ESRI Discussion Paper Series No.12
地域振興券の消費刺激効果

2002年4月
雅博
(内閣府経済社会総合研究所)
シェー=チャンタイ
(プリンストン大学)
村田啓子
(元内閣府)
清水谷
(内閣府)

要旨

1.趣旨、問題設定

長引く日本経済の低迷を理解する上で、需要の最大構成項目である家計消費の分析は不可欠である。特に90年代には、累次に渡る税制変更や地域振興券施策等、家計の消費喚起を意図した多くの政策が立案・実施された。しかしながら、こうした施策が実際にどの程度の消費拡大効果を有したかについては、実証分析もほとんど行われておらず、未だ確たる定説が存在しないことから、実証分析の蓄積が喫緊の課題となっている。

本研究は、こうした問題意識に立って、昨年来、ミクロ・データを活用した各種政策効果の実証研究を進めているものである。こうした政策効果分析は、従来、集計マクロ・データ(SNA)を用いて行われてきたが、近年における計量経済学の進歩の結果、ミクロの経済主体の最適化行動から導かれる理論モデルを集計データで分析することの限界が明らかになった。本研究ではこうした進展を踏まえ、家計調査の個票データを用いつつ、90年代の諸施策の政策(1地域振興券策、2一時減税、3恒久減税、4消費税、5公共投資政策、6低金利政策等)が消費行動に与えた影響を実証的に解明するものである。

今回、公表するESRI Discussion Paper Series No.12号「地域振興券の消費刺激効果」は、そうした研究の第一弾として、99年に実施された地域振興券施策の消費刺激効果を実証的に評価するものである。

2.目的及び分析手法

本ディスカッション・ペーパーでは、将来の政策策定時に有効足り得る政策効果の実証的検証例を提供する観点に立ち、1家計調査の個票データ及び2商業統計の県別データを活用して、99年春に実施された「地域振興券」施策の消費刺激効果を分析する。

1の世帯別ミクロ・データ(個票データ)を用いた分析では、地域振興券が15歳以下の子供向けに(一人当たり2万円)配布された事実に注目し、地域振興券の受領額に応じて世帯の消費パターンに変化が見られるかを検証している。

2の県別マクロ分析では、原則として配布自治体内での使用が予定されていた振興券の特性に注目し、県別の振興券受給額のバラツキが同時期の県別の商業売上に与える影響を分析している。

3.分析結果の主要なポイント

(1)家計調査の個票データに基づく結果

  • 個票データに基づく推計結果を見ると、地域振興券はその配布時点において半耐久財、とりわけアパレル品等、を中心に消費を拡大させ、振興券配布月内で評価した限界消費性向は0.2~0.3程度であった。
  • 一方、地域振興券の消費刺激効果は時間とともに減衰し、最終的な限界消費性向は0.1に低下している。これは、一旦拡大した半耐久財の消費が異時間代替の形でその後若干減少したことによる。
  • 流動性制約の有無による効果の差異を見るため、保有資産・所得比率(貯蓄動向調査とのマッチングにより作成)別に行った推計では、保有資産が少ない世帯ほど振興券受領に応じ消費を拡大する傾向が見られた。

(2)商業統計の県別データに基づく結果

  • 県別データに基づく推定結果でも、地域振興券施策は有意な消費刺激効果を示しているが、その効果の大きさはミクロ・データの場合と同様、限界消費性向にして0.1程度となっている。

4.結び

景気の低迷が続く中で、家計消費を如何にして上向かせるかは喫緊の政策課題である。地域振興券施策は、そうした消費喚起の一つの試みであったといえよう。

本分析を見る限り、振興券策は有意な消費刺激効果を有したものの、その効果は時間とともに減衰していった。

研究所では、今後も引き続き90年代の諸政策が消費行動に与えた影響を検証し、政策策定に有益な客観的実証分析の蓄積に努めたい。

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Did the Shopping Coupon Program Stimulate Consumption? Evidence from Japanese Micro Data別ウィンドウで開きます。(PDF形式 175 KB)

全文の構成

  1. 2ページ
    Abstract
  2. 3ページ
    1.Introduction
  3. 6ページ
    2.The "Shopping Coupon" Programs
  4. 8ページ
    3.Data
  5. 11ページ
    4.Impact of Coupons across Families
  6. 17ページ
    5.Impact of Coupons Across Prefectures
  7. 20ページ
    6.Conclusion
  8. 22ページ
    Table and Figure
  9. 34ページ
    Appendix: Shopping coupons in the Family Income Expenditure Survey
    1. 34ページ
      1.Introduction
    2. 34ページ
      2.Data
    3. 35ページ
      3.The effects of "Shopping Coupon"on the gift data distribution
    4. 38ページ
      4.The Maximum-Likelihood (ML) estimates of the coupon delivery
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