ESRI Discussion Paper Series No.41
IT投資は日本経済を活性化させるか-JIPデータベースを利用した国際比較と実証分析-

2003年6月
  • 宮川 努(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、学習院大学経済学部教授)
  • 浜潟 純大(筑波大学大学院社会工学研究科)
  • 中田 一良(内閣府経済社会総合研究所研究官)
  • 奥村 直紀(前内閣府経済社会総合研究所)

要旨

1.趣旨及び背景

日本が経済のIT化に着目するようになってから久しいが、アカデミックな分野でのIT投資に関する分析は極めて少ない。また、2003年度からIT投資に関しては大幅な投資減税が実施されることなどを考えると、IT投資が今後も増加していくかどうかについて、その要因にまで遡った冷静な検証が必要であるため、Jorgensonの投資理論に基づいた定量的な分析を行った。

2.手法

本稿では、最近内閣府経済社会総合研究所の潜在成長力プロジェクトチーム(主査:深尾京司一橋大学教授)で作成された、JIP(Japan Industry Productivity)データベースから導出されるIT投資の動向を国際比較も含めて検証し、ハードの産業別IT投資データを利用し、パネル分析、操作変数法による実証分析を行った。

3.分析結果の主要なポイント

日本のIT投資は、ハード面、ソフト面においても、量的に見ると、米国または他のOECD諸国と比較してもそれほど遜色のない規模にある。ただし、通信業関係のIT化は米国に比べて相当低い。ソフトウエアについては、90年代以降ダウンサイジングやアウトソーシングが進み、自社開発投資が頭打ちになり、代わって受注ソフトウエアが増加している。

また、投資関数による実証分析の結果からは、資本コストの係数がマイナスに有意となり、本年度から実施される投資減税を実施するための根拠が得られた。スピルオーヴァー効果にかかる係数もプラスで有意となり、ある産業でIT投資が活性化すれば、他産業にもIT投資を増加させる方向で波及することも確かめられた。さらに、2003年度のIT投資に関する優遇税制の効果を試算すると、約1兆円から2兆円程度の新規IT投資が促進される事が示された。

4.おわりに

本稿の分析結果から、投資減税は資本コストの低下を通じIT投資を増加させるといった効果を持つ事が示され、我々の分析はこの需要刺激政策を支持している。しかし長期的な効果を考えれば、そうしたIT資本の蓄積が本当に生産性を上昇させ経済成長に寄与するかどうかが重要となるため、供給面からの分析と合わせて検証することにより、本当の意味でのIT投資の意義が明らかにされると考えられる。

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全文の構成

  1. 1ページ
    1.はじめに -IT化の経済分析-
  2. 3ページ
    2.IT投資の動向と国際比較
    1. 3ページ
      2-1.JIPデータベースとIT投資の概念
    2. 4ページ
      2-2.マクロベースのIT投資動向
    3. 5ページ
      2-3.産業別の投資動向
    4. 6ページ
      2-4.ソフトウェア投資の特徴
  3. 7ページ
    3.IT投資関数の推計
    1. 7ページ
      3-1.推計データの構築
    2. 9ページ
      3-2.基本的な推計結果
    3. 10ページ
      3-3.業種別の推計結果
    4. 11ページ
      3-4.利潤率を説明変数に含めた推計
    5. 12ページ
      3-5.IT投資促進税制に関するシミュレーション
  4. 13ページ
    4.結論と今後の課題
  5. 16ページ
    補論:IT投資系列及び資本ストック系列の作成方法
    1. 16ページ
      補論1-1.産業別IT投資及び資本ストック系列の作成(ハードウェア)
    2. 16ページ
      補論1-2.ソフトウェア投資の推計
      1. 16ページ
        1-2-1.ソフトウェア投資の範囲
      2. 17ページ
        1-2-2.受注ソフトウェアにおけるベンチマークの作成
      3. 17ページ
        1-2-3.受注ソフトウェア投資フローの把握と固定資本マトリックスとの対応について
      4. 18ページ
        1-2-4.その他のソフトウェア投資の推計
      5. 19ページ
        1-2-5.ソフトウェア資本ストックの推計
  6. 21ページ
    参考文献
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)