ERI Discussion Paper Series No.90
通貨需要とマネーサプライ

November 1999
  • 杉原 茂(経済企画庁経済研究所主任研究官)
  • 三平 剛(同研究官)

(要旨)

本稿は、近年のマネーサプライの動向を、通貨需要の面から実証的に整理したものである。その際、M2+CDに加え、現金通貨,預金通貨,準通貨の通貨種類ごとにも、その需要の安定性を分析している。最近の量的金融政策に関する関心の高まりを鑑みれば、これらの通貨需要の安定性は、中央銀行によるマネーサプライの制御可能性、およびマネーサプライをコントロールした場合の実体経済への効果という観点から重要である。分析結果からは、マネーサプライをターゲットとする政策の実施の困難性と効果の不確実性が示唆される。

第1節では、マネーサプライと実体経済との長期的な関係を、共和分検定により推定している。M2+CDには実体経済との間に長期的に安定した関係が見出されるが、短期的にはそうした長期均衡から乖離することも示される。一方、通貨種類ごとに見ると、準通貨を除いて実体経済との長期安定した関係は見られない。M2+CD全体としては実体経済との長期的関係に規定されつつ、その内部では長期要因から離れて通貨種類間の代替が生じるものと考えられる。

第2節では、前節で得た長期的関係を踏まえ、誤差修正モデルによる短期の通貨需要関数を推定し、長期均衡からの短期的乖離や通貨種類間の代替の要因を分析するとともに、その安定性を検証している。M2+CDには、実体経済との長期的関係と整合的な短期の需要パターンが見出されるが、それは必ずしも安定しているわけではないことも示唆される。M2+CDに対する需要が安定していなければ、マネーサプライの制御が困難となるだけでなく、マネーサプライをコントロールした場合の実体経済への効果も不確実なものとなる。また、通貨種類ごとには、現金通貨に比較的安定した短期の需要パターンが見られるものの、預金通貨および準通貨に対する需要には不安定性が示唆され、長期で見た場合と対称的な結果となっている。現金と預金・準通貨の間の代替関係が不安定性であるのならば、信用乗数の予期せぬ変動により、中央銀行によるマネーサプライ制御は困難となる。

なお、(補論)において、最近関心の高い「流動性の罠」現象につき、日本の現状がそれに妥当するかどうかについて、実証分析を試みている。


全文の構成(PDF形式、 全2ファイル)

  1. 要旨別ウィンドウで開きます。(PDF形式 257 KB)
  2. 1ページ
    はじめに
  3. 2ページ
    第1節 マネーと経済活動の長期的関係
  4. 10ページ
    第2節 通貨需要関数トの動向とマネーサプライ
  5. 24ページ
    総括別ウィンドウで開きます。(PDF形式 280 KB)
  6. 25ページ
    (補論)歴史的低金利と通貨需要-「流動性の罠」の現実妥当性について-
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