ESRI Discussion Paper Series No.54
保育サービスの質の定量的評価-ミクロデータによる検証-

2003年8月
清水谷
(内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
野口晴子
(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、東洋英和女学院大学助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

保育サービスの質の定量的・客観的評価は、1)非対称情報の下で利用者がサービスを選択する場合に不可欠であるだけでなく、2)保育サービスの成果(outcome)を評価する際にもなくてはならない。しかし、サービスの質を評価する画一的な指標がないために、評価基準も研究によってまちまちである。

この論文では、3つの異なった尺度で保育サービスの質を定量的に評価する。その際、公立認可保育所、私立認可保育所、無認可保育所の3つの異なるタイプの保育所のサービスの質の定量的比較を行う。

2.目的及び分析手法

保育サービスの質の評価について、唯一絶対的な基準は存在しない。この論文では、次の3つの異なる方法を用いる。つまり、1)40項目にのぼるさまざまなサービスの質の評価項目を積み上げる「点数比較アプローチ」、2)サンプルセレクションバイアスを調整した上で、労働者の特性に着目し比較する「労働者の質アプローチ」、3)利用者に保育サービスへの需要を直接サーベイした「利用者の要望アプローチ」である。これらの検証には豊富なミクロデータが必要である。そのため、この論文では内閣府が2002年に独自に収集した供給者( 1)及び2)のアプローチ )及び需要者( 3)のアプローチ )の大規模なミクロデータを用いる。

3.分析結果の主要なポイント

  1. 1) 「点数比較アプローチ」によると、1つのタイプの保育所のサービスの質がすべての面で最も優れているとはいえない。例えば、「構造指標」では公立保育所が優れているものの、「父母の利便性」では明らかに私立認可保育所が勝っている。
  2. 2)  一方、「労働者の質アプローチ」でみると、常用雇用者や有資格者の比率では私立認可保育所が明らかに公立保育所を上回っている。
  3. 3)  「利用者の要望アプローチ」によると、延長保育、休日保育、幼児教育あるいは父母の利便性に関わるサービスについて、私立認可保育所が公立保育所よりも優れている。
  4. 3) 従って、全体的にみれば、私立認可保育所のサービスの質は公立保育所よりも勝っている。

4.結び

この論文では、3つの異なる方法で保育サービスの質を定量的に評価した結果、私立認可保育所は公立保育所よりも勝っているという結論を得た。一方、本ディスカッションペーパーシリーズNo33 「Wage Determinants and Age Profiles in the Japanese Child Care Industry:Evidence from Employee-level Data」では、公立保育所の賃金が私立認可保育所に比べて明らかに高いことが示されている。従って、公立保育所の賃金の高さは、提供するサービスの質が高さでは正当化されないことがわかった。

今後の課題としては、こうしたサービスの質の定量的な評価を明示的に考慮して、どの経営主体が効率的なのかについて、検証を深めていく必要がある。

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Quality of Child Care in Japan: Evidence from Micro-level Data別ウィンドウで開きます。(PDF形式 169 KB)

全文の構成

  1. abstract
  2. 1ページ
    1.Introduction
  3. 2ページ
    2.Literature Review
  4. 4ページ
    3.Data Description
  5. 5ページ
    4.The"Test Score" Approach
  6. 9ページ
    5.The"Quality of Workers" Approach
  7. 10ページ
    6.The"Users ' Requests" Approach
  8. 12ページ
    7.Conclusion
  9. 14ページ
    References
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