ESRI Discussion Paper Series No.85
介護サービス市場の実証研究7「在宅介護サービス需要の価格・所得弾力性-仮想市場法(CVM)及び実際の介護需要による推定-」

2004年2月
  • 清水 谷諭(内閣府経済社会総合研究所経済研修所研修企画官)
  • 野口 晴子(内閣府経済社会総合研究所客員研究員、東洋英和女学院大学助教授)

要旨

1.趣旨、問題設定

2000年の介護保険導入後の介護サービスの利用の増加の大部分は、在宅介護サービスの利用によってもたらされている。将来介護コストの増大が懸念される中で、公的介護保険制度の破綻を招かないためにも、実証研究に基づいた価格・所得弾力性をもとに政策を企画立案していくことが求められている。

本論文では、内閣府が独自に実施したアンケート調査のミクロデータを利用して、在宅介護サービスの価格・所得弾力性の推定を行い、政策的インプリケーションを導く。

2.手法

本論文では、内閣府が要介護者を抱える世帯に対して独自に実施した「高齢者の介護利用状況に関するアンケート調査」(2001 年及び2002年)のミクロデータを活用して、同じサンプルを用いながら、(1)仮想市場法(CVM : Contingent Valuation Method)及び(2)実際の介護サービス需要のデータを用いて、在宅介護サービスの価格・所得弾力性の推定し、両者の比較検証を行う。

3.分析結果の主要なポイント

  • (1)まず、仮想市場法による推定結果によると、訪問介護サービスの価格弾力性は、家事援助の場合-0.3から-0.4程度、身体介護及び複合型の場合は-0.2から-0.3程度である。家事援助価格の上昇は家事援助だけでなく、身体介護・複合型への需要も低下させることから、これらの財は粗補完財である。また、デイケア・デイサービス、ショートステイの価格弾力性も-0.2から-0.3程度であり、訪問介護サービスとあまり変わらない。
     一方、所得弾力性をみると、デイケア・デイサービスの場合は0.2から0.4程度で明らかに有意であるものの、その他のサービスについては常に有意な結果は得られない。
  • (2)実際の介護サービスの利用データを用いた推計によると、訪問介護サービスの価格弾力性は-0.4程度で、仮想市場法で得られた結果とほぼ同じである。デイケア・デイサービス及びショートステイについても、統計的有意性は低いものの、係数の結果は仮想市場法の結果とそれほど変わらない。所得弾力性については、仮想市場法と一致した結果は得られない。

4.結び

2つの方法で得られた結果を総合すると、在宅介護サービス需要の価格弾力性は-0.2から-0.4程度である一方、所得弾力性はそれほど大きくない。従って、次回の介護報酬改定の際には、この程度の価格弾力性を念頭に置きながら、作業を進めていく必要があろう。所得弾力性がそれほど大きくないことを踏まえれば、需要をコントロールする上で、価格政策はより一層重要になる。同時に低所得者層へも十分配慮する必要があろう。

今後の課題としては、介護報酬単価がはじめて改定された2003年度以後の介護サービス利用のデータを活用して、実際の介護報酬単価の改定が実際の介護サービス利用に与えた影響もあわせて検証していく必要があろう。

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  2. 3ページ
    1.はじめに
  3. 6ページ
    2.データ及び仮想的質問
  4. 12ページ
    3.仮想市場法による価格・所得弾力性の推計方法と推計結果
  5. 15ページ
    4.実際の介護サービス利用を用いた価格・所得弾力性の推計方法と推計結果
  6. 17ページ
    5.結論と政策的インプリケーション
  7. 19ページ
    (参考文献)
  8. 図表別ウィンドウで開きます。(PDF形式 100 KB)
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