経済分析第190号
経済分析第190号 (ジャーナル版)

平成28年1月
(論文)
大学4年生の正社員内定要因に関する実証分析
荒木 宏子(近畿大学経済学部専任講師)
安田 宏樹(東京経済大学経済学部専任講師)
危険回避的な人ほど早く結婚するのか、それとも遅く結婚するのか
佐藤 一磨(明海大学経済学部専任講師)
定住外国人の子どもの学習時間についての実証分析
中室 牧子(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
石田 賢示(東京大学社会科学研究所助教)
竹中 歩(Research Officer, Centre on Migration, Policy and Society, University of Oxford)
乾 友彦(学習院大学国際社会学部開設準備室教授)
(資料)
「短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)」の構造と乗数分析
浜田 浩児(内閣府経済社会総合研究所研究官)
堀 雅博(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
花垣 貴司(前内閣府経済社会総合研究所研究官)
横山 瑠璃子(前内閣府経済社会総合研究所景気統計部事務官)
亀田 泰佑(内閣府経済社会総合研究所研究官)
岩本 光一郎(内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
「短期日本経済マクロ計量モデル」の位置づけと役割
岩本 光一郎(内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
花垣 貴司(前内閣府経済社会総合研究所研究官)
堀 雅博(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
『家計調査』個票をベースとした世帯年間消費支出額の推計
—推計手順と例示的図表によるデータ紹介—
岩本 光一郎(内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
菅 史彦(内閣府経済社会総合研究所研究官)
新関 剛史(大阪大学大学院国際公共政策研究科助教、内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
濱秋 純哉(法政大学経済学部准教授、内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
堀 雅博(内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官)
村田 啓子(首都大学東京大学院社会学研究科教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)

経済社会総合研究所の概要と実績


(要旨)

(論文)

大学4年生の正社員内定要因に関する実証分析

近畿大学経済学部専任講師/荒木 宏子

東京経済大学経済学部専任講師/安田 宏樹

本稿は、大学4年生の正社員内定者の特徴を明らかにし、効果的な就職支援策の在り方について考察する。分析の主たる仮説として、正社員内定を決定づける要因が、学生のジョブ・サーチ活動そのもの(活動開始時期や応募先の選定基準)にあるのか、あるいは学力や人的資本等個人の特性にあるのかをミクロデータを用いて検証を行った。推計に際しては、大学の属性(文系理系、偏差値レベル、国公私立)等によって内定未獲得者の特性が異なる可能性に配慮し、サンプルを文系・理系学部別、大学区分、男女別に分け、グループごとの内定獲得要因を検証した。

分析の結果、正社員内定獲得要因は文系理系、大学区分によって大きく異なることが確認された。文系学部においては就職活動の開始時期の適切な誘導や、文系私立中高位及び国公立大学、理系私立高位校においては就職応募先の選定についてのアドバイス、さらに、文系私立低位校、公立大学においては学力促進など、大学による直接支援策に一定の効果が期待できる可能性が示唆された。一方で、理系学生については、文系に比べ、大学による支援の期待できる要素が正社員内定に及ぼす影響は総じて限定的であった。さらに、理系学生については、アルバイトなどの課外活動への熱心な取り組みが正社員内定に悪影響を及ぼす傾向も見出された。

分析を通し、大学生の就業支援策を講じる際には、それぞれの特性に適した政策立案が重要であるとの考察を得た。

JEL Classification Number: J24、I21、J20
Key Words: 内定要因、ジョブ・サーチ活動、文系理系比較


危険回避的な人ほど早く結婚するのか、それとも遅く結婚するのか

明海大学経済学部専任講師/佐藤 一磨

本稿の目的は、『慶應義塾家計パネル調査』を用い、危険回避度が結婚のタイミングに及ぼす影響を検証することである。危険回避度が喫煙、飲酒等の行動に及ぼす影響については国内、海外で実証分析の蓄積が進んでいるが、結婚の意思決定に及ぼす影響については国内ではまだ研究例が少ない。結婚相手を探すメイトサーチモデルを理論的背景としたSchmidt(2008)とSpivey(2010)の海外の分析の結果、危険回避的であるほど結婚のタイミングが早くなることが明らかになっているが、我が国ではどのような結果になるのだろうか。この点を明らかにするために、本稿では危険回避度が結婚のタイミングに及ぼす影響を分析した。分析の結果、次の2点が明らかになった。

1点目は、観察できない個人間の異質性を考慮しても、男女とも危険回避的であるほど結婚のタイミングが早くなることがわかった。2点目は、Cox’s Proportional Hazardモデルを用いたシミュレーションや40歳、50歳時点での婚姻状態に関する分析の結果、男女とも危険回避度が結婚のタイミングだけでなく、最終的な有配偶割合にも影響を及ぼしていることがわかった。

JEL Classification Number: J11,J12,J13
Key Words: 危険回避度、結婚、Cox’s Proportional Hazardモデル


