ESRI Discussion Paper Series No.59
金融政策の波及チャンネルとしての為替レート

2003年9月
  • 寺井 晃(東京大学大学院経済学研究科博士課程)
  • 飯田 泰之(駒澤大学経済学部専任講師、内閣府経済社会総合研究所客員研究員)
  • 浜田 宏一(イェール大学教授、前内閣府経済社会総合研究所所長)

要旨

1.趣旨及び背景

2003年8月現在,日本銀行は日銀当座預金残高を目標とした緩和策を継続中であるが,さらにもう一段階の緩和の必要性が主張される事も多い。しかし,追加的緩和の手段としての国内金融政策の幅は狭まりつつあるとも指摘される。その中で残された手段として言及されるのが為替レートを通じた金融政策である。為替レートを通じた金融政策の可能性を探るためには,各種為替レート決定理論の妥当性を知る必要がある。

2.目的および手法

そこで本稿では,いわゆる「ソロス・チャート」が90年代以降の為替レートに対し大きな説明力を持つことをふまえ,マネタリーアプローチを中心にインフレ期待やベースマネーが為替レートに与える影響を検討する。そのために,まずは標準的で再現可能性の高い誘導型VARモデルを用いて変数間の時系列的関係を考察する。ついで,変数の多くが非定常であることをふまえ,共和分分析・エラーコレクションモデル(VECM)による分析を行った。

3.分析結果の主なポイント

得られた結果は以下の3点である。第1に,金融政策の指標としてベースマネーを用いる方が,マネーサプライを用いるより,大きな説明力を有するということが確認された。第2に,為替レートに対して日米ベースマネー比と期待インフレ率の影響が大きい。第3に,ベースマネー増減を伴わない不胎化された為替介入や,公表介入額に基づいた為替介入の指標はモデルに追加的な説明力を与えないこと確認された。これらの結果より,金融政策に関わる変数であるベースマネー,期待インフレ率が為替レートに与える影響は非常に大きく,不胎化介入などベースマネーの変更を伴わない金融政策の説明力が弱いことが導かれる。

4.むすび

以上の分析より,長期国債買い切りや為替への非不胎化介入によるベースマネー拡大,インフレーション・ターゲットなどによる期待インフレ率への働きかけといった政策が有効と考えられる。為替レート下落後の経済活動への波及の仕方の詳細な分析や,ベースマネー供給・期待インフレ率への働きかけの手段・方法は本稿の主題の範囲外であるが,為替レート変化が有効需要やポートフォリオに働きかけることで,国内経済活動が刺激されると予想される。しばしば手詰まりと言われる金融政策であるが,為替レートのチャネルを通ずる金融政策の有効性は依然として残っている。

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全文の構成

  1. 2ページ
    要約
  2. 4ページ
    1.はじめに
  3. 5ページ
    2.金融政策と為替レート
  4. 6ページ
    3.基本モデルとしてのマネタリーアプローチ
  5. 9ページ
    4.為替レート説明データ
    1. 9ページ
      4-1.データ
    2. 10ページ
      4-2.データの定常性
  6. 10ページ
    5.為替レート説明のVARモデル
    1. 10ページ
      5-1.変数の配列とGrangerの因果性
    2. 11ページ
      5-2.マネーサプライを用いたVAR
    3. 11ページ
      5-3.ベースマネーを用いたVAR
    4. 12ページ
      5-4.為替介入政策の効果
    5. 13ページ
      5-5.ベースマネーと共和分・VECMモデル
    6. 14ページ
      5-6.為替レートの反応の累積値
  7. 15ページ
    6.ベースマネーとマネーサプライ,ゼロ金利政策
  8. 16ページ
    7.結論
  9. 19ページ
    参考文献
  10. 図表
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