ESRI Discussion Paper Series No.83
保育サービス市場の実証研究5
「保育サービス需要の価格弾力性と潜在需要推計
-仮想市場法(CVM)によるアプローチ-」

2003年12月
  • 清水谷 諭(内閣府経済社会総合研究所研修企画官)
  • 野口 晴子(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、東洋英和女学院大学助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

保育サービスの供給不足は、特に都市部の低年齢児で依然として深刻である。また、今後女性の社会進出の増加等に伴って、保育サービス需要は将来的にもさらに増加していくことが見込まれる。そのため、「待機児童問題」解決のためには、保育サービスの需要曲線を導出し、実証分析に基づいた価格政策を実施していくことが喫緊の課題である。

本論文は、未就学児童を抱える世帯に対するアンケート調査のミクロデータを活用し、仮想市場法(CVM)を応用して、保育サービスの価格弾力性とその潜在需要の推計、さらに厚生分析を行う。

2.手法

本論文では、2002年7-9月に内閣府が独自に実施したアンケート調査のミクロデータを用いる。対象は首都圏の未就学児童を抱える世帯である。

この調査ではある理想的な認可保育所の利用意向について仮想的質問を行っている。具体的には、いくつかの利用料のシナリオを示し、それぞれの利用料に対する利用の有無を質問することで、それぞれの世帯の支払い意志額(WTP:Willing To Pay)を把握する。得られた回答をもとに、世帯の属性をコンとロールした上で、価格弾力性を推計し、需要曲線を導出する。

3.分析結果の主要なポイント

  • (1)現在の保育料(サンプルの平均は30,637円)を前提とすると、超過需要を含めた潜在的な保育需要者数は首都圏4県で約26.9万人と推計される。これは公表されている待機児童数をかなり上回っている。
  • (2)保育サービスの価格弾力性は高く(2.0程度)、需要をコントロールする上で価格政策は有効である。現在の超過需要を解消するための均衡保育サービス価格は、約42,000円(サンプルの平均約30,000円の約40%増)であると推定される。
  • (3)首都圏全体で、消費者余剰は年額114億円、補助金による死荷重は356億円程度と推定され、保育サービスのコストが便益を上回っている。

4.今後の課題

本論文は公共経済学の分野でしばしば用いられる仮想市場法(CVM)によって、需要者に直接サーベイしたデータを用いて、保育サービスの需要曲線の導出を行った。仮想市場法は、あくまで需要曲線を求める1つの方法であり、質問の仕方によって結果が左右される面があることも否定できない。従って、今後の課題としては、実際の保育サービス需要と保育料のデータを用いて価格弾力性を推計し、本論文で求められた結果と比較検証する必要があろう。こうした作業は仮想市場法自体の有効性を検証することにもなり、手法自体の改善にも資することになろう。

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保育サービス需要の価格弾力性と潜在需要推計-仮想市場法(CVM)によるアプローチ-別ウィンドウで開きます。(PDF形式 121 KB)

全文の構成

  1. 1ページ
    1.はじめに
  2. 4ページ
    2.データ及び仮想的質問
  3. 7ページ
    3.価格弾力性の推計方法と推計結果
  4. 8ページ
    4.結論と政策的インプリケーション
  5. 9ページ
    (参考文献)
  6. 図表
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