ESRI Discussion Paper Series No.88
情報化時代における日米経済の潜在成長力

2004年3月
  • Dale W. Jorgenson(Samuel W. Morris University Professor Harvard University)
  • Kazuyuki Motohashi(Associate Professor, University of Tokyo and Senior Fellow, Research Institute of Economy, Trade and Industry)

要旨

1.趣旨、問題設定

1990年代の日本経済は「失われた10年」と呼ばれることがあるが、その一方で企業による旺盛はIT投資が行われている。90年代を通して好調に推移した米国経済は、情報化投資によって生産性が加速的に上昇する現象が見られたが、日本においても同様のニューエコノミー現象が見られるかどうかについて実証分析を行った。また、情報技術革新の動向や労働人口構成の実態を踏まえて、供給サイドから見た日本経済の潜在成長率の将来推計を行い、米国との比較を行った。

2.手法

本論文では国民経済計算、産業連関表、雇用データなど様々なデータを用いて、日米両国の経済成長率の成長要因分析を行った。IT関連ストックと全要素生産性の関係について日米の厳密な比較を行うため、日本のGDP統計とIT関連品目のデフレータを米国における統計の定義に従って再推計し、分析に用いた。また、経済を供給サイドから見た成長要因分析のフレームワークを用いて、日米両国の潜在的経済成長率の将来推計を併せて行った。

3.分析結果の主要なポイント

  • (1)OECD等の分析によると日本のIT投資は米国と比較して遅れているとされているが、これは日米両国の統計の違いによるものである。日本の統計を米国の定義に従って再推計すると、90年代におけるIT資本の経済成長に対する貢献度は米国と比較して遜色のないレベルであることが分かった。また、日本においても90年代に全要素生産性が加速する現象が見られ、その背景には情報技術の急激な進展が影響しているものと考えられる。
  • (2)90年代の日本経済において、IT資本や全要素生産性の成長寄与が米国と同等レベルに達していた一方で、低い成長率にとどまったのは労働投入の寄与度がマイナスになったことが大きな原因である。
  • (3)成長要因会計のフレームワークを用いて、今後10年の日本経済の潜在成長率を計算すると楽観的ケースで2.63%、基本ケースで2.38%、悲観的ケースで2.12%となった。同様の計算を米国で行ったものを見ると楽観的ケースで3.48%、基本ケースで2.74%、悲観的ケースで2.12%である。このように日本の今後の経済成長率は米国と比較して低いものにとどまることが推測される。

4.結び

日本経済の今後の成長率を押し下げる要因は人口構成の高齢化によって進む労働投入の減少である。女性の社会進出の推進や少子化問題の解決は今後の経済運営において重要な課題であるということができる。また、経済成長における全要素生産性の伸びの重要性が高まる中、経済全体としてイノベーションを活発化させる政策の重要性も大きい。

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全文の構成

  1. 2ページ
    How did Japan's economy differ from the U.S.
  2. 3ページ
    Japan undervalues IT investment
  3. 5ページ
    Growth of Potential Output in Japan and the U.S.
  4. 9ページ
    Table 1: Output and Labor Productivity Projections United States
  5. 10ページ
    Table 2: Output and Labor Productivity Projections Japan
  6. 11ページ
    References
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