ESRI Discussion Paper Series No.10
リストラ中高年の行方

2002年2月
  • 玄田 有史(内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官、学習院大学教授)

要旨

1.背景

「リストラにあった中高年」は、そのイメージで議論されることも多く、特に2000年以降に急増した中高年の離転職の実情は意外なほど知られていない。また、「リストラ」という言葉が日常用語となる一方で、リストラの結果としてどのような中高年の離転職が発生しているのか、その全体像の理解が大量人員整理の報道が相次ぐ2001年においても必ずしも共有されていない。

2.目的及び調査手法

2000年の「雇用動向調査」の特別集計や人員削減を実施した企業および再就職支援会社へのインタビューに基づきながら、会社都合で転職する45歳以上60歳未満の人々の離転職についてできる限りの事実整理を行い、リストラ中高年の再就職の実態把握を行う。

3.調査結果の主要なポイント

(1)リストラ実施企業の急増

  • a. 企業規模別では、特に、大企業で顕著であり、過去2年間に「希望退職の募集や解雇」を実施した企業の割合は、94年の8.5%から2000年の23.8%に増加。また、大企業1社当たりの平均希望退職・解雇者数も130.3人から191.9人に増加。
  • b. 産業別には建設業でリストラ実施割合が8.4%から23.1%に増加。また、金融業では1社当たり平均人員削減数が5.9人から70.9人に拡大。

(2)リストラされた中高年の再就職における出向のウェイトの低下(図1

  • a. 会社主導による離職に占める出向の割合は、多くの職種で96年時点の9割前後から、2000年には3~6割程度にまで落ちている。例えば、販売職(90.6%から28.7%へ)、事務職(90.9%から63%へ)、専門・技術職(93.1%から73.1%へ)。
  • b. 出向の雇用調整機能の低下は、1)受け入れ先となる中小企業の業績の悪化、2)グループ企業や系列企業との長期的な取引関係の弱まり等によるものである。これまで、中高年の雇用を確保する上で一定の役割を果たしてきた出向機能に今後大幅な回復を期待することは難しく、リストラ中高年自身で転職先を見つけなくてはならない割合が高まるだろう。

(3)業種、職種によって大きく異なるリストラ中高年の転職先(表1

  • a. 業種別に見ると、建設業、金融保険業では同じ業種に止まる割合が高いが、他の業種では転職によって業種を変えている場合が多い。建設業(離職後87.9%の人が同じ業種に転職)や金融保険業(同64.2%)に対し、製造業(同38.3%)やサービス業(同34.7%)等となっている。
  • b. 職種別には建設業で多い生産工程・技能職の職業転換がほとんど進んでいない(87.1%の人が同じ職種に転職)。一方、運輸・通信職(おそらくタクシー運転業務が多いと推測される)やサービス職は他職種からの重要な転職先になっている。また、専門・技術職で同じ職業についている人は28.2%に留まっており、技術革新の進展に伴い、それまで蓄積してきたスキルを生かすことが困難化していることが伺える。

(4)転職後の職業や企業規模等で左右される賃金下落の程度(表2

リストラ中高年の2割の人は、転職によって3割以上の賃金下落を経験しているが、1)賃金が3割以上下落する確率は、転職に伴う職業変更や企業規模の低下がある場合に高くなる、2)転職までの求職期間が1ヶ月から6ヶ月の場合に比べて、1ヶ月未満や逆に6ヶ月以上の場合に、大きな賃金下落を招きやすい。すなわち、(1ヶ月以上)半年以内に同一職種に入職する場合に、リストラ中高年の賃金下落の確率が小さくなる。

(5)比較的有利な条件で転職を実現するには入職経路が非常に重要(図2表3

リストラ中高年が、離職後半年以内に同一職種に入職する確率は、1)前の会社の紹介・斡旋による場合が85%、2)知人・友人を含む縁故の場合が57%、3)学校の場合が57%、4)安定所の場合が41%、5)民間職業紹介所の場合が38%、6)広告の場合が32%等と推計される(自己都合等の場合にはかなり違う結果も見られるので、その点については本文を参照されたい)。

すなわち、リストラ中高年が不利益の少ない条件でスムーズに転職する上で、前の会社の紹介・斡旋や縁故に象徴される人的ネットワークが格段に大きな効果を持っており、広告や紹介所などを通じた個人の力だけで求職活動する場合には、短期間に同一職種に入職することが困難な場合が多い。

4.結び

リストラ実施企業が急増している中で、リストラされた中高年の再就職を巡る環境は以上のように厳しくなってきている。本人の自助努力のみでは円滑な再就職が困難な場合も多く政策的な支援が必要であるが、一方でリストラ中高年の再就職に関する実態把握は不十分である。効果的な支援を行うためには、送り出し企業による再就職支援の内容とその有効性、教育訓練給付金制度の利用状況と再就職支援策としての効果の把握、適切な人的ネットワーク形成の重要性等について多方面からその実態把握に努める必要がある。

図1.大企業男45~59歳正社員について会社主導による離婚に占める出向の割合(パーセント)
表1.会社都合により離職した45~59歳男性正社員に関する転職前後の産業属性
表1(続き).会社都合により離職した45~59歳男性正社員に関する転職前後の産業属性
表2.転職によって賃金が3割以上下落する確率(男性正社員の転職について)
図2.離職後6か月以内に転職前と同一の職業に就業する確率についての予測値
表3.同一の職業に就職する確率と、半年以内に転職する確率のバイプロビットモデルによる同時ロバスト推計結果(会社都合で離職した45~59歳男性)

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全文の構成

  1. 3ページ
    Abstract
  2. 4ページ
    1.「リストラ報道」の背後で
  3. 5ページ
    2.増加するリストラ
  4. 6ページ
    3.経営上の都合による離職と出向
  5. 8ページ
    4.出向飽和の背景
  6. 9ページ
    5.リストラ中高年の転職動向
  7. 10ページ
    6.転職による賃金下落
  8. 12ページ
    7.入職経路の重要性
  9. 15ページ
    8.むすびにかえて
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