ESRI Discussion Paper Series No.58
急性心筋梗塞疾患患者へのPTCA施行を用いた医療評価の方法とプロセスの研究(「ESRI・急性心筋梗塞患者データ2003年」利用マニュアル)

2003年9月
野口晴子
(東洋英和女学院大学)
茅野真男
(国立病院東京医療センター循環器科)
清水谷
(内閣府経済社会総合研究所)
川渕孝一
(東京医科歯科大学)

要旨

1.趣旨及び背景

巨額にのぼる医療費に悩む現在の日本の医療には、質の向上と適正なコストの両立が求められている。そこで、内閣府経済社会総合研究所では、医療費高騰を招く大きな要因となっている高度医療について、医療の質とコストの解析、実証分析に基づいた制度設計のあり方等を研究するプロジェクトを開始した。

本プロジェクトでは、まず高度医療の典型的な例として、米国でも先行研究の蓄積が進んでいる急性心筋梗塞患者に対するPTCA(経皮的冠動脈形成術 Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)を取り上げた。その際、医療費や医療サービスの「質」、さらに医療技術の発展や普及が与える影響等を実証するために、患者単位でのミクロレベルのデータを収集した。

本稿は、収集したデータの基本的な事実発見の報告であると同時に、今後公開を予定している日本におけるPTCAのミクロレベルのデータ(「ESRI・急性心筋梗塞患者データ2003」)の利用マニュアルである。

2.分析内容と主な結果

パート1では、研究の背景として、これまでの米国における医療経済学の取り組みを検証した。特に、特定の疾患の医療費と質を、ミクロデータを使いながら実証し、現実の政策に生かすというアプローチの重要性を明らかにした。

パート2は、「ESRI・急性心筋梗塞患者データ2003」の利用マニュアルの本体である。まず、日本・中国両国から研究者の協力を得て収集したミクロレベルでの詳細な医療情報を解説する。さらに、米国の先行研究を踏まえ、基本統計量を用いて、日米中3カ国の比較を行う。その際、医療の「質」に着目し、構造的指標、経過指標、効果指標の3つにわけて検討を行う。その結果、日中両国で収集された急性心筋梗塞疾患患者の間には、患者属性や経過指標としての治療属性に不均質性(heterogeneity)が観察されることを明らかにする。さらに、日本や米国と比較すると、中国ではハイテク治療がいまだ普及していない可能性が高く、薬物治療に多くを依存していることを示す。

3.今後の課題

このように、高度医療の評価を行う際には、コストの単純な比較にとどまらず、カルテベースでの詳細な患者属性と経過指標を用いてリスク調整を行う必要がある。このため、急性心筋梗塞のみならず、医療費の高騰を招いている他の疾患についても、日本で著しく不足しているミクロレベルでのデータ収集・整備を進めていくことが不可欠である。

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急性心筋梗塞疾患患者へのPTCA施行を用いた医療評価の方法とプロセスの研究(「ESRI・急性心筋梗塞患者データ2003」利用マニュアル)別ウィンドウで開きます。(PDF形式 188 KB)

全文の構成

  1. 1ページ
    1.はじめに
  2. 5ページ
    パート1 ミクロデータを用いた米国の医療経済学の取り組み-医療の質の計測を中心に-
    1. 5ページ
      第1節 医療の「質」をどう測るか
      1. 5ページ
        1-1 医療の「質」をどう定義するか
      2. 6ページ
        1-2 医療の「質」を計測する難しさ
      3. 8ページ
        1-3 医療の「質」を改善するための2つのアプローチ
    2. 10ページ
      第2節 米国における医療の「質」改善へ向けての試み
      1. 10ページ
        2-1 HCQIPにおけるCCPの位置づけ
      2. 11ページ
        2-2 医療の「質」に対するCCPの役割と今後の課題
      3. 13ページ
        2-3 米国における医療情報の管理方法
  3. 15ページ
    パート2 「ESRI・急性心筋梗塞患者データ2003」の利用マニュアル及び基本統計量を用いた若干の分析
    1. 15ページ
      第1節 「ESRI・急性心筋梗塞患者データ2003」概要
    2. 16ページ
      第2節 変数の説明と基本統計量
    3. 20ページ
      第3節 中国におけるPTCAデータの解析
    4. 23ページ
      第4節 日本・中国・米国の3カ国比較
    5. 27ページ
      第5節 ミクロデータ収集の課題
  4. 29ページ
    参考文献
  5. 33ページ
    (添付資料)
  6. 49ページ
    図表
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