体別・雇用形態別の賃金プロファイルと賃金格差の要因分解
  5. 47ページ
    5.結論と政策的インプリケーション
  6. 48ページ
    参考文献

「1990年代における男女間賃金格差縮小の要因」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 697 MB)

川口 章

  1. 52ページ
    1.男女間賃金格差の実態と背景
  2. 54ページ
    2.分析枠組み
  3. 58ページ
    3.データ
  4. 60ページ
    4.結果
  5. 77ページ
    5.結論

「インフレターゲティングがもたらす社会厚生の実証分析-イギリスのケース-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 897 KB)

岡野 衛士

  1. 83ページ
    1.はじめに
  2. 85ページ
    2.モデル
  3. 91ページ
    3.実証分析別ウィンドウで開きます。(PDF形式 702 KB)
  4. 100ページ
    4.厚生分析別ウィンドウで開きます。(PDF形式 377 KB)
  5. 101ページ
    5.結論
  6. 102ページ
    参考文献

(展望)

「日本の教育経済学:実証分析の展望と課題」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 637 KB)

小塩 隆士、妹尾 渉

  1. 107ページ
    1.本稿の目的
  2. 109ページ
    2.人的資本論と教育の収益率
  3. 112ページ
    3.労働市場から見た教育
  4. 117ページ
    4.教育成果の要因分析
  5. 122ページ
    5.教育の産業分析別ウィンドウで開きます。(PDF形式 625 KB)
  6. 125ページ
    6.教育需要の決定要因
  7. 129ページ
    7.教育と社会階層
  8. 131ページ
    8.残された課題
  9. 133ページ
    参考文献

「気候変動政策とポリシー・ミックス論」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 626 KB)

諸富 徹

  1. 142ページ
    1.はじめに
  2. 143ページ
    2.政策手段の選択問題と気候変動政策
  3. 150ページ
    3.ポリシー・ミックスによる気候変動政策の構築
  4. 155ページ
    4.自主協定とポリシー・ミックス
  5. 161ページ
    5.おわりに
  6. 161ページ
    参考文献

(研究ノート)

「カールソン・パーキン法によるインフレ期待の計測と諸問題」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 566 KB)

堀 雅博、寺井 晃

  1. 170ページ
    1.はじめに
  2. 170ページ
    2.カールソン・パーキン法(CP法)と卸売物価指数への応用
  3. 174ページ
  4. 178ページ
  5. 190ページ
    5.まとめ
  6. 191ページ
    参考文献

「短期日本経済マクロ計量モデルにおけるフォワードルッキングな期待形成」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 866 KB)

村田 啓子、青木 大樹

  1. 195ページ
    1.はじめに
  2. 195ページ
    2.モデルの構造及びシミュレーションの前提
  3. 201ページ
    3.シミュレーション結果
  4. 213ページ
    4.結論および今後の課題
  5. 214ページ
    参考文献別ウィンドウで開きます。(PDF形式 391 KB)

(資料)

「開放経済において人口変動が公的年金制度と政府財政へ与える影響について」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 642 MB)

Ralph C. Bryant 翻訳 島澤 諭

  1. 225ページ
    1.はじめに
  2. 226ページ
    2.不均衡年金制度、政府債務と世代間公平
  3. 238ページ
    3.結論
  4. 240ページ
    参考文献
  5. 248ページ
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