ESRI Discussion Paper Series No.25
インターネットアクセス機器の普及要因分析:携帯電話のユニバーサルアクセスとしての可能性

2002年12月
  • 須田和博(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)

要旨

1.趣旨及び背景

インターネットが政治、経済、社会のあらゆる活動にとって欠かせないものになりつつある中で、誰もがインターネットを利用できるような環境、即ちユニバーサルアクセスの確保が、各国政府にとって重要な課題となりつつある。他方、パソコンの家庭への普及率の鈍化と携帯電話によるインターネットの普及によって、これまで軽視されがちであったアクセス機器の果たす役割にも関心が高まってきている。

本研究は、インターネットアクセス機器としての携帯電話とパソコンの普及要因を比較することによって、携帯電話がパソコンよりも家庭へ普及しやすく、それだけにユニバーサルアクセスとしての機能を果たす可能性が高いことを、都道府県データを用いた実証分析により示している。

2.手法

本研究の特徴として、分析に都道府県データを用いていることがある。これまでの研究の多くは、サーベイ調査に基づくものが通常であり、分析の発展性と外部者による検証可能性という面で限界があった。この点、都道府県データを用いることによって、よりオープンな補完的検証が可能になり、かつ、ITに関連する他の研究分野との連携も容易になるという利点がある。

これにより、まず、携帯電話とパソコンの普及率とインターネットの普及率(行動者率)が密接な関係を有していることを明らかにし、アクセス機器の普及率に注目する意味を示す。

次に、デジタルデバイドの要因として指摘されることの多い、所得、学歴、年齢、性別、職業、都市規模 (注1) の6つの要因と普及率の関係を消費動向調査のデータにより概観し、更にこれら6つの要因が普及率に及ぼす影響を、回帰分析により明らかにする。

3.分析結果の主要なポイント

  1. (1) アクセス機器の普及率とインターネットの普及率の関係
    • パソコンの普及率だけよりも、携帯電話の普及率を加えた方が、インターネットの行動者率 (注2) をよりよく説明でき、この時、パソコンの普及率の1%の増加はインターネットの行動者率を1%増加させるのに対し、携帯電話の普及率の1%の増加はインターネットの行動者率を0.5%高める。
  2. (2) 携帯電話とパソコンの普及要因比較
    • 所得及び学歴は、携帯電話、パソコンの双方の普及率に影響を及ぼしているが、所得も学歴も携帯電話に及ぼす影響の方が小さい。
    • 人口密度は携帯電話の普及率に正の影響を及ぼしていることが明らかになったのに対し、パソコンへの影響は明らかにはできなかった。
    • 他の、年齢、性別、職業が携帯電話とパソコンに与える影響については、都道府県データによる回帰分析では実証できなかった。

4.結び

インターネットのアクセス機器の普及要因はそれぞれ異なっており、その多様化と発展がデジタルデバイドの解消やユニバーサルアクセスの確保にとっても意味を持っている。

普及しやすさという観点からユニバーサルアクセスを捉えた場合、携帯電話の方がパソコンよりもその可能性は高く、アクセス機器としての携帯電話の活用や、利用者になじみ易い新しいアクセス機器の開発が重要。逆に、パソコンに顕著に見られるように、所得、学歴がアクセス機器の普及の制約になり易いという事実も直視する必要がある。


(注1) 回帰分析においては、都道府県単位で見るために都市規模の代わりに人口密度(対可住地人口密度)を用いている。

(注2) 行動者率は10歳以上の者で過去1年間に該当する種類の活動(ここではインターネットの利用)を行った者の数(行動者数)を10歳以上人口で割った数。

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全文の構成

  1. 1ページ
    I.はじめに
  2. 4ページ
    II.アクセス機器とインターネットの普及状況
  3. 6ページ
    III.主要耐久消費財データによる分析
  4. 10ページ
    IV.都道府県データによる回帰分析
  5. 15ページ
    V.考察と政策的含意
  6. 17ページ
    図表
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