経済分析第176号
経済分析176号(ジャーナル版)

平成17年6月
(論文)
中小企業金融円滑化策と倒産・代位弁済の相互関係-2変量固定効果モデルによる都道府県別パネル分析-
竹澤 康子(東洋大学経済学部教授)
松浦 克己(広島大学経済学部教授)
堀 雅博(内閣府計量分析室企画官)
消費税の軽減税率適用による効率と公平のトレードオフ
村澤 知宏((一橋大学経済学部卒)
湯田 道生(一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程)
岩本 康志(東京大学大学院経済学研究科教授)
財政政策の不確実性と民間消費
釣 雅雄(一橋大学経済研究所助手)
為替レートの減価とインフレ期待-70年代初頭の沖縄の教訓
清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授)
与儀達博(琉球銀行総合企画部調査役)
(展望)
日本の出生率低下の要因分析:実証研究のサーベイと政策的含意の検討
伊達 雄高(ハワイ大学博士課程)
清水谷 諭(一橋大学経済研究所助教授)
展望:日本のTFP上昇率は1990年代においてどれだけ低下したか
乾 友彦(日本大学経済学部教授)
権 赫旭(一橋大学経済研究所専任講師)
(コメントとリプライ)
コメント デフレ期待は信用乗数を低下させたか
服部 茂幸(福井県立大学経済学部助教授)
リプライ 信用乗数の決定因としての期待インフレ率
飯田 泰之(駒澤大学経済学部専任講師)
原田 泰(大和総研チーフエコノミスト)
浜田 宏一(イェール大学経済学部教授)
(調査)
スウェーデンの家族と日本の少子化対策への含意
林 伴子(内閣府経済社会総合研究所主任研究官)
(資料)
短期日本経済マクロ計量モデル(2004年版)の構造と乗数分析
村田 啓子(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
斎藤 達夫(内閣府経済社会総合研究所研究官)

(要旨)

(論文)

中小企業金融円滑化策と倒産・代位弁済の相互関係-2変量固定効果モデルによる都道府県別パネル分析-

本稿では、90年代の中小企業金融円滑化策を評価するため、対中小企業貸出と信用保証策の関係をマクロ的に概観した後、1)企業倒産率、2)信用保証残高、及び3)中小企業向貸出の関係を整理し、都道府県別データでその関係を連立推定した。その結果、わが国では90年代後半に中小企業の借入依存が異常に高まっていたこと、また、98年度以降の特別保証策は倒産を先延ばしする効果しか生まなかったこと、等が明らかになった。


消費税の軽減税率適用による効率と公平のトレードオフ

本稿では、消費税率を現在の5% から引き上げる際に、軽減税率を導入すべきか否かを、社会的厚生関数を用いたシミュレーション分析によって検討した。その結果、消費税率を10%にする改革とそれと等税収で軽減税率を導入する改革を比較した場合、功利主義的な社会的厚生関数のもとでも軽減税率を導入する政策の方がより高い社会的厚生をもたらす結果を得たが、一方で、増税規模がより大きく、不平等を回避する度合いが大きくない場合には、軽減税率を導入しない方が社会的厚生は高くなるという結果を得た。


財政政策の不確実性と民間消費

財政政策には、税や社会保障、財政政策のタイミングや効果、財政制度や政策一貫性などについて様々な不確実性が存在する。1990年代日本においては経済対策が重要であろう。本稿では、財政政策(中央政府財政の規模)の不確実性が消費に負の影響を与えることを見た。財政政策の不確実性の増大は、家計所得の不確実性を増大させ、現在の消費を減少させる。一貫性や透明性は財政政策の重要な視点である。


為替レートの減価とインフレ期待-70年代初頭の沖縄の教訓

本論文は、1970年代初めに沖縄経済が実際に経験した歴史的事実に注目し、為替レートの減価がインフレ期待に与える影響について定量的な評価を試みた。沖縄の通貨がドルであった本土復帰前にニクソンショックが起こり、その後のドル安によって沖縄経済はインフレに見舞われた。期待を取り入れたフィリップスカーブの推計結果によると、為替レートの切り下げ(約17%の減価)によるインフレ期待の上昇は5-7%程度であった。


(展望)

日本の出生率低下の要因分析:実証研究のサーベイと政策的含意の検討

日本の合計特殊出生率は2004年には1.29まで落ち込み、過去最低となった。本論文は主として経済学的観点から、日本の出生率低下の要因を分析した実証研究をサーベイし、政策的介入によって出生率回復に貢献できる分野を検証する。サーベイの結果、育児休業制度や保育施設の充実等の、出産・育児と女性の就業を両立させるための政策が特に重要であることが明らかになった。


展望:日本のTFP上昇率は1990年代においてどれだけ低下したか

本論文では、最近の研究の結果から1990年代の日本経済成長の低迷にTFP上昇率の低下が寄与した程度について明らかにするとともに、TFP計測おけるデータ作成と新古典派的な仮定によって発生する問題を整理することにより、成長会計に基づいた生産性分析の限界と今後の研究の方向性を検討した。データの質に十分配慮し、マークアップや規模の経済を考慮に入れて推計されたTFP上昇率の低下幅は限定的であることが確認された。


(調査)

