ESRI Discussion Paper Series No.80
非営利主体は高品質のシグナルか?-要介護者世帯への介護サービス利用調査による検証-

2003年11月
清水谷
(内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
野口晴子
(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、東洋英和女学院大学助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

2000年の公的介護保険の導入を契機に、訪問介護市場に初めて営利主体の参入が認められた。しかし、営利主体の参入がただちに競争の促進や効率性の向上につながるかは自明ではない。いわゆる「契約の失敗」仮説によれば、情報の非対称性が存在する場合には、需要者は機会主義的行動をとる可能性がある営利主体を避けて、非営利主体を選択する。もしそのような状況が起こっているのであれば、期待された競争促進効果はみられないことになる。しかし、介護保険導入後3年半以上経過したにもかかわらず、この点については、これまで十分検証されていない。

本論文は内閣府が独自に実施した要介護者世帯への介護サービス利用調査によって、営利主体・非営利主体間の需要者の選択行動を規定する要因について定量的な検証を行う。

2.手法

本論文では、まず、内閣府が要介護者を抱える世帯に対して独自に実施した「高齢者の介護利用状況に関するアンケート調査」(2001 年及び2002年)のミクロデータを活用して、需要者の選択行動を明らかにする。

具体的には、営利主体・非営利主体を利用している需要者の占めるシェアを明らかにした上で、需要者の選択を決定している要因をプロビットモデルによって検証する。

その際、要介護者や家族の特性を考慮した上で、「契約の失敗」仮説の検証として、情報の非対称性の代理変数、さらに競争環境に関する指標を変数として含める。

3.分析結果の主要なポイント

  • (1)まずシェアをみると、営利主体は全体の約40%を占めている。その意味では、訪問介護市場への営利主体の参入は需要者にも受け入れられたといってよい。
  • (2)要介護度が高い場合、家族や親戚で医療関係者や介護福祉従事者がいる場合には、非営利主体が選ばれる傾向が強い。これは、施設介護や医療分野に営利主体が参入できないことの裏返しといえる。また、介護保険導入以前から同じ業者を利用している場合も、非営利主体が選ばれる傾向が強い。これは先発利益を反映している。
     一方、介護保険が開始されて以来利用している業者を変更した場合には、むしろ営利主体が選ばれる傾向が強い。こうした需要者はより多くの情報を持っていると考えられるため、情報の非対称性が解消されるほど、営利主体が選ばれる傾向が強くなるといえる。

4.結び

営利主体の参入により訪問介護市場をより活性化していくためには、情報の非対称性を解消していくとともに、施設介護や医療分野など隣接分野への参入規制についても見直していく必要がある。

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IS NON-PROFIT STATUS A SIGNAL OF BETTER QUALITY? MICRO-LEVEL EVIDENCE FROM JAPAN'S AT-HOME CARE INDUSTRY別ウィンドウで開きます。(PDF形式 68 KB)

全文の構成

  1. abstract
  2. 1ページ
    1. Introduction
  3. 2ページ
    2. Review of Previous Studies
  4. 7ページ
    3. Data
  5. 8ページ
    4. Estimation and Results
  6. 12ページ
    References
  7. 14ページ
    Figures and Tables
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