ESRI Discussion Paper Series No.13
GDP四半期速報の推計手法に関する統計学的一考察

2002年5月
  • 大守 隆(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)

要旨

I.趣旨、問題設定

我が国の国民経済計算においては、主に需要面から推計した国内総生産推計値が四半期速報として公表されてきた。いわゆるQEと呼ばれるものである。これに対しては、内外から、1)数値の動きが経済の実勢の動きを反映していない、2)事後的な改訂幅が大きい、3)公表が遅い、4)推計手法の開示が不十分である、などの批判が寄せられている。

こうした批判に対応するため新しい推計法の検討を進めているが、その一環として、分割手法と延長手法の組み合わせの再検討が必要となった。

II.目的及び分析手法

四半期速報の基本的性格は、確報(遅いが精度の高い年次系列から作成)を、関連の四半期系列(精度はより低いが、四半期で利用でき、速報性もあるもの)を用いて補外することである。したがって、四半期速報の推計作業は、確報として年次系列が得られた場合に、それをどう四半期分割するか(分割作業)と、分割された四半期系列を四半期統計の動きを使ってどう伸ばしていくか(補外作業)の組み合わせとなるが、その組み合わせについて、統計学的な観点も踏まえ適切な選択を行うことが必要となる。本研究はこのような観点からの検討を行ったものである。

先行研究との差は、以下のとおりである。

  1. 年次統計の観測誤差も明示的に勘案し、それと四半期統計の誤差の相対的関係が各手法のパーフォーマンスに与える影響を分析した。
  2. 推計法のもつ望ましい性格として、推計値の水準についての誤差を小さくすることだけでなく、前期比や前年同期比の正確さという基準を勘案した。また、事後的な改訂率の小ささという基準も導入した。
  3. モンテカルロ法(多数の乱数を発生させる分析方法)による数値実験によって分析した。
  4. 一般論だけでなく、日本のGDP四半期速報の推計環境に即した検討を行った。

III.分析結果の主要なポイント

  1. どの推計方法を選択するかによってパーフォーマンスにはかなり差が出る。
  2. どの推計手法が望ましいかは評価基準に依存する。
  3. 平行移動方式という比較的単純な分割方式が、系列の特性や評価基準によらずパーフォーマンスが比較的良好であった。
  4. 前年同期比という延長方式は(延長方式に無関係な平行移動方式を除き)候補になりにくい。
  5. 結果は先行研究からは予想しにくいものであった。これは、本分析では速報値を、前期、前年同期、前年平均のどれかをベースに補外するという想定を置いていることと、前述のように前期比や前年同期比の正確さ、改定率の小ささなどの観点を評価基準に導入したためと考えられる。
  6. より数学的・機械的な分割・補外手法についても定性的な検討を行ったが、我が国のGDP速報をとりまく現在の環境に照らすと適用に際しては解決すべき問題も残っている。

IV.結び

GDP速報の推計精度を改善していくことは、その早期化と並んで重要な課題であるので、本研究で分析対象とした、分割・補外手法の検討を続けていくことが必要と思われる。同時に、本研究の結果は、1)四半期統計と年次統計の乖離の縮小を図っていくこと、2)基礎統計の統計的性格の開示を進めたり精度の分析を行っていくこと、3)統計的・数学的な分割・補外手法の改善や応用方法を引き続き検討していくこと、などの重要性を示唆しているのでこの方向での努力も続けて行きたい。

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全文の構成

  1. 1ページ
    Abstract
  2. 1ページ
    1.問題意識
  3. 2ページ
    2.分析の前提
  4. 8ページ
    3.分割手法
  5. 14ページ
    4.補外手法
  6. 15ページ
    5.分析の方法と対象
  7. 18ページ
    6.評価の基準と評価項目
  8. 19ページ
    7.手法の性格
  9. 21ページ
    8.総合評価と選択
  10. 26ページ
    9.四半期統計に年度断層がある場合
  11. 29ページ
    10.結論
  12. 32ページ
    付録1 LS応用法の解説
  13. 33ページ
    付録2 計算結果の詳細
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