ESRI Discussion Paper Series No.35
FTPL(Fiscal Theory of Price Level)を巡る論点について

2003年5月
  • 河越 正明(内閣府政策統括官(経済財政-運営担当)付企画官)
  • 広瀬 哲樹(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)

要旨

1.趣旨、問題設定

政府の予算制約式が物価水準を決めると主張する理論、物価水準(決定)の財政理論(FTPL, Fiscal Theory of Price Level)が近年登場したが、その理論の受け取られ方は肯定的・批判的さまざまである。また、その理論が現実のデータ等をどの程度説明できるかといった実証分析はまだそれほどなされていない。まして、その理論を踏まえた政策提言について、政策当局者がその現実妥当性や信頼性をどのように判断してよいかは明らかでない。こうした状況にかんがみ、FTPLの理論・実証、さらには日本経済に対する政策的な含意について現時点で包括的な整理を試みた。

2.目的及び手法

理論面については、なるべく統一的かつシンプルな枠組みを示した上で、その前提を変更するとどうなるのか、理論的枠組みに対する疑問も紹介しながら検討した。実証分析については、FTPLが成立する前提となるNon-Recardian型財政政策が果たして取られているか、政策論としては、FTPLのもつ流動性の罠についての脱出策について、を中心にそれぞれ批判的に検討した。

3.分析結果の主なポイント

今期の物価水準が政府の予算制約式から決定されるというFTPLの主張は、金融政策がマネタリー・ターゲットにしたがって運営される場合や、長期国債が存在する場合など、その理論の前提を変えるとそれほど明確でなくなる。実証分析においては、FTPLが成立する前提となるNon-Recardian型財政政策が果たして取られているか、はっきりしない。

日本に関する政策論としては、FTPLが主張する処方箋を実際には実施済みだと解釈することが可能であり、それでも流動性の罠から抜けられないのはなぜかという疑問が残る。

4.おわりに

FTPLが政策オプションとして現実への妥当性を高めるためには、理論的な枠組みとしても、(1)民間経済主体の期待が絶えず裏切られる状況が均衡として成立することを是正するとともに、(2)物価に担わせている財の価格という役割と、政府債務の実質実効価値という役割の2つを切り離すことが必要だと考える。そのためには、従来のモデルに国債価格決定方程式、または価格決定式を導入することが必要となろう。

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全文の構成

  1. 概要
  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 2ページ
    2.FTPL理論の概要
    1. 2ページ
      2.1 完全予見のモデル
    2. 5ページ
      2.2 不確実性のある場合
    3. 7ページ
      2.3 貨幣なき貨幣理論(又は貨幣の税理論)
    4. 7ページ
      2.4 小括
  4. 7ページ
    3.FTPLの諸前提の再検討と拡張
    1. 8ページ
      3.1 Ricardian型財政政策ルール
    2. 8ページ
      3.2 代替的な金融政策のルール:マネタリー・ターゲットに変更
    3. 10ページ
      3.3 国債のデフォルトの可能性
    4. 10ページ
      3.4 HTPL, TTPL, CTPL,...
    5. 11ページ
      3.5 開放経済への拡張
    6. 13ページ
      3.6 長期国債の導入
    7. 15ページ
      3.7 時間的整合性の問題 (time-consistency)
    8. 16ページ
      3.8 小括
  5. 16ページ
    4.実証分析の論点
    1. 17ページ
      4.1 前史
    2. 19ページ
      4.2 NR型と R型の識別
    3. 21ページ
      4.3 資産効果
    4. 22ページ
      4.4 小括
  6. 22ページ
    5.デフレ克服についての政策的な含意
    1. 23ページ
      5.1 金融引き締めのパラドクス
    2. 24ページ
      5.2 流動性の罠
    3. 26ページ
      5.3 日本経済への含意
    4. 28ページ
      5.4 小括
  7. 28ページ
    6.結び
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