ESRI Discussion Paper Series No.53
構造的失業の再検討-失業率上昇の背景-

2003年8月
  • 玄田 有史(東京大学社会科学研究所、内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官)
  • 近藤 絢子(東京大学大学院経済学研究科博士課程)

要旨

1.趣旨および目的

構造的失業の把握は、雇用政策上非常に重要な論点であるが、その定義や把握方法に明確な基準を欠いたまま議論が積み重ねられているのが実態である。本稿は、構造的失業とは何か、従来の構造的失業の理論的解釈・実証的把握方法について整理・検討し直す。それを踏まえた上で、構造的失業を含めた失業の把握について、失業者の意識面からの分析を用いて新たな視点の提供を試みる。

2.既存のマクロ経済的手法とその限界

まず構造的失業の定義そのものについて、その定義上の混乱も含めて整理する。その上で、UV曲線を用いたアプローチとフィリップス曲線を用いたアプローチの2つをとりあげる。UV分析については、計測上の問題や理論的根拠の弱さが指摘される。フィリップス曲線に関しても、ディスインフレ下ではその解釈に留意が必要となる。

3.失業者の意識面からの実証分析

労働力調査、労働力調査特別調査を用い、ミスマッチと需要不足への単純な二分法ではなく、両方の側面を含む失業を考え、新たな視点の提供を試みる。具体的には、まず完全失業者の「仕事につけない理由」を分析し、1990年代後半の失業率上昇の特徴は、「希望する仕事がない」といったミスマッチと需要不足の両面を併せもつ失業であるという結果を得た。この結果を踏まえ、失業者に占める正社員志向者割合、直近の求職活動の強度、の2点に着目して分析を行ったが、失業者の意識面に明確な変化は見られない、という結果を得た。

4.結び

構造的失業の本質は、需要変化が発端となって何らかの経済構造の変化を誘発することであり、その動学的変化が持続的な失業を生み出すことにある。ミスマッチと需要不足を区別することが構造的失業を把握することの本来の目的ではない。1990年代後半以降の失業率の上昇局面において、UV曲線は上方へ延び、ディスインフレ下でフィリップス曲線も水平に近づいており、労働市場の構造に関し従来とは異なる分析枠組みが求められている。1999年以降、趨勢的に増加しているのは、ミスマッチと需要不足の両面を持った失業であり、就業への期待形成に持続的な影響を与える構造変化の具体的な把握が、失業増加の構造的側面の理解には今後不可欠である。

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  2. 要旨
  3. 1ページ
    1.はじめに
  4. 1ページ
    2.構造的失業の本源的意味
  5. 4ページ
    3.UV分析の課題
  6. 7ページ
    4.構造的失業と物価変動
  7. 10ページ
    5.構造的失業の新たな視点
  8. 12ページ
    6.「仕事につけない理由」の考察
  9. 13ページ
    7.正社員志向は変化したか?
  10. 15ページ
    8.求職密度の変化
  11. 16ページ
    9.構造的失業はどう捉えるべきか
  12. 18ページ
    参考文献
  13. 図表1別ウィンドウで開きます。(PDF形式 231 KB)
  14. 図表2別ウィンドウで開きます。(PDF形式 358 KB)
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