定住外国人の子どもの学習時間についての実証分析

慶應義塾大学総合政策学部准教授/中室 牧子

東京大学社会科学研究所助教/石田 賢示

Research Officer, Centre on Migration, Policy and Society, University of Oxford/竹中 歩

学習院大学国際社会学部開設準備室教授/乾 友彦

これまでの外国籍児童の教育に関する分析は、いずれも一部外国人集住地域の調査客体を対象とした定性的な調査に基づいているうえ、こうした分析は、比較的滞日年数が少ない子どもらを対象にしていることが多かった。一方、近年、定住外国人が増加する中で、定住志向の強い外国人の子らが教育面でどのような問題を抱えているかを把握することは重要である。本研究では、親の国籍以外にも、親の社会階層や社会ネットワークなどが、日本で生まれ育った定住外国人の子どもらの小学校時点における学習資本形成に与える影響を明らかにするため、21世紀出生児縦断調査の個票データを用いた実証分析を行った。その結果、最小二乗法推定では、親の国籍をコントロールしてもなお、親のかかわりかたや社会ネットワークが子どもの学習資本形成に影響していることが明らかになったが、時間を通じて一定の観察不可能な要因をコントロールするため、固定効果推定を行うと、親のかかわりかたや社会ネットワークは統計的には有意でなくなることが示された。しかしこうした学習資本形成のメカニズムは、必ずしも外国人に特有なものではなく、日本人のそれとは変わらないことも示された。

JEL Classification Number: I24, J15
Key Words: 定住外国人の子ども、学習時間、固定効果モデル


(資 料)

「短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)」の構造と乗数分析

内閣府経済社会総合研究所研究官/浜田 浩児

内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官/堀 雅博

前内閣府経済社会総合研究所研究官/花垣 貴司

前内閣府経済社会総合研究所景気統計部事務官/横山 瑠璃子

内閣府経済社会総合研究所研究官/亀田 泰佑

内閣府経済社会総合研究所客員研究員/岩本 光一郎

「短期日本経済マクロ計量モデル」は、伝統的なIS-LM-BP型の枠組みを基本としつつ、モデルの長期的な動学特性を保証する共和分関係や誤差修正メカニズム等、近年の計量経済学の発展をも取り入れた、推定パラメータ型の中規模計量モデルである。内閣府経済社会総合研究所では、1998年の第一次版公表以来、その改訂・公表を継続しており、今回の2015年版(パラメータ推計には2012年迄の四半期マクロ時系列データを活用)はその第9次モデルに相当する。

主な分析結果を幾つか紹介すると、公共投資(実質公的固定資本形成)が実質GDPに与える影響(いわゆる乗数)は、一年目で1.14程度となった。一方、減税は、その一部が貯蓄に回ってしまうことから、同じGDP1%相当の施策でも、その影響は公共投資の場合に比べて小さくなる。短期金利の1%の引き上げは、実質GDPを0.32%程押し下げる。

なお、本モデルは「価格調整を伴うケインジアン型」の短期モデルとして構築されており、そのモデル体系では表現しきれていない中長期の生産性の変化などから生じる効果はシミュレーション結果には含まれていない点に留意する必要がある。

JEL Classification Number: C5, E17
Key Words: マクロ計量モデル、乗数シミュレーション


「短期日本経済マクロ計量モデル」の位置づけと役割

内閣府経済社会総合研究所客員研究員/岩本 光一郎

前内閣府経済社会総合研究所研究官/花垣 貴司

内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官/堀 雅博

Lucas(1976)やSims(1980)に代表されるマクロ計量モデル「批判」以降、DSGEモデルやVARモデル等が伝統的なマクロ計量モデルの代替手段として開発され、広く活用されるようになっている。しかし、これらの代替モデルを政策業務で活用する場合、解決を要する課題が未だ多く残されていることも事実だろう。内閣府経済社会総合研究所では、こうした現状、及び近年各国の政府機関や中央銀行等に広まっている”Suite of Models”という概念を踏まえ、DSGE型、VAR型及び伝統的マクロ計量モデルを並行して開発・活用している。本稿では、マクロ計量モデル「批判」を概観した上で、DSGEモデル、VARモデルの特徴と実務上の限界を整理し、伝統的マクロ計量モデルの一つである「短期日本経済マクロ計量モデル」の位置づけと役割を論じた。

JEL Classification Number: C5, E17
Key Words: マクロ計量モデル、DSGE(動学的確率的一般均衡) モデル、VAR(ベクトル自己回帰) モデル、Suite of Models


