ERI Discussion Paper Series No.69
外資導入と経済発展:アジア諸国の経験と現代ベトナム

October 1996
  • トラン・ヴァン・トウ(桜美林大学)

(要旨)

ベトナムは、対外債務はすでに高い水準に達したにも拘らず、これからの経済発展のために、引き続き外国資本を導入していかなければならないのである。しかし、大量に流入してくる外国資金を効率に吸収できるかどうかはベトナムにとって現在の最大の関心事である。本論文は韓国とタイの経験を通じてベトナムが累積債務を回避して経済発展のために外国資本をどう利用すれば良いかを考察する。

韓国は第1次5カ年計画(1962-66)以降、投資率(GDPに対する投資の割合)を着実に上昇させ、高い経済成長を実現してきたが、その過程において外国資本が投資の重要な部分をファイナンスしてきた。国内投資に占める外国資本の割合は60年代前半に50%以上、その後半に35-40%に達した。直接投資の導入に消極的であったので、外資は円借款や商業借款が中心であった。このため、80年代半ばに韓国の対外債務の規模は世界で4番目にランクしたし、その対外債務がピークに達した85年にGDPに対する比率として56%も記録したのである。しかし韓国は80年代後半以降、対外債務を着実に返済するだけでなく、外国に資本を供給する立場に転じたのである。

タイの場合は直接投資の重視したので、韓国ほど対外債務の問題が重くなかったが、国際金融機関からの融資、円借款などの外資も積極的に導入した。その結果、タイも80年代半ばに深刻な債務問題に直面した。しかし、80年代後半以降、債務問題の段階的解決に成功したのである。

韓国もタイも成功した要因として、第1に、外資導入による発展過程において国内資金の調達にも努力して(貯蓄率を上昇させて)、投資資金の需要が増加した中で外国資金への依存度を低下させてきたことである。第2に、工業部門の輸出産業に重点的に投資し、工業品輸出を促進してきたことである。これにより工業化が効率的進んでいくだけででなく、対外債務の返済も可能になったのである。第3に、投資環境の整備で民間部門の発展が促進され、経済全体が効率的に発展し外国資本の効率的利用に繋がったのである。自由競争、規制緩和、投資の奨励などで民間部門の活力が刺激されることが重要である。

これらの点はベトナムにとって示唆的である。つまり、ベトナムにとっての課題は国内資本をいかに動員できるか、民間企業の投資をどう促進するか、また工業品輸出をどう拡大させるかである。金融機関の普及、その活動の効率化は貯蓄率を高めると共に潜在的投資家への資金供給も増加していくのである。将来深刻な累積債務に陥らないために借款などの外国資金はその使用がインフラ建設と工業部門の輸出産業に限られていることが望ましい。輸出産業の育成、発展を支援・促進させる各種の政策が必要であるが、その方向に外国直接投資を誘導することも重要である。


全文の構成

  1. 1ページ
    I. Introduction別ウィンドウで開きます。(PDF形式 318 KB)
  2. 1ページ
    II. The Resource Gap and The Channels of Foreign Resource Inflows
  3. 3ページ
    III. Foreign Resources and Industrialization in Korea
  4. 6ページ
    IV. Foreign Capital and Industrialization in Thailand
  5. 9ページ
    V. Implications for Vietnam
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