ESRI Discussion Paper Series No.16
我が国の経済協力がアジア経済の発展に与える効果

2002年10月
川崎研一
(内閣府経済社会総合研究所)

要旨

1.背景

経済活動が長期間に渡って低迷し、財政問題が一層深刻となる中、発展途上国に対する政府開発援助(ODA: Official Development Assistance)の在り方が疑問視されている。ODAの供与に当たっては、これまで以上に選択的な供与が求められている。

2.目的及び分析手法

本論文の目的は、我が国のODAの動向を概観した上で、そのアジア経済に与える効果を定量的に評価することである。実際の円借款供与(1996-2000年の5年間の平均、国によって200-1,000億円程度)による資本形成の効果と我が国が現行の貿易保護(国による輸出品の相違により、関税率相当換算で2-13%程度の幅がある)を撤廃し輸入を自由化する効果を比較検討する。

援助と貿易がアジアのうち、最近、円借款の供与が多い6か国(中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ヴィエトナム)の経済全般に与える効果について、一定の動態的側面を織り込んだ応用一般均衡世界貿易モデルにより推計する。

3.分析結果の主要なポイント

1) ODAの動向

我が国のODAは、構造的には、アジア地域向けの経済インフラ整備のための円借款が多いという特徴を持っている。ただし、その各国間での配分を見ると、我が国のアジアにおける貿易・投資相手国としての比重など、経済的な側面での重要性を反映したものとは必ずしもなっていない。

2) 経済協力の効果

円借款は、これまで、長期間に渡って供与され、アジア経済の発展に大きく寄与したものと考えられる。他方、我が国の納税者の視点に立って見ると、毎年の円借款のための支出と、輸入自由化に伴う関税収入の減少は、何れも負担という点で共通する。それぞれが経済全般にどのような効果をもっているか比較することは、興味深いと考えられる。

円借款は、アジア各国の経済成長に対して、一定の効果を持っていることが示されている。資本形成による実質GDPの押し上げ効果は、国によって0.1%から1.6%程度と推計される。他方、我が国の輸入自由化は、経済厚生を高める上で効率的であることが示されている。実質所得や消費から得られる効用を増加させる効果は、国によって0.2%から1.9%と推計されるが、その大きさは、円借款による効果を上回るものとなっている。

なお、円借款と我が国の輸入自由化の経済効果については、我が国の経済、財政に与える影響、また、アジア各国及び我が国の産業別の影響など、様々な側面で相違が有り得る。両者の効果を比較するためには、より広く総合的に検討されるべきである。

4.結び

我が国の経済協力の在り方については、第一に、発展途上国にとっての経済開発のための効果と効率性、第二に、我が国にとっての貿易・投資などの経済面での重要性も勘案しながら、見直していく必要があると考えられる。

そのとき、援助と貿易の二つの政策手段については、それぞれの長所を活かしつつ望ましいポリシー・ミックスを考えるための補完的な手段と位置付けることが好ましいと思われる。

本分析は、そのようなより大きな視野で、ODAの政治経済学的な決定要因の分析を行うため、一つのきっかけとなってくれれば幸いである。

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全文の構成

  1. Abstract
  2. 1ページ
    1. Introduction
  3. 1ページ
    2. Developments in Japan's ODA
    1. 2ページ
      1. Aid Philosophy
    2. 3ページ
      2. Recent Trends
    3. 7ページ
      3. Future Reform
  4. 9ページ
    3. Japanese Trade and Investment in Asia
  5. 12ページ
    4. Framework of CGE Model Simulation
    1. 12ページ
      1. Past Assessments of Aid and Trade
    2. 13ページ
      2. GTAP Model
    3. 15ページ
      3. Assumptions
  6. 17ページ
    5. Simulation Results
    1. 17ページ
      1. Impact of Individual Measures
    2. 24ページ
      2. Benefits and Costs of Aid and Trade
  7. 27ページ
    6. Conclusions and Recommendations
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