ESRI Discussion Paper Series No.63
季節調整プログラム
X-12-ARIMAとTRAMO-SEATSの分解構造
-試験的な実証分析を添えて-

2003年9月
  • 東 晋司(中央大学大学院経済学研究科博士後期課程)

要旨

1.趣旨、問題設定

季節調整法を分類すると、移動平均型調整法とモデル型調整法に大別することが出来る。前者を代表するものとして、米国センサス局のX-12-ARIMAが挙げられる。また後者の例としては、我が国では馴染みが薄いものの近年欧州諸国で注目され、実用化されているTRAMO-SEATSがある。尚、Eurostatにおいては、幾つかの季節調整プログラムの中から最もパフォーマンスの良いプログラムとしてTRAMO-SEATSと X-12-ARIMAを選定し、その上両プログラムをWindows上で操作できるインターフェースDemetraを開発させたという経緯がある。米国センサス局においては、X-12-ARIMAにSEATSアルゴリズムを組み込んだX-12-ARIMAのexperimental versionを開発している。この様な状況から、両プログラムに対する注目度は今後益々高まると予想される。

そこで本論分では、X-12-ARIMAとTRAMO-SEATSの相違点のうち、それぞれの分解パートであるX-11パートとSEATSパートの違い(フィルター構造の違い)に焦点を絞り、それらの構造を概説し特徴等を述べた。また、両プログラムによる季節調整結果を比較するために、試験的な実証テストを行った。

2.X-12-arimaとTRAMO-SEATSの分解構造(フィルター構造)

【X-12-ARIMAの分解パート(X-11)】

  1. <手法>
    • 既存の移動平均フィルターの組合せにより観測系列を各コンポーネントに分解し、季節調整値及びその他のコンポーネントを推定する手法である。
  2. <問題点>
    • 既存の移動平均フィルターで処理するために観測系列の持つ統計的特性を活かした手法ではないと批判されることも多い。また、ユーザーがどのように移動平均項数を設定しようとも事後診断チェックをパスしてしまうことも多く、一意的な解を与えるモデル型調整法に比べこの点が判断しづらい。

【TRAMO-SEATSの分解パート(SEATS)】

  1. <手法>
    • AMB分解により観測系列のARIMAモデルから各コンポーネントのARIMAモデルを導出し、それらのARIMAモデルから構築される数理的に最適化されたWKフィルターにより季節調整値及びその他のコンポーネントを推定する手法(ARIMA-Model-Based Signal Extraction)である。
  2. <問題点>
    • AMB分解において各コンポーネント・モデルを決定する際、過少識別問題の回避やcanonical分解といった複雑な過程を踏むことから観測系列の持つ統計的特性を直接的に反映させた解法であるとは言い難く、若干開発者の恣意性が混入していると思われる。

3.実証テストの結果

国内家計最終消費支出(名目・実質)と民間企業設備投資(名目・実質)の4系列の四半期データを用いて目的別に実証テストを行い、X-12-ARIMAとTRAMO-SEATSの両プログラムによる季節調整結果を比較した。結果は以下の通りである。

  1. 季節調整系列の滑らかさを比較したところ、4系列のうち3系列でTRAMO-SEATSの方が滑らかな季節調整系列を作り出した。
  2. MAPR指標を用いた安定性分析では、両プログラムは甲乙付け難い。
  3. 加法性と再帰性については、TRAMO-SEATSの方が優れている。

4.結び

異なる季節調整法を比較し相対的な評価を下すことは、想いのほか困難なことである。これは、本来観測不能な季節成分をプログラム上に完全に定義すること自体が困難であり、また得られた季節調整結果を事後的に評価する絶対的な指標もないことに起因している。肝要なのは、まず各季節調整プログラムに設けられた仮定が現実に即したものであるかをよく吟味することであり、その上であらゆる角度からパフォーマンスを検証することであろう。本論分では、X-12-ARIMAとTRAMO-SEATSの分解構造について概説し、また幾つかの実証テストを行った。ただし、ここで行ったテストは試験的な意味合いが強く、適正に評価するための更なる詳細な実証テストが今後の課題として残っている。

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  2. 1ページ
    1.はじめに
  3. 2ページ
    2.X-12-ARIMAの分解構造(X-11)
    1. 3ページ
      2.1 X-11の分解手順
    2. 6ページ
      2.2 種々のフィルター特性
    3. 7ページ
      2.3 全体としてのX-11フィルター
    4. 9ページ
      2.4 X-11フィルターの特徴と問題点
  4. 10ページ
    3.TRAMO-SEATSの分解構造(SEATS)
    1. 10ページ
      3.1 シグナル抽出方法について
    2. 11ページ
      3.2 WKフィルター
    3. 13ページ
      3.3 ARIMAモデルに基づく時系列の分解
    4. 17ページ
      3.4 SEATSの特徴と問題点
  5. 17ページ
    4.実証分析
    1. 18ページ
      4.1 季節調整値の単純比較
    2. 18ページ
      4.2 安定性の比較分析
    3. 19ページ
      4.3 加法性の比較分析
    4. 20ページ
      4.4 再帰性の比較分析
  6. 20ページ
    5.結び
  7. 22ページ
    参考文献
  8. 24ページ
    Appendix
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  10. 別ウィンドウで開きます。(PDF形式 94 KB)
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