スウェーデンの家族と日本の少子化対策への含意

高水準の女性労働力率と出生率が両立しているスウェーデンについて、家族政策と実際の活用状況を日本と比較可能な形で検討するため、現地調査を行った。その結果、スウェーデンでは育児休業取得期間が長く女性労働力に占める休業者の割合が高いこと、復職時も勤務時間短縮を行っていることなどが明らかになった。また、日本よりも晩婚化が進んでいるが、同棲が普及しており、法律婚に至る試行期間として機能している。


(資料)

短期日本経済マクロ計量モデル(2004年版)の構造と乗数分析

内閣府・経済社会総合研究所(旧経済企画庁・経済研究所)では、90年代以降の日本経済から推測される構造変化と最新データに基づくモデルへの要請とに鑑み、「短期日本経済マクロ計量モデル」(堀他[1998])を1998年に公表した。その後2001年10月及び、2003年11月に改訂状況を報告している。本資料は、更に改訂を重ねた2004年10月段階のモデルの状況を紹介するものである。


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全文の構成

  1. 1ページ
    目次別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.0 MB)

(論文)

「中小企業金融円滑化策と倒産・代位弁済の相互関係-2変量固定効果モデルによる都道府県別パネル分析-」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 418 KB)

竹澤 康子、松浦 克己、堀 雅博

  1. 4ページ
    1.はじめに
  2. 5ページ
  3. 11ページ
  4. 15ページ
    4.推計結果
  5. 17ページ
    5.おわりに
  6. 17ページ
    参考文献

「消費税の軽減税率適用による効率と公平のトレードオフ」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 687 KB)

村澤 知宏、湯田 道生、岩本 康志

  1. 21ページ
    1.序論
  2. 23ページ
    2.所得階級別消費者行動
  3. 27ページ
    3.間接税の費目別実効税率と所得階級別負担の計測
  4. 30ページ
  5. 32ページ
    5.税制改革のシミュレーション分析
  6. 37ページ
    6.結論
  7. 38ページ
    参考文献

「財政政策の不確実性と民間消費」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 910 KB)

釣 雅雄

  1. 44ページ
    1.はじめに
  2. 45ページ
    2.財政政策の不確実性
  3. 51ページ
    3.実証分析による検証
  4. 62ページ
    4.結論
  5. 63ページ
    参考文献

「為替レートの減価とインフレ期待-70年代初頭の沖縄の教訓」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.0 MB)

清水谷 諭、与儀 達博

  1. 68ページ
    1.はじめに
  2. 68ページ
    2.6回の通貨変更を経験した戦後沖縄の通貨史
  3. 72ページ
    3.沖縄返還の決定とニクソンショック、本土復帰
  4. 79ページ
    4.為替レート変更と期待インフレ率の変化
  5. 91ページ
    5.結論と今後の課題
  6. 92ページ
    参考文献

(展望)

「日本の出生率低下の要因分析:実証研究のサーベイと政策的含意の検討」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.0 MB)

伊達 雄高、清水谷 諭

  1. 95ページ
    1.はじめに
  2. 96ページ
    2.時系列データによる要因分析
  3. 107ページ
    3.出生率決定要因に関する日本の実証研究のサーベイ
  4. 118ページ
    4.出生率引上げのための諸政策の効果
  5. 121ページ
    5.まとめにかえて
  6. 123ページ
    参考文献

「展望:日本のTFP上昇率は1990年代においてどれだけ低下したか」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.0 MB)

乾 友彦、権 赫旭

  1. 138ページ
    1.はじめに
  2. 140ページ
    2.日本経済の1990年代におけるTFP上昇率に関する既存研究
  3. 145ページ
    3.アウトプットの計測
  4. 149ページ
    4.インプットの計測
  5. 153ページ
    5.不完全競争
  6. 159ページ
    6.規模の経済別ウィンドウで開きます。(PDF形式 592 KB)
  7. 162ページ
    7.結論
  8. 164ページ
    参考文献

(コメントとリプライ)

「コメントとリプライ」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 228 KB)

  1. 168ページ
    コメント「デフレ期待は信用乗数を低下させたか」 服部 茂幸
  2. 169ページ
    リプライ「信用乗数の決定因としての期待インフレ率」 飯田 泰之、原田 泰、浜田 宏一

(調査)

「スウェーデンの家族と日本の少子化対策への含意」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.0 MB)

林 伴子

  1. 172ページ
    1.問題意識
  2. 174ページ
    2.既存文献のサーベイ
  3. 175ページ
    3.調査の概要
  4. 176ページ
    4.調査結果の分析と考察
  5. 199ページ
    5.今後の研究課題
  6. 201ページ
    引用文献

(資料)

「短期日本経済マクロ計量モデル(2004年版)の構造と乗数分析」別ウィンドウで開きます。(PDF形式 1.06 MB)

村田 啓子、斎藤 達夫

  1. 205ページ
    1.『短期日本経済マクロ計量モデル』の基本構造
  2. 206ページ
    2.モデルの動学的パフォーマンス
  3. 227ページ
    3.残された課題
  4. 228ページ
    主要参考文献
  5. 229ページ
    研究所でこれまでに出された日本モデル関連刊行物
  6. 230ページ
    付属資料別ウィンドウで開きます。(PDF形式 396 KB)
  7. 272ページ

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