『家計調査』個票をベースとした世帯年間消費支出額の推計
—推計手順と例示的図表によるデータ紹介—

内閣府経済社会総合研究所客員研究員/岩本 光一郎

内閣府経済社会総合研究所研究官/菅 史彦

大阪大学大学院国際公共政策研究科助教、内閣府経済社会総合研究所客員研究員/新関 剛史

法政大学経済学部准教授、内閣府経済社会総合研究所客員研究員/濱秋 純哉

内閣府経済社会総合研究所上席主任研究官/堀 雅博

首都大学東京大学院社会学研究科教授、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官/村田 啓子

経済の自由化・グローバル化は経済・社会構造の急激な変化を引き起こしており、停滞の長期化の下で「格差」が日本の現状を理解する際の焦点の一つとして注目されている。本稿では、そうした議論に基礎資料を提供すべく、我々が整備(推計)を進めてきた我が国世帯の世帯年間消費支出額に関するデータセットについて、その推計の概略を示すとともに、推計データが描き出した我が国世帯の消費行動の姿の一端を紹介する。

『家計調査』個票をパネル化し、帰属家賃調整、季節性調整、調査疲れ調整、抽出率調整を加えて推計した我が国世帯の年間消費支出額データからは、1世帯当たり消費は90年代前半から緩やかに減少して見えるが、これには世帯内人員数の減少が影響しており、等価消費は2000年代に入りほぼ横ばい状態にあること、2世帯消費のバラつきについては、総消費ベースだと概ね横ばい状況だが、非耐久財に関する等価消費について、2000年代初頭まで拡大傾向が見られたこと、3ライフステージを通じた平均消費経路はコホートによらず安定的な(50歳台ピークの)こぶ型であること、4世帯間のバラつきは世帯主年齢が高まる程大きくなる傾向が存在すること、5年齢別の貯蓄率パターンはコホート毎に変化していること等が読み取れた。

JEL Classification Number: D12, D30, E21
Key Words: 家計調査、個票、世帯消費支出、所得・支出分布、日本


本号は、政府刊行物センター、官報販売所等別ウィンドウで開きます。にて刊行しております。

全文の構成

(論文)

大学4年生の正社員内定要因に関する実証分析別ウィンドウで開きます。(PDF形式 867 KB)

荒木 宏子・安田 宏樹

  1. 3ページ
    1.はじめに
  2. 4ページ
    2.先行研究と本稿の分析
  3. 7ページ
    3.データと分析方法
  4. 11ページ
    4.分析結果;正社員内定に関するプロビット分析
  5. 20ページ
    5.おわりに
  6. 22ページ
    参考文献

危険回避的な人ほど早く結婚するのか、それとも遅く結婚するのか別ウィンドウで開きます。(PDF形式 861 KB)

佐藤 一磨

  1. 27ページ
    1.問題意識
  2. 28ページ
    2.先行研究
  3. 30ページ
    3.データ
  4. 31ページ
    4.推計手法
  5. 35ページ
    5.推計結果
  6. 41ページ
    6.結論
  7. 43ページ
    補論:危険回避度と結婚の間の逆の因果関係の検証について
  8. 44ページ
    参考文献

定住外国人の子どもの学習時間についての実証分析別ウィンドウで開きます。(PDF形式 843 KB)

中室 牧子・石田 賢示・竹中 歩・乾 友彦

  1. 49ページ
    1.はじめに
  2. 50ページ
    2.移民第二世代の教育「問題」
  3. 52ページ
    3.教育達成過程に影響を与える要因
  4. 53ページ
    4.分析のフレームワーク
  5. 54ページ
    5.データ
  6. 61ページ
    6.推定結果
  7. 65ページ
    7.結論
  8. 66ページ
    参考文献

(資料)

「短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)」の構造と乗数分析別ウィンドウで開きます。(PDF形式 753 KB)

浜田 浩児・堀 雅博・花垣 貴司・横山 瑠璃子・亀田 泰佑・岩本 光一郎

  1. 71ページ
    1.短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)の概要
  2. 75ページ
    2.主要乗数シミュレーションの結果
  3. 83ページ
    参考文献

「短期日本経済マクロ計量モデル」の位置づけと役割別ウィンドウで開きます。(PDF形式 669 KB)

岩本 光一郎・花垣 貴司・堀 雅博

  1. 87ページ
    1.はじめに
  2. 87ページ
    2.マクロ計量モデル「批判」
  3. 88ページ
    3.DSGEモデル、VARモデルの特徴とその限界
  4. 89ページ
    4.「短期日本経済マクロ計量モデル」の位置づけと役割
  5. 91ページ
    5.おわりに
  6. 92ページ
    参考文献

『家計調査』個票をベースとした世帯年間消費支出額の推計
—推計手順とデータ紹介—別ウィンドウで開きます。
(PDF形式 1.65 MB)

岩本 光一郎・菅 史彦・新関 剛史・濱秋 純哉・堀 雅博・村田 啓子

  1. 95ページ
    1.はじめに
  2. 98ページ
    2.推計方法
  3. 110ページ
    3.推計データが描き出す世帯年間消費支出額の姿
  4. 120ページ
    4.おわりに
  5. 121ページ
    参考文献
  6. 123ページ
    補論1 帰属家賃(家賃関数)の推計
  7. 127ページ
    補論2 所得(収入)の季節性
  1. 129ページ
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