ESRI Discussion Paper Series No.50
特別信用保証と中小企業経営の再構築 -中小企業のミクロ・データによる概観と考察-

2003年7月
  • 松浦 克己(横浜市立大学商学部教授)
  • 堀 雅博(内閣府経済社会総合研究所)

要旨

1.問題意識

長引く不況と金融危機の中で、各種の中小企業支援施策が繰り返されている。1998年には想定代位弁済率10%という中小企業金融安定化保証制度(いわゆる特別信用保証制度)が設けられ、その利用は累計29兆円に及んだ。

特別信用保証には倒産を減らす一定の効果を有したが、一方で、本来退出を促すべき実質破綻企業の延命に公的資金が費やす等相当の社会的費用を伴った。にもかかわらず、データ入手の困難等が障害になり、その有効性に関する実証分析はあまりない。本研究では、特別信用保証制度導入前後の時期における中小企業1000社のデータを活用し、当該貸出し増進策が中小企業経営にどういう意味を持ったかを検討している。

2.手法

本研究では、北海道拓殖銀行破綻(97年11月)後に逸早い保証拡充を図り翌年以降の全国規模での特別保証の先駆けとなった北海道内から抽出した4グループ(1)特別保証利用倒産、2)特別保証非利用倒産、3)特別保証利用存続、4)特別保証非利用存続)の中小企業ミクロ・データ(各グループ約250社、計1000社)を比較検討し、

  1. a) どういう企業が特別信用保証制度を利用したか、
  2. b) 倒産倍率の決定要因は何であり、特別信用保証の利用はそれにどう影響したか、
  3. c) 存続企業の総資産利益率の決定要因は何で、特別保証利用はそれにどう影響したか

等を探っていく。

3.分析結果の主要なポイント

ミクロ・データ分析の結果、次の点が明らかになった。

  1. 特別保証利用企業と非利用企業の最大の違いは負債比率にあり、利用企業は過剰債務傾向が明瞭である。そのため、特別保証利用企業の(信用調査会社による)評点は非利用企業よりも有意に低い。
  2. 倒産倍率(=倒産負債額÷資本金額)は、倒産前の負債関連指標の変化に感応的であり、過剰債務企業の借り増しは再建不能な高い倒産倍率につながる。
  3. 特別保証利用企業と非利用企業の総資産利益率の格差は負債比率に決定的に依存しており、負債比率の高い利用企業において利益率が低くなっている。

4.むすび

特別信用保証制度を利用した企業はその過剰債務傾向(とそれに由来する評点の低さ)故に信用保証の付保を要求された可能性が高い。しかし、過剰債務企業の借入増加は万が一の場合の倒産倍率を押し上げ、企業及び経営者の再起を著しく困難にする可能性が高い。財務的困難に陥った中小企業に対する支援策としては、貸出しを維持・増加する政策ではなく、一旦は早期の企業整理を支援する政策が求められる。

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全文の構成

  1. 1ページ
    1.はじめに
  2. 5ページ
    2.特別保証制度と経済動向
  3. 8ページ
    3.利用データについて
  4. 10ページ
    4.グループ別に見る企業の特徴
  5. 15ページ
    5.特別信用保証の利用に関するProbit分析
  6. 14ページ
    6.倒産倍率の推計
  7. 24ページ
    7.存続企業総資産利益率の推計
  8. 26ページ
    8.結びにかえて
  9. 27ページ
    参考文献
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