ESRI Discussion Paper Series No.78
大停滞はなぜ起こったのか:資源配分の非効率か、全要素生産性の低下か

2003年11月
  • 原田 泰(内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)
  • 中田 一良(前内閣府経済社会総合研究所研究官)

要旨

1.目的

経済成長は、労働と資本の投入と技術進歩によって実現される。したがって、成長のためには労働と資本の自由な投入が妨げられるような市場の歪みがないこと、技術進歩が活発であることが必要である。日本の90年代以降の経済停滞については、様々な議論がなされているが、新古典派の成長モデルに基づき、停滞がどのような要因によって引き起こされたかを考察した例は少ない。我々は、新古典派の成長モデルの発想を踏まえ、なんらかの要因によって価格の歪みが生じたときに経済がどのような影響を受けるかを考察する。

2.主要結果

第1に、新古典派の成長モデルに基づき、経済データを可能な限り再現できるようなパラメータを選び、資本の限界生産性、労働の限界生産性、オイラー方程式、余暇と消費の代替の状況を推計した。現実の収益率は、90年代以前は、推計された資本の限界生産性を上回っていたが、90年代に入ってからはその関係が逆転している。これに対して、現実の賃金と推計された労働の限界生産性の乖離の関係は逆であった。

第2に、賃金について、この乖離がなかった場合、労働需要がどれだけ発生し、この需要に応じて労働投入を拡大した場合、所得がどれだけ上昇していたかを試算した。試算の結果、賃金の乖離が解消された場合には、労働の投入量は17%大きくなる。また、生産については、現実値を10%上回る。

第3に、このような乖離と乖離を埋めることについてのオイラー方程式、余暇と資本の代替の意味を考察する。労働供給の増大は、余暇と資本の代替のパラメータから考えて効用を大きく削減するものとは考えにくい。したがって、90年代の停滞を、賃金の歪みによって生じた労働の資源配分の非効率によるものと解釈することが可能である。
 次の問題は、この労働配分の非効率がなぜ生じたかを特定することである。マネタリーなショックと賃金の硬直性が労働配分の非効率性をもたらしたことが、かなりの確度で指摘できる。

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全文の構成

  1. 2ページ
    1.日本経済の新古典派成長モデル
    1. 2ページ
      1.1 新古典派モデル
    2. 3ページ
      1.2 使用データ
    3. 3ページ
      1.3 生産関数の推定結果
    4. 4ページ
      1.4 新古典派モデルにおける4つのfirst-order conditions
  2. 7ページ
    2.実質賃金が労働の限界生産性と等しいと仮定した場合の労働需要および国民生産
    1. 8ページ
      2.1 実質賃金の乖離と労働投入、所得の歪み
    2. 9ページ
      2.2 ゴブ=ダグラス関数と経験則
  3. 9ページ
    3.企業の限界条件の乖離と家計の限界条件の乖離
  4. 10ページ
    4.乖離と全要素生産性の変化のどちらが90年代以降の停滞を説明できるか
  5. 11ページ
    5.乖離はなぜ生まれたか
    1. 11ページ
      5.1 労働市場の効率性に関する変数の説明
    2. 12ページ
      5.2 推計結果
  6. 13ページ
    結語
  7. 15ページ
    図表
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