ESRI Discussion Paper Series No.60
介護サービス市場の実証研究4
「要介護認定率の上昇と在宅サービスの将来需要予測 -要介護者世帯への介護サービス利用調査による検証-」

2003年9月
  • 清水谷 諭(内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
  • 野口 晴子(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、東洋英和女学院大学助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

介護保険が導入されて3年以上が経過した。当初伸び悩んでいた介護サービス需要も、在宅介護サービスを中心に2001年以後順調に増加している。この背景には、介護保険を通じたサービスを利用する資格である要介護認定を受けた比率(要介護認定率)の上昇が大きく寄与している。要介護認定率は介護保険導入後上昇の一途をたどっており、2002年末時点では約60%に達している。今後介護保険が定着するにつれて、要介護認定率がさらに上昇し、それが実際にサービスを受ける受給者率や一人当たりの介護費用にも波及すると見込まれる。

本論文では、認定率の決定要因や認定からの期間が受給者率や一人当たり介護費用に及ぼす影響を定量的に検証し、それを用いて、在宅介護サービス需要の将来推計を行う。

2.手法

本論文では、まず、内閣府が要介護者を抱える世帯に対して独自に実施した「高齢者の介護利用状況に関するアンケート調査」(2001年及び2002年)のミクロデータを活用して、認定率、受給者率、一人当たり介護費用の3つの要素の決定要因を検証する。具体的には、

  1. (1) 認定率の決定要因をsurvival分析によって検証する。
  2. (2) 認定からの期間が受給者率に与える影響をprobit分析によって検証する。
  3. (3) さらに、認定からの期間が一人当たり介護費用に与える影響をtobit分析によって検証する。

さらに、これらの実証分析をもとに、在宅介護サービス需要の将来推計を行う。

3.分析結果の主要なポイント

  1. (1) 2002年のサンプルを用いた場合、認定を受けるまでの平均年数は約3年間であり、今後5年間で要介護認定者は全体の9割に達すると見込まれる。認定率の上昇は2001年サンプルを用いた場合よりもかなり早い。
  2. (2) 制度に関する学習効果により、認定を受けてから時間が経過するほど、受給者率や1人当たりの介護サービス費用が増加する傾向にある。
  3. (3) 在宅サービス(訪問サービス・通所サービス・短期入所)の将来需要の推計を行うと、2010年には3.4兆円となり、現在の約1.3兆円に比べて約2.6倍になることが見込まれる。

4.結び

本論文は認定率の急速な上昇により、在宅介護サービス需要は将来的に大きく拡大することが見込まれることを明らかにした。したがって、今後は、限られた財源の中で、質の高いサービスを効率的に提供するための制度的なあり方を検討していかなければならない。今後、施設介護サービス需要についても、ミクロデータによる検証に基づいた推計を行い、施設介護と在宅介護の代替関係についても検証しつつ、介護サービス市場全体の将来需要についても、的確に把握していくことが必要である。

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  2. 3ページ
    1.はじめに
  3. 5ページ
    2.「高齢者の介護利用状況に関するアンケート調査」の調査概要
  4. 6ページ
    3.認定率の動向とその要因に関する定量的検証
  5. 10ページ
    4.認定期間が受給者率と一人当たり介護費用に与える影響
  6. 12ページ
    5.在宅介護サービス需要の将来需要予測
  7. 14ページ
    6.結論と政策的インプリケーション
  8. 16ページ
    参考文献
  9. 図1別ウィンドウで開きます。(PDF形式 364 KB)
  10. 図2、3及び表別ウィンドウで開きます。(PDF形式 376 KB)
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