ESRI Discussion Paper Series No.51
社会資本整備と経済成長 -道路投資を対象とした実証分析-

2003年7月
  • 中里 透(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、上智大学助教授)

要旨

1.分析目的と分析方法

近年の厳しい財政状況のもとで社会資本の整備を着実に進めていくためには、公共投資の効率化を図ることが何よりも重要な課題である。とりわけ、道路整備は、公共投資の中で最も高いウェイトをしめる事業分野であり、その動向は今後の公共投資政策全般に大きな影響を与えるものと予想される。そこで、本稿では、道路整備が経済成長に与える影響について日本の地域経済データをもとに実証分析を行い、その整備の効率性について検証を試みる。

社会資本の整備が経済成長に与える影響を分析する手法としては、いわゆるBarro regressionの説明変数に社会資本の整備状況に係る変数を加えて、その推定値が有意なプラス(あるいはマイナス)の符号を持つか否かを検定するという方法が考えられる。本稿では、社会資本の整備に係る変数として道路延長を採用し、1960年から99年までの期間を対象に46都道府県のデータを利用して実証分析を行なった。

2.推定結果

本稿の推定によれば、1960年代及び70年代に、全国的なネットワークを形成する道路(高速自動車国道及び一般国道)の整備が、産業の集積度の低い地域において経済成長に有意なプラスの影響をもたらしたことが確認される。この推定結果は、道路整備が輸送コストの低下を通じて経済成長の促進に寄与するという見方と整合的であり、幹線道路網の整備が"国土の均衡ある発展"に大きな役割を果たしてきたことがわかる。しかしながら、80年代以降、道路整備は地域経済の成長に有意な影響をもたらさなくなっており、整備効果の低下が示唆される。この結論は、道路整備から生じるサービスの質を考慮した指標(改良済延長、整備済延長)を利用して推定を行なった場合にも同様に支持される。

3.結論

以上の点を踏まえると、今後の道路整備については、これまで以上に慎重な需要見通しのもとで投資の重点化・効率化を図ることが不可欠であり、道路公団の民営化等事業主体のあり方に関する検討と併せて整備の必要性自体を精査する取り組みが必要と考えられる。

本文のダウンロード

社会資本整備と経済成長 -道路投資を対象とした実証分析-別ウィンドウで開きます。(PDF形式 100 KB)

全文の構成

  1. 要旨
  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 2ページ
    2.論点整理
    1. 2ページ
      2.1 貿易取引を通じる経路
    2. 3ページ
      2.2 産業立地を通じる経路
  4. 4ページ
    3.実証分析の方法とデータ
    1. 4ページ
      3.1 推定式
    2. 5ページ
      3.2 道路の整備水準に係るデータの作成
    3. 6ページ
      3.3 データ
    4. 7ページ
      3.4 内生性の考慮
    5. 7ページ
      3.5 符号条件
  5. 8ページ
    4.推定結果
  6. 9ページ
    5.結論
  7. 11ページ
    (補論)フロー変数とストック変数の選択について
  8. 15ページ
    参考文献
  • 〒100-8914
    東京都千代田区永田町1-6-1 中央合同庁舎第8号館
  • 電話 03-5253-2111(代表)