ESRI Discussion Paper Series No.39
昭和恐慌をめぐる経済政策と政策思想:金解禁論争を中心として

2003年6月
  • 若田部 昌澄(早稲田大学政治経済学部助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

現代日本のデフレ不況の進行から、過去のデフレ不況に対する関心が高まっている。この論文では、過去のデフレ不況である1930-31年の昭和恐慌期前後を題材として、どのような経済政策がどのような経済思想に基づいて行われたかを検討し、現代への教訓を探った。

2.目的及び手法

経済政策の形成過程については、さまざまな経済主体の利益の相互作用を重視する立場が主流であるが、この論文では主体の制約としての知識の側面に焦点をあてた。具体的には、当時最大の経済論戦であった金解禁論争を、浜口内閣の成立までの時期、昭和恐慌期、昭和恐慌からの脱出期の三つの時期についてそれぞれ検討した。

3.分析結果の主なポイント

当時の多数派は、旧平価による金解禁というデフレ政策の追及による「財界整理」(不良事業・企業・産業の徹底淘汰)に賛成していた。そこには経済学の問題だけでなく、金本位制的心性(金本位制を望ましいとみなす思想)と清算主義(好景気の後には不景気がやってくるのは必然であり、不景気にあっては自由放任が望ましいという思想)という思想が大きな影響を及ぼした。

それに対して異論を唱えたのは石橋湛山ら新平価解禁派と呼ばれる人々であった。彼らは当時の欧米の経済学の動向を積極的に学び、経済政策の問題としてデフレ政策の危険性を指摘し、その克服策を提言していた。恐慌の進行とともに彼らの主張は注目を集めたが、論争を通じて一貫して少数派にとどまった。

4.結び

昭和恐慌は意識的なデフレ政策の追求の帰結であり、そこからの脱出は、金本位制からの離脱と、その後の積極的金融緩和というリフレ政策(デフレの弊害を除去するためのインフレ政策)への明確な転換によって成し遂げられた。しかし、その転換は紆余曲折を経たものとなった。

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全文の構成

  1. 5ページ
    I.序論:経済政策と経済政策思想
    1. 5ページ
      1. 問題と視角
    2. 6ページ
      2. 研究文献
    3. 7ページ
      3. 本論文の構成
  2. 7ページ
    II.恐慌への前奏曲:金解禁論争
    1. 7ページ
      1. 論争の意義
    2. 9ページ
      2. 論争の背景
    3. 10ページ
      3. 論争の当事者たち
    4. 15ページ
      4. 論争の論点
    5. 17ページ
      5. 論争の評価
  3. 18ページ
    III.昭和恐慌:金解禁の帰結
    1. 18ページ
      1. 恐慌の現状
    2. 18ページ
      2. 恐慌対策
    3. 19ページ
      3. 転換点
    4. 19ページ
      4. メディアの論調
  4. 20ページ
    IV.恐慌からの脱出:金解禁論争の終結
    1. 20ページ
      1. 政策転換の過程:2段階レジーム転換
    2. 21ページ
      2. リフレ派の台頭
    3. 22ページ
      3. 政策転換の成果
  5. 23ページ
    V.結語:経済危機の教訓
    1. 23ページ
      1. 世界恐慌その後:決定的な岐路へ
    2. 23ページ
      2. 若干の教訓
  6. 25ページ
    参考文献
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