ESRI Discussion Paper Series No.44
R&D and Productivity Growth in Japanese Manufacturing Firms

2003年6月
  • 乾 友彦(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、日本大学経済学部教授)
  • 権 赫旭(一橋大学大学院経済学研究科助手)

要旨

1.趣旨及び背景

1990年代以降の日本経済は経済成長が長期に亘って低迷しており、全要素生産性に代表される生産性の停滞が指摘されている。生産性の上昇に重要な影響を与える要因として、技術進歩が考えられ、技術進歩に貢献する重要なインプットとして研究開発投資が挙げられ、既に生産性と研究開発投資の関係に関しては多くの内外の実証分析例がある。しかし、今までの日本の企業ベースのデータによる実証分析例は経済の拡張期における分析であり、またそのサンプルは大企業に限られている。本稿では1990年代における、中小企業を含めた3000社以上の企業データを使用することによって、近年の研究開発投資と生産性の関係について考察する。

2.手法

本稿では、経済産業省による「企業活動基本調査」のミクロデータを使用して、製造業の研究開発と生産性の関係に関する実証分析を行った。詳細なミクロデータを使用することによって、企業の規模別(従業員規模により大企業、中堅企業、中小企業に分割)、産業の技術性格別(売上高研究開発費比率によるハイテク、ミドルテク、ローテクに分割)に両者の関係を分析した。また、従来の研究では研究開発投資と付加価値、労働投入、資本投入に2重計算の問題が含まれていたが、詳細なミクロデータを使用することによって回避することが可能となった。

ここでは、多くの既存研究同様、労働、資本、研究開発の3つの生産要素によるコブ・ダグラス型の生産関数を使用し、研究開発の収益性について、産業ダミーを加えた1995年から1998年における企業別パネルデータを使用して計測を実施した。

3.分析結果の主要なポイント

本稿で得られた結果は、以下の3つである。第1に1990年代においても研究開発の生産性に与える影響は有意に正であるが、その収益率は日本企業に関する既存研究に比べると低下している。第2に研究開発の生産性に与える影響は産業別の差異よりも、むしろ企業別の差異の方が大きいものとなっている可能性が指摘できることである。第3に、研究開発の生産性に与える影響は規模が大きいほど、あるいはハイテク産業であるほど大きいものとなっている。

4.むすび

本稿では、経済成長が停滞している時期においても、研究開発が生産性に与える影響は重要であることが確認された。また、既存研究と異なり、産業別の差異よりも企業別の差異の方が研究開発の生産性に与える影響として重要となっている可能性があることがわかった。即ち、これは企業別の研究開発マネージメントの良し悪しが、その企業の生産性の良し悪しに結びつく可能性が高いことを示唆する。また、中堅、中小企業の研究開発の生産性への寄与が低いが、規模の小さい企業における生産性の向上の障害について、一層の考察を進める必要があるものと考えられる。

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全文の構成

  1. 1ページ
    1.Introduction
  2. 2ページ
    2.Data and Descriptive Statistics
  3. 4ページ
    3.The Empirical Specification
  4. 8ページ
    4.Empirical Results
  5. 11ページ
    5.Conclusion
  6. 14ページ
    